造形速度が2倍になる!3Dプリンター用リアルタイムプロセッサ「3D RTP」

3Dプリンターの課題 遅い造形スピード

2013年度は3Dプリンターが一気に注目を集め各社から続々と製品が発表されたり、様々な分析機関が市場予測を発表したりと、大いにブームとなった。

大体どこの市場調査データも2014年から2025年までの3Dプリンターマーケットがうなぎ上りで上昇していくと予測している。

しかし現状の3Dプリンターの性能ではいろいろな面で不十分な点が多く、改良される必要がある。そのうちの改善点の一つが造形スピードだ。

現在の3Dプリンターの造形スピードは造形物の形状や大きさなどによって一概に言うことはできないが、非常におおざっぱに言って大体1㎝積層するのに1時間以上かかるとみていいだろう。

そのため、1個のモノを成形するのにも相当な時間がかかり、極端な話、1日24時間かけて1個の試作品が作れるかどうかだ。

通常3Dプリンターは試作品の模型を作るのに使用されているが、積層精度の向上などからダイレクトなパーツ製造も開始され始めている。

しかし、試作品であれパーツ製造であれある程度のまとまった数量を製造するためには3Dプリンター自体の台数をある程度まとまった数を集める必要が出てくる。

GEはジェットエンジンのノズルを年間で85000ユニット製造しているが、これを3Dプリンター製造に切り替える計画を立てている。

しかし、85000ユニット全てを3Dプリンターで製造するためには、60台から70台の3Dプリンターを配備する必要がある。同時に台数分のオペレーターも必要になり、相当な設備投資になることは間違いない。

GEのジェットエンジンノズルの生産切り替えの記事はこちら

GEはその投資計画を実行する予定で予算を組んでいるが、それでも、3Dプリンターの造形スピードが改善されれば、その分の設備投資は一気に減ることになる。

3Dプリンターを導入することにより、せっかく製品コストが下がり、品質が向上するにもかかわらず、導入には台数に伴う莫大な設備投資が必要となってくれば二の足を踏む製造業者も多いのではないだろうか。

GEは超巨大企業だが、ましてや中小企業のメーカーにとってはなおさらだ。そんな中、3Dプリンターの造形スピードを向上させる研究もおこなわれている。

造形スピードが2倍近くアップするプロセッサーとは

今回発表された3Dプリンターの速度を上げるプロセッサーは3Dプリンターの製造販売を行う、「Create it REAL」が開発したものだ。

3Dプリンターの造形スピードをアップする研究は2年前から行われており、世界で初めてスピードアップをさせるリアルタイムプロセッサーになる。

このリアルタイムプロセッサーは「3D RTP」という名前で、デスクトップタイプの3Dプリンターでは実証済みだ。このチップを取り付けた場合、デスクトップタイプの3Dプリンターと比較すると1.5倍から2倍の造形速度を達成することができたという。

下記は比較した造形スピード。

  • 「3D RTP」を取り付けた「Create it REAL」社の速度:450㎜/秒
  • MakerPod製Replicator 2Xの速度:約200㎜/秒
  • オープンソース型Ultimaker 2の速度:約300㎜/秒

「Create it REAL」社はこのプロセッサー「3D RTP」を自社製品に使用するだけではなく、広く他の3Dプリンターメーカーにも使用してもらうことを考えているようだ。

そのため「3D RTP」はチップとして標準DIMMソケットに組み込むことができるだけではなく、3Dプリンターのマザーボードの一部として製造することができる。

現時点ではデスクトップタイプでの対応になるとのことだが、近い将来には光造形やレーザー焼結法によるハ3Dプリンターなど、全てのタイプの3Dプリンターに対応する方向で開発を行っているとのことだ。

造形スピードをアップさせる「3D RTP]

まとめ

「3D RTP」は造形スピードを向上させるだけではなく、半自動校正機能により、精度が低下しないようにされているとのことだ。

現状ではデスクトップタイプの代表的な機種での立証になっているが、すべての3Dプリンターに通常仕様として搭載されることになれば、生産性が大幅に向上することになる。

面白いのが、「Create it REAL」社はこの開発したプロセッサーを自社製品のみに組み込んで競合他社と差別化することを考えているのではなく、他社の製品にも導入してもらおうと考えている点にある。

「3D RTP」が他社のマザーボードに採用され、これから製造される全ての3Dプリンターが、精度を保ったまま、現在の造形スピードの2倍、3倍と向上すれば3Dプリンターの生産体制を構築することが現実になるかもしれない。

アメリカのメーカー各社が、3Dプリンターでパーツのダイレクト製造を取り入れる理由は、従来の製造方法と比べて圧倒的にコストを下げ、品質向上を果たせるからであるが、これに加えて生産性も向上することができれば、さらに企業としての競争力をアップさせることにつながるだろう。

また、造形速度以外にも、今年は3Dプリンターの技術的なレベルアップが大幅に向上した年であるともいえる。

例えばプラスチック印刷は1色での印刷のみしか不可能であったが、3Dsystems社からは、マルチカラー印刷が可能な機種が登場した。

またプラスチック形状やゴム形状、ナイロン形状などの異なる素材を複合印刷できる機種も発表されている。

こうした素材の多角化とプリント技術の向上により、来年以降さらに導入される分野が拡大していくだろう。

3Dsystems社のマルチカラーと複合材料の3Dプリンターの記事はこちら

3Dプリンターのスピードアップの記事はこちら

i-MKAERでは光造形3DプリンターForm3+やレーザー焼結3DプリンターFuse 1Raise3Dシリーズなど多彩な3Dプリンターのノウハウ、販売をご提供しています。ご質問や無料サンプルや無料テストプリントなどお気軽にご相談ください。