高性能3Dプリンターで無人航空機の機能とデザインを大幅改良

製品開発のスピードアップ

3Dプリンター、とりわけハイエンドタイプの3Dプリンターは、さまざまな分野で製品開発とデザインに影響を与え始めている。特に新製品を開発する場合は、何度も試作検証を行なう必要から、性能の良い3Dプリンターはコストと製品開発スピードの面ですさまじい威力を発揮する。

本日ご紹介する無人航空機の開発もハイエンドモデルの3Dプリンターが活躍する格好の事例だ。今年の3月にイギリスの先進製造プロセス研究センター(AMRC)が3Dプリンターで無人航空機の開発を行なう記事をご紹介させていただいたが、その改良版が発表されている。

先進製造プロセス研究センターは、航空機メーカーのボーイングと、イギリスの名門シェフィールド大学が2001年に設立した航空機開発の先端技術研究所ともいえる。今年の3月にご紹介させていただいた時には、単なるグライダーレベルであったが、今回は試作研究をもとにより実用的に改良がくわえられたバージョンになる。

AMRCのメンバーと無人航空機

前回のテストグライダーの記事はこちらをどうぞ

試作機から大幅に性能向上した無人航空機

前回3月に発表された3Dプリンターで作られた無人航空機は、ストラタシス社のハイエンド3DプリンターFortus900mcと、ABS樹脂を使った材料ABS-M30で作られている。前回の試作機であるグライダーは、9つのパーツをFortus900msで作りアッセンブルするものであったが、今回発表された実用機は、両翼とボディカバーを炭素繊維に変更することで更なる軽量化と耐久性向上につなげている。

また、ABS-M30で3Dプリントされたボディ本体は、より空気を収集しコントロールするツインエンジンダクト搭載のデザインに変更が加えられた。ABS樹脂はプラスチック素材の中でも最も汎用性が高く、耐久性や加工に優れた素材。

射出成形や押出成形など金型をプラスチック成形でも頻繁に使用される素材。3Dプリンターで使用できるという利点は非常に大きい。テストグライダーはABS樹脂で検証し、実機では、次の航空機素材として期待される炭素繊維素材に両翼を切り替えるという理想的な製品開発だ。

グレー部分は炭素繊維に変更、紫いろはストラタシスの3DプリンターFortus900mcとABS-M30で3Dプリントされた

ABS樹脂で3Dプリントされた改良ボディ

炭素繊維に変更された両翼とボディカバー

ボディ本体はより空気コントロールが可能なツインエンジンダクト搭載のデザインに変更。3Dプリンターであることから、金型を作る必要が無く改良が可能

3Dプリント無人航空機の改良版

改良版動画

ストラタシスの高性能3Dプリンターで製品開発力アップ

今回公開された無人航空機の改良版は3月に作られた試作グライダーをもとに改良され、デザインが変更されたものだ。特に、ボディ本体のデザイン変更は、3Dプリンターの力が大いに発揮される部分。

通常であれば、このタイプのボディを作るためには射出成形が使用される。射出成形はプラスチック成形で最も汎用性が高く、複雑で高性能なパーツが作れる製法だ。しかし、金型の設計と製造に多額のコストを要することから、生産数量が一定以上ではないと使用することはできない。

しかし、3Dプリンターであればパーツの設計変更や改良ははるかに容易にできる。こうした点からもストラタシスのハイエンドモデルFortus900mcは、大きくて精密なパーツ製造ができるFDMタイプの3Dプリンターなことから最適だと言える。

今回の無人航空機の改良は、このハイエンドな3Dプリンターを使うことで、試作製造から更なる機能向上と改良がおこなわれた理想的な事例だ。ちなみに今回の改良版無人航空機はGPSが搭載されコントロール可能な機体に仕上がった。

Fortus900mcのスペック

3Dプリンター用ABSフィラメントについては「3DプリンターのABSフィラメント完全ガイド」で特長やおススメフィラメントを御紹介していますのでそちらをご参照ください。

 まとめ

この無人航空機の改良はこれで終わりではない。次の課題は小型のガスタービンエンジンを電気ダクトファンに置き換え、翼を3メートルまで拡大することだ。

こうした次の製品開発やテスト飛行においても、高性能な3Dプリンターの使用は大きな力を発揮する。極端な表現だが、改良を行なうたびに金型を作り直していてはコストと時間が膨大になってしまう。言い換えれば高性能な3Dプリンターの使用は、これまで行うことができなかった製品改良を行なうことを可能にし、製品開発スピードを大幅に加速させる事につながっている。

今後3Dプリンターの使用が製品開発に当たり前のように普及すれば、企業のリリースする製品サイクルの速度も、競争するスピードもこれまでの時代とは比べ物にならない物になるだろう。

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