3Dプリンターで作られたスマートフォン専用スピーカー
HTC社は台湾を拠点とするスマートフォン・携帯情報端末メーカーだ。もともとはアップルのiPadやヒューレットパッカードの製品の受託製造会社であったが、Androidが発表されると世界初のAndroid端末をリリースするなどスマートフォンメーカーとしての地位を築いたメーカーである。
このほど、HTCは自社のスマートフォンHTC One専用の音響スピーカーGramohornⅡを発表した。この音響スピーカーGramohornⅡの特長は二つの特長がある。
第一は電源ケーブルを必要としないことだ。スマートフォンをセットするだけで使用することができ音量は50%まで上げることが可能だ。
第二の特長は3Dプリンターで1個1個生産され、素材は石膏と金属の二種類から選ぶことができる。HTCはこのスピーカーのプロジェクトでイギリスの若い芸術家ジャスティン・ウォルターとコラボレーションして取り組んでいる。
※画像出所:Gramohorn Gramohorn II
石膏ベース
石膏の複合材料で生成されるモデル。3Dプリンターで生成後、人の手によってスプレー処理されニス塗で最終加工される。色は22色と5色の金属色から選ぶことができる。
※石膏でもろいため、安全な位置において使用することが推奨されている。
- 素材:Zp131 plaster powder composite
- サイズ:580mm (W) x 190mm (D) x 230mm (H)
- 稼働率:100個
- 納期:3~4週間
- 対応機器:HTC One
- 価格:999ポンド
金属ベース
ステンレススチールパウダーで成形した後、ブロンズを注入し後処理を行って製造される。3色から選択が可能。
- 素材:Stainless steel powder and infused bronze
- サイズ:580mm (W) x 190mm (D) x 230mm (H)
- 稼働率:10個
- 納期:2~3週間
- 対応機器:HTC One
- 価格:4,999ポンド
まとめ
基本的に3Dプリンターの使用例は製造業の製造工程の一部として導入されることが多く、パーツの製造やリペア品の製造、試作品の製造として使用されている。もともと3Dプリンター自体は製品の量産前に試作品によってデザインのチェックを行い、改良や変更をする目的で使用されている。
現在でも3Dプリンターの使用用途はほとんどが試作品の製造だが、近年の精度の向上などで最終製品としても使用が始まっているようだ。オンライン3Dプリントサービスのshapewaysは2012年度で100万個の3Dプリント製品を出荷したと言われている。
これは3Dプリントされた製品を見た私見だが、3Dプリントされたものをそのまま消費者に提供しても売れるとは到底思えない。積層精度が高まったからといって、とうてい金型と組立によって生産される大量生産品と比べた時の見劣りは否めないからだ。
おそらく3Dプリントしたのちに人の手によって後処理や後加工をしなければエンドユーザーが満足する品質を担保することは難しいと思われる。今回発表されたHTC社のスマートフォン用スピーカーも3Dプリンターで積層後、人の手を使って後加工や後処理をして製造されている。
最近の3Dプリンターの過度なメディア報道などもあるが、3DCADデータがあれば製品が作れるということと、3DCADデータがあれば消費者が満足するクオリティの製品が販売できることは別である。
一言でざっくりと言い切ってしまうと、あくまでも今の3Dプリンターの革新的な部分は製造プロセスを改善することによりコストを大幅にカットすることにある。そのため、エンドユーザーの手に渡る最終製品が安易に作れるという発想には一抹の不安感と疑問点が残る。
人の手によって精度の高いモノが生み出されることを忘れてはならないような気がする。
※画像出所:Gramohorn 人の手で最終加工
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