3Dプリント技術に国を挙げて取り組むシンガポール
シンガポールは現在国を挙げて3Dプリント技術の拡大に取り組んでいる。5年間で5億ドルの予算を投じて3Dプリント技術に関するインフラ整備を行い、3Dプリントに関連する法案や政策、基準等を定め始めている。
またシンガポール一の国立大学である南洋工科大学内に3,000万ドルの資金を投じて3Dプリント技術の研究開発を行う専門機関を立ち上げる予定だ。
さらに世界ではじめての国際3Dプリント展示会を開催するなど目下国を挙げて3Dプリント技術の浸透と技術向上に取り組んでいる。こうした取り組みは国家レベルだけではなく民間レベルでもおきつつあるようだ。
草の根レベルで始まる3Dプリントワークショップ
民間企業が草の根レベルで独自の3Dプリントハブを開始している。小規模だが3Dプリントに関する専門知識を有する企業2社が統合し新たな3Dプリントに関する取組を開始している。1社はMaterialiseit社という会社で、3Dプリントに関する教育を行う会社だ。
老若男女問わず3Dプリントという新しい技術をどのように使うかを教えており、小学校や博物館などで独自の3Dプリント教育コースを開設して事業を展開している。
生徒たちが持っているアイデアを3Dモデルデータに変換し、さらに3Dプリンターで物体になるところまでの一連の流れを体験してもらうことで3Dプリントに関する理解を促進している。
第二の会社はSimplifi3D社で、この会社は3Dプリンターの対面販売をおこなうショップとしてその地位を確立していたが、同時に出力サービスやコンサルティング、3Dスキャニングのワークショップを展開している。この3Dプリントに関する専門企業2社がお互いの成長を助けるためにパートナーシップを結んだ。
現在この2社は共同の場所において様々な新しい3Dプリントに関するワークショップを提供している。例えば3Dプリントされたチョコレートやレゴブロック、おもちゃなどを体験できるワークショップだ。また学生を対象に、折り畳み式のポータブル3Dプリンター「Portabee」の組み立てを教えるワークショップも展開している。
3Dプリンターワークショップ
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まとめ
Materialiseit社とSimplifi3D社が合同で進めるようなワークショップ等の草の根事業は、大企業が推し進める3Dプリントの普及事業や、行政や大学などの専門研究機関が担う役割とは異なる役割を担っている。
3Dプリンターを販売するメーカーや、3Dプリントサービスを展開するビジネスプリントサービス会社や小売店など、いわゆる大企業は量で勝負することで一気に市場シェアを取ることができる。
事業の多角化展開をすることで3Dプリントに関する社会的認知を広め製造業、小売業それぞれの分野においてBtoB, BtoCでの利用拡大と認知向上を図ることが可能だ。
一方、行政や大学等の研究機関の役割は国の中核となるべき技術の向上を目的としている。日本でも産総研が代表的な機関で産業技術分野における幅広い技術開発が行われておりトップクラスの人材が集まって日々研究を重ねている。
大企業と専門の研究機関が3Dプリント技術の分野でそれぞれのフィールドを持っている中、Materialiseit社とSimplifi3D社が合同で進めるようなワークショップ等の役割は、将来的な3Dプリント技術に関する人材を育成し発掘するという役割を担っている。
小学校レベルの教育機関で3Dプリントに関する専門的なコースを持ったり、学生や老若男女問わないいろいろな立場の人々に対して3Dプリントに触れる様々な機会を提供することは社会全体の3Dプリントに関する意識の向上に役立っている。こうした取り組みは大企業や専門の研究機関ではなかなか手が届かず事業として行うことができない分野に属している。
大企業が事業を行う場合には、その事業に対して投じた人員と時間に見合うだけの利益が無ければ行うことができない。そうした意味からもこうした草の根レベルの普及活動は総合的な3Dプリントに関する認知向上につながる。シンガポールの取組はまさに官民一体となった取り組みと言える。
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