続々と登場する3Dプリントのマーケットプレイス
昨年度以降、3Dプリントサービスを新たに開始する企業が続々と登場している。ちょうど1年前の3月には日本では3Dプリントサービスを行っている企業はほとんどなかったといっていい。
筆者の知る限りでは1社のみで、その1社も大々的に3Dデータの販売を行っているというわけではなかった。日本国内ではShapewaysすらほとんど知られていない状態であったが、ブームに火が付いたとたん、新規参入企業が群がり起こっている状況だ。
こうしたサービスはエンドユーザーに対して、3Dプリントされた製品を販売するマーケットプレイスだが基本的に二つのパターンに分かれている。
一つはShapewaysのように多数の3DCADデザイナーたちを集めたサイトで、様々なデザインやいろいろな種類の製品が並んでいる。もう一つは、特定分野の商品に特化して販売しているサイトだ。
特定分野に特化している場合、1人ないしは数人のデザイナーが職人レベルに仕上げて商品を提供しているのが特長的だ。
おそらく今後も続々とこのようなサービスは登場してくるだろうが、多数のデザイナーを集めた3Dサイトは熾烈な競争が予測されるだろう。
amazonが3Dプリントサービスへ参入開始
とうとう世界最大のインターネット通販サイトのamazon.comが3Dプリントサービスを開始した。昨年6月に3Dプリンター自体の販売と材料であるフィラメントの販売を開始してきていたが、3Dプリント製品の販売もとうとう開始し始めた。Amazonはこのサービス開始にあたり、世界最大の3Dデータサイトの一つ3DLTと提携を行っている。
将来的には他の4社とも提携を行うことで、3Dプリント製品のインターネット販売を強化していく方向だ。だいたい注文から6日～10日程度で発送するとのことで、今後拡大していく消費者向け商品の3Dプリント需要に対応していく方向にある。
アマゾンの3Dプリントマーケットプレイス
オランダ最大のデパートHEMAも3Dプリントサービス開始
3Dプリントサービスに参入する企業はインターネットのマーケットプレイスだけではない。オランダ最大のデパートHEMAも3Dプリントサービスを開始している。
HEMAは創業から90年近い歴史を持つオランダの老舗デパートだが、オランダ全国に支店を持つ小売りチェーン。「ないものはない」をモットーにしているオランダ国民なら知らないデパートだが、宝石類・アクセサリの3Dプリント販売を開始した。
顧客がオンラインで自分の好きな形にパーソナライズすることが可能で、ネックレスやブレスレットを作成できる。HEMAはこのアクセサリの3Dプリント販売については、同じオランダの3Dジュエリー企業Zazzyと提携を行っている。
HEMAと提携しているZazzy
まとめ -超大手サービスか職人レベルのデザイナーかで二分される-
3Dプリント販売に大手が続々と参入する傾向は今後もますます拡大するだろう。特に大型小売店や、大手メーカーの参入が加速すると思われる。こうした企業は既に多くの顧客を抱えているだけではなく、製品開発に関わる体制や、販売ネットワークを既にもっているためだ。
また、3Dプリント技術を導入する資金も豊富である上に、3Dプリント技術を導入することで企業の体質を強化することができる。
そうすると、将来的に生き残る企業は、アマゾンのような多数の3DCADデザイナーとユーザーを集めた巨大なマーケットプレイスか、製品ラインナップを多く持つ大手メーカーか、リアルな世界で巨大な顧客層を持っている大手小売りチェーンの3つに集約されるだろう。
従来からの3Dプリント製品の販売サイトは、よほど特色を出すか、特定分野に特化しない限り生き残りは難しいかもしれない。
既に一部のデザイナーは自分の作品を3Dプリンターで製造し、職人とコラボレーションして、精工に仕上げたオンリーワンの一品ものとして販売していたりするが、3Dプリンターのカスタマイズ性という特長を顧客に訴求するならば、そのぐらいまでにしないと販売は難しいだろう。
そもそも、顧客にとってはカスタマイズできることが価値があるわけであって、3Dプリンターで作られていようがいまいが、どちらでもいいことなのだから。
一方で、3Dプリンターによる製品データのデジタル化は、ものづくりに参入するハードルを下げることで、今までモノづくりに参加できなかった人々の参入も加速させるだろう。
こうした個人レベルのものづくり、すなわちパーソナルファブリケーションが進むと、多くのアイデアやデザインを表現することに能力を発揮するデザイナーの登場をますます加速させる。すでに大手以外で3Dプリント技術を利用してカスタムメイドの製品を作り始めているデザイナー集団も登場してきている。これからの時代は超大手か、職人レベルに特化したデザイナーの二つの時代だ。
既に職人レベルの1品ものを提供するデザイナーも
デザイナーの1品ものの販売に関する記事はこちら
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