2017年度まで年率20%の成長を誇る3Dプリント市場 注目の4市場

市場規模50億ドル・年率20%の成長率

3Dプリント市場は2014年度以降も拡大し続ける傾向にある。

背景として3Dプリント技術があらゆる面で飛躍的に向上しつづけることや、いろいろな材料が3Dプリンターで使用できることなど、導入される分野がどんどん拡大していくことが見込まれている。

各社様々な市場調査データを発表しているが、アメリカのビジネス調査企業フリードニア·グループ社が3Dプリント市場に関する新たなレポートを発表した。

そのレポートによると2017年度までにグローバルな3Dプリント市場は年率20%の成長率で推移し、その規模は50億ドルに達すると予測されている。

本日は今後3Dプリンターの導入や使用が期待されるであろう4つの有望市場を実例を交えてご紹介します。

1.航空機市場

第一に、3Dプリント技術の導入で最も歴史が古く、最もその有効性を発揮すると言われているのが航空機産業だ。

といっても航空機産業の主要メーカーは限られており、GEとシーメンスの2社がほぼ航空機産業の中心と言ってもいい。

本サイトでもたびたび紹介をさせていただいたが、主に航空機産業では飛行機のジェットエンジンのパーツ製造で3Dプリント技術の導入が検討され始めている。

3Dプリント技術の導入はジェットエンジンの製造にとって計り知れないメリットをもたらすからだ。

主に燃料ノズルやブラケットといったパーツの製造において従来の機械加工された部品を組み合わせる製法ではなく、高精度な金属製造できる3Dプリンターに切り替える方向に置かれている。

GEのジェットエンジンブラケット

主なメリットは、圧倒的なコストカットと製造時間の短縮、パーツの軽量化や耐久性向上といった部分

GEもシーメンスも2016年度に3Dプリントで燃料ノズルの全数生産を目指すとのことだ。

ちなみにGEは年間85000ユニットの燃料ノズルを生産しているが、将来的に全て3Dプリンターで製造する計画である。

そのためには高性能な精密加工が可能な3Dプリンターの大量導入と材料の消耗が見込まれる。

航空機産業の3Dプリント技術に関する記事はこちら

2.自動車市場

自動車産業も製造分野において3Dプリント技術の研究が古くからされている業界だ。

主な使用用途としては試作品の製造や部分的なパーツ製造として3Dプリンターへの投資が盛んになりつつある。自動車業界で3Dプリント技術の導入に積極的な企業はフォードだ。

かつては大量生産方式の代名詞のような企業としていわれていたが、エンジン用パーツの試作品製造において3Dプリント技術を導入し始めている。

ちなみに3Dプリンターはそもそも大量生産前の試作品を造形することを目的とした機械だが、近年の精密性の向上などにおいてその試作品の再現性も非常に高くなっている。

フォードは試作品製造を3Dプリンターに切り替えることでコストを95%近くカットし、リードタイムも圧倒的に短縮している。

自動車産業ではまた、新たな研究がなされている。なによりも車体やエンジンに使用される部品を3Dプリント製造にすることで、耐久性が増し、軽量化することが注目されている理由だ。

各パーツ類を軽量化することは車体自体の重量が軽減され、ひいては燃費の向上につながるからだ。そのため新たな3Dプリントカーの研究が開始されている。

Urbeeの取組が最も注目に値する自動車業界の3Dプリント研究で、優れた耐久性をもつ超軽量化車体で圧倒的な燃費の向上を果たすことを目標にしている。Urbeeはわずか37リットルの燃料でアメリカ大陸の横断を計画中だ。

Urbeeの3Dプリントカー

こうした車体軽量化の取組はCO2排出削減にもつながり、今後世界的に自動車製造に3Dプリント技術の導入が加速させるとも言われている。

3.医療・歯科市場

第三の有望市場は医療・歯科市場だ。既に利用が開始されているが、特にインプラントの製造に使用されている。

例えばプロテーゼといった体の中に埋め込む人口骨の製造や、歯を補修する義歯であるブリッジなどの製造に3Dプリンターが使用されている。

また補聴器の製造にも3Dプリンターが大きな役割を果たしている。

こうした医療分野や歯科分野では3Dプリント技術はカスタマイズとオンデマンドの少量生産という大きな強みを発揮する。

人体、例えば骨の形や歯の形、耳の穴の形などは人それぞれ固有の形を持ち、全く同じ形状を持つ人はいないと言えるからだ。そのため1個1個のカスタム製造には3Dプリンターは最適と言える。

インプラントの3Dプリント

4. 消費者製品市場

第四に大きな市場として期待されているのが消費者製品の製造での導入だ。

消費者製品市場での3Dプリンターの導入は数年前から始まっており、主に玩具やアクセサリー、ファッションなどのプロダクトの製造で使用されつつある。ただし、現状の3Dプリンターの性能から言うと出力してそのまま販売できるレベルではない。

着色や研磨などそれなりの後処理を人の手で施したうえで提供する必要があるレベルだ。

しかし、3Dプリンターのレベルが飛躍的に向上しつつあり、精密さがアップしていることや対応できる素材が増えていることから今後更なる拡大をし続ける分野だと言える。

特に3Dプリンターメーカーもこの消費者製品市場は今後大きな市場になると踏んでいるようだ。

3Dプリンターのリーディングカンパニーと言える3Dsystemsは2013年度の末に高性能な3Dプリンター2機種を発表した。

一つは世界初となるフルカラーの高精度プラスチック印刷が可能となる機種であり、もう一つはプラスチックやゴムなどの異なる素材を複合印刷できる機種だ。

プラスチックのフルカラー印刷が可能になれば、より多彩な表現が可能になり、消費者製品で決め手となるデザインの表現も豊かにすることが可能だ。

また3Dsystemsは新たに玩具業界の3DモデリングのリーディングプロバイダーであるGentle Giant Studios社の買収を発表した。

Gentle Giant Studios社はスターウォーズに始まり、アイアンマンなどのマーベル、アバター、ハリーポッター、デッド、ロード・オブ・ザ・リングのホビットなど世界的に有名なキャラクターを3Dデータで生成している企業だ。

Gentle Giant Studios社は始まりはおもちゃ会社であったが、いち早く3D技術に着目することで、いまでは有名映画のキャラクターの製造ライセンスを持っている企業となっている。

3DsystemsはGentle Giant Studios社の買収により、エンターテイメント分野における消費者製品の製造に大きく乗り出そうとしている。

こうした3Dプリント技術の向上は消費者製品の製造の幅を多く広げることになる。

Gentle Giant Studios社の買収

3Dプリントされたドレス

3Dsystemsのフルカラープリンターと複合機の記事はこちら

3Dsystemsの消費者製品への参入記事はこちら

アクセサリ・ドレスの3Dプリント製品の記事はこちら

まとめ 全世界で拡大

拡大をし続ける3Dプリント市場だが、地域別のセグメントを見てみるとアメリカ市場が最も大きい市場だ。

全体の42%のシェアをもち世界最大の3Dプリント市場となっている。次がヨーロッパ市場でついでアジア・太平洋地域と続く。下記は2017年までの地域別の市場規模と成長率の表になる。

出所:フリードニア•グループ社

アメリカはまさに3Dプリント大国というにふさわしく、2大メーカーである3Dsystemsとストラタシスが存在する。

デスクトップ3Dプリンターのリーディングカンパニーでストラタシスの傘下であるMakerBotはアメリカ全土の学校に自社の3Dプリンターを導入する計画を進めている状況だ。

アメリカは政府だけではなく企業や教育機関・研究機関などすべての立場の人たちが一体となって3Dプリント技術の製造業への導入と新たなメーカーの創出に躍起になっている感がある。

一方、ヨーロッパではイギリスやドイツといった主要先進国でも自国の製造業や教育機関への3Dプリント技術の投資には積極的だ。

また世界の工場と言われる中国でも政府レベルで製造業への投資には力を入れている。フォックスコンの工場ではデジタル技術と3Dプリント技術への製造プロセス導入が進んでおり、また、最先端材料とその3Dプリント研究も国と企業を挙げて取組中だ。

こうした各国が取組を始めている中、日本も積極的にこの技術の導入方法を研究し、製造業の更なる高付加価値化に努めていく動きが必要だと考えられる。

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