世界初!リチウムイオン電池の3Dプリント研究

リチウムイオン電池を3Dプリントする研究

3Dプリント技術の研究はアメリカやイギリス、シンガポールなど各国の研究機関や大学が盛んに行っている。

研究分野で大きな位置を占めるのが素材の研究だ。素材の多角化が進めば利用できる商業範囲も拡大し、モノづくりに生かせる機会が増えることになる。

従来3Dプリントできる素材は全て物体であり、それそのものでは動かないモノだが、新たにリチウムイオン電池の3Dプリント研究が始まっている。ハーバード大学の材料科学者ジェニファー・ルイス氏が研究を開始している。

リチウムイオン電池は携帯電話やノートパソコン、デジタルカメラ、スマートフォンなど、幅広い電子機器に使用されるもので、最近ようやく主流になりつつある電気自動車などにも搭載されている。

その市場規模は2010年度には日本国内で1兆円2,000億円に達し、2014年度には3兆1040億円に上ると予想されている。今回ハーバード大学で研究が開始されたリチウムイオン電池の3Dプリント利用はまだ研究の途についたばかりで実用化には至っていないが、今後の市場規模の予測を見ている限り、商用化した場合の製造業での利用の可能性は計り知れないものがある。

下記の二つの3Dプリント技術を開発したという。

第一に、バッテリーや電極、配線、アンテナを含む単純なコンポーネントの中に固化することができる機能性インクと呼ばれるものの発明。
第二に、工業用の3次元プリンターからバッテリーや電極、配線、などのコンポーネントを絞り出すことができるノズルと高圧押出機を開発した。

注射器と押し出し器

上記の材料となる混合物は、リチウムチタン酸化物、脱イオン水、エチレングリコールをセラミックボールと一緒に混合し24時間回転させ均一にブレンドしたものになる。

この手法によって1ミリメートル四方のリチウムイオン電池のプリントに成功したという。しかし商業用で利用するためには100ナノメートルの精度が必要とのことだ。また単一のノズルからの抽出だと製造に時間がかかるため、この研究では数百のノズルから同時に3Dプリントできるようにしている。

ちなみにこのリチウムイオン電池の3Dプリントは高性能な電子機器製造への利用を想定しているため、通常の温度ではなく電子機器製造時の高温で動作するようになっている。

現時点で、ハーバード大学のルイス氏のグループは、このリチウムイオン電池のインクに関して8つの特許を持っており、これから先数年間でこの技術を商用利用できるようにしたいと考えている。

3Dプリント材料の今後の課題

リチウムイオン電池は電気自動車の普及やウェアラブル端末の展開など、これから使用される電子機器が増えてくるため市場規模も増加傾向にある。

リチウムイオン電池のメリットは小さい大きさにも関わらず高いエネルギー密度にあると言われているが、高いエネルギー密度の反面、急激に加熱する可能性や異常発熱につながる危険性を内包しているといわれている。

そのため電池そのものだけではなく同時に組み込まれる周辺機器にも安全対策が施されており、発火・爆発を防ぐ対策が必要だ。3Dプリント技術が進むことにより利用できる産業分野が拡大することは大いに期待できるが、同時に安全対策も十分に施される必要がある。

特に製造業で3Dプリンターを最終製品に組み込まれる部品として利用する場合、品質向上やコスト削減だけではなく安全性や製造物責任も担保されていなければならない。

最終製品を提供されるエンドユーザーにとってみれば、その製品のパーツが金型製造だろうが3Dプリント製造だろうが関係ないのだから。

3Dプリンターの産業利用は使用できる素材が拡大されればされるほど、それを利用するための基準もしっかりと作りこまなければならない。

参考記事:technologyreview

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