米雇用統計では3Dプリンターに精通した人材募集が4年間で18倍に拡大

人材不足という深刻な課題

我が国の早急の課題としてあげられるのが少子高齢化と労働人口の減少だ。日本の出生率は先進国中最低で、このまま低出生率がつづけば人口は減少しつづけ、15歳から60歳までの労働力の中心となる生産年齢人口は2030年度にはおよそ5600万人程度まで落ち込むことになる。

生産年齢人口の減少はそのまま国全体の経済力の低下に結びつき、このままいけば、国際競争力はますます低下するだろう。そのため経済力の根本を形づくる労働力の確保は企業にとっては最優先課題だ。既に人材不足はさまざまな業界で顕著にでてきており、とりわけ建設業やサービス業での人材不足は深刻だ。

こうした課題を克服する方法はいくつか存在する。一つは、なんらかの方法で人口を増やすことだ。例えば海外からの移民の入植を積極的に行ない、優れた人材であれば関係なく登用していく。

あるいは女性の仕事と家庭の両立を果たし、一生涯で産む子供の数が2人以上になる社会環境を作っていくという方法だ。この移民政策や子育て支援の議論に入ると、ここでは書き尽くせない程の量になるため詳しくは触れないが、こうした人口増加を国レベルの政策として行うという手段が必要だ。

もう一つの方法は、撤退的に効率化をはかり、企業の形態や体制、あるいはもっと大きな産業構造というレベルで、経済規模にあったカタチに変化させていくことだ。適者生存ということばがあるとおり、時代や大きな流れに合わせて、組織や価値観を変えていく、そんな方法が必要だろう。

上記の二つの流れ、人口増加と、産業効率化は両立できる上、二つとも国レベルで推し進められる。例えば、今回の安倍政権における内閣改造で女性の活躍というあらたな特命相ができたことからもわかる。また、効率化の面でいえばさまざまな業界でその流れが進んでいる状況だ。

とりわけロボット導入の動きはホテルや、飲食などのサービス業界で浸透が始まっているが、ものづくりや製造業の分野ではどのようなことが起きるのだろうか。今まさに製造業を効率化させ、競争力を強化する技術として注目されているのが3Dプリンターと3Dデータを使いこなす人材だと言える。

製造業のデジタル化は世界的な流れ

3Dプリンターと3Dデータを導入する最大の目的の一つがコスト削減による効率化だ。データを修正するだけで簡単に試作品が作れるし、一体成型が可能なことから、これまでの加工法よりも遥かに時間とコストを削減することが可能だからだ。

まだまだ使用範囲は限定的だが、どんどんクオリティが向上してきていることから、徐々に使用される分野が拡大している。3Dプリンターの導入で代表的な業界は航空宇宙産業や、医療分野だが、最近ではファッションやジュエリーといった消費者向け商品の製造にも利用が開始され、この使用分野の拡大は更なる拡大をもたらす。

こうしたさまざまな業界における3Dプリンターの普及と3Dデータの浸透は、この技術を使いこなせる人材の株をも向上させはじめている。

例えば、GEはジェットエンジンのノズルや、ブラケットの生産を全て3Dプリンターで作ることを発表しだが、課題となっているのが、3Dプリンターに詳しく3Dソフトを使いこなせる人材の確保だという。GEの例はほんの一例に過ぎず3Dプリンターとソフトを使いこなせる人材は今後あらゆるものづくり、製造業の現場で求められるだろう。

3Dプリント技術を身に着けた人材は必須になる

急騰する3Dプリンター人材の雇用

さまざまな業界に対して3Dプリンターが拡大している状況を裏付けるように、3Dソフトと3Dプリンターを使いこなせる人材を確保使用という動きが盛んになっている状況だ。下記のグラフは過去4年間の3Dプリンターの技術をもつ雇用統計の推移だが、わずか、4年間で1843%も増加している。ちなみに過去1年前と比べても103%増加しており、ほぼ倍の伸び率だ。

このデータはアメリカの求人広告をもとにした分析結果であり、ニューヨークを拠点に活動する雇用傾向を分析する企業WANTED ANALYTICSが発表しているもの。同社は10億以上もの求人情報を持つ巨大データベース企業で政府機関も雇用統計などのデータとして利用が盛んだ。

とりわけ3Dプリンターに精通する人材はエンジニアリングの求人が多く全体の35%近くを占めているという。3Dプリントの求人の主な内訳ではエンジニア、メカニカルエンジニア、ソフトウェア開発者、プロダクトデザイナー、インダストリアルデザイナー、マーケティングマネージャーの募集が大半。興味深いのはエンジニアやデザイナー以外にマーケティングにも詳しい人物を募集している点にある。

これは今後3Dプリント技術がいろいろな業界に浸透し、市場全体が成長することを見越してのモノと言える。また業界別でいえば、大半が製造業で、そのほかコンピューター周辺機器の製造開発や大学、大学院、専門学校などの教育機関、中にはタイヤメーカーや、航空宇宙システム開発、アルミメーカーなどでも3Dに関する人材を募集しているという。

3Dプリンター製造の過去4年間の雇用統計

まとめ デザイナーとエンジニアと3D

この雇用動向のデータはアメリカのものだが、こうした流れは世界的に普及するだろう。

データから物体を作ることができるこの技術を導入するのとしないのとでは生産効率が大幅に変わってくるためだ。とりわけ、この技術の導入に躍起になっているのが、アメリカ、イギリス、中国、シンガポールなどの諸国。イギリスなどは政府主催の一大3Dプリントセンターなどを開設し、それによる投資効果まで発表しているぐらいだ。

政府が中心となって行なう3Dプリント技術の導入は主に、大規模な生産設備を持つ主力産業になってくるが、3Dプリント技術の普及はこうした産業にはとどまらないだろう。それと正反対の新たに事業を起こす起業家にとっても大きなメリットを発揮するからだ。

また導入が進む業界も多岐にわたっており、モノを作り出す業界では全ての業界に遅かれ早かれ利用が開始される。そうしたときに必要となるのが3Dデータを作り出す3Dソフトを使いこなす人材と3Dプリント技術に精通した人材になる。

将来は自社で作る物をデータ化して利用することが当たり前になる中、人材不足で企業の効率化が必須になる日本の製造業においても、3D技術に精通する人材確保は早急の課題だ。

ちなみにここで求められる人材は単純に3Dデータ化するだけの人材ではない。3Dデータ化だけできても、それは単純な作業に過ぎないからだ。そこでは製品開発が行なえるデザイン力と、その製品を構成する技術的な知識が必須となる。言い換えればプロダクトデザイナーとエンジニアリングと3Dデータの知識を備えた人材、すなわち高度なデジタルものづくりに対応した人材が重宝されるようになるだろう。

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