巨大メディアの影響力を排除した独自分析手法
3Dプリンター市場は次なる産業革命と注目され、その影響は世界的に広まっている状況だ。各社さまざまな市場分析レポートを発表している。
マーケット調査会社や、コンサルタント企業、金融機関など各社が次々にレポートを発表しているが、どのレポートも共通している点は成長し続けるということと、さまざまな業界に影響を与えるという点である。
その影響力は金額に換算され、金額が多いほど影響力が高いという分析だ。こうした分析結果やレポートは大まかな時代の流れを見たり、その業界が進むべき方向性を見るのには参考になる。大きな流れを見定め、そこに自社の事業の進むべき方向性をある程度合致させるということが可能だ。
一方でこうしたレポートや市場分析は分析手法によっては異なる結果がでたり、より細かい企業レベルでの動向は把握しづらいという欠点がある。そのような中、独自のアルゴリズムによってWEB上の2億人以上のブログ、フォーラム、ソーシャルメディアを分析することで、3Dプリント業界に対する影響力を分析・発表する企業が存在する。
WEB上の300万のメディア90日分を分析
この企業Appinionsは、その業界における最も影響力のある人や組織を分析し、その市場で戦う企業や人に対して情報提供を与えるということを使命に掲げている。過去2年間で発表した各業界のレポート数は24にもおよび、フォーチュン1000社の企業のマーケティング担当者などに大きな信頼を得ている。
Appinionsは、もともとコーネル大学の研究機関で10年以上も構築された独自分析技術を使用しており、300万以上のオンライン・オフラインのコンテンツ、ブログ、社会的に影響力の高いソーシャルメディアなどを分析することで、その業界に最も影響を与える企業と人物を選定しているというもの。
ちなみにコーネル大学はアメリカの名門大学で世界の大学ランキングでも4位に入るほど。コンピューター工学では世界トップクラスだ。今回発表された3Dプリント業界に与える影響力のレポートは過去90日間、2億人以上の文書、発言、レポートから作られている。
そこにはニュース、ブログ、フォーラム、フェイスブックやツイッターといったソーシャルメディアの発言まで含まれる。WEBがメディアとしての地位を確立して久しいが、Appinionsはオンラインとオフライン両方を分析材料としている。それではその結果をご紹介しよう。
産業別の3Dプリント技術に影響力を持つ代表的企業
まずはじめに発表されたのは各産業別にみる代表的な影響力を持つ企業連だ。3Dプリンター業界、小売りチェーン、インターネット&ソフトウェア、製造業、自動車産業、航空宇宙産業、金融、建設、電化製品という順番。このグラフの比率は3Dプリント技術が影響する順番に大きくなっている。
産業別のトップインフルエンサー
産業別に見る影響力を持つ主要企業
- 3D(ハード&ソフト):Artec3D、AUTODESK、3Dsystems、Makerbot
- 小売チェーン:amazon.com、ebay、BEST BUY、ホームデポ
- インターネット&ソフトウェア:グーグル、intel、juniper
- 製造業:GE、proto labs
- 自動車産業:ローカル・モーターズ、BMW
- 航空宇宙産業:エアバス、BAE SYSTEMS
- 金融:シティグループ、JPモルガン
- 建設:不明
- 電気:不明
ほぼこれまでネット上の多くのブログやメディアで言及されてきた企業だ。もちろんここで紹介されている企業以外にそれぞれの業界で数多くの影響力を持つ企業が存在するが、あくまでも最も代表的な企業として紹介されている。
3Dプリント業界に最も影響力を持つ企業TOP10
それでは次に3Dプリント業界全体に最も影響を与える企業を見てみよう。これは上記で紹介した産業別というくくりではなく、全ての3Dプリント市場に影響を与えるという視点で分析されたものだ。下記がそのランキングになる。
3Dプリントに最も影響力を持つ企業TOP10
- 1位:AUTODESK
- 2位:Amazon
- 3位:Stratasys
- 4位:3Dsystems
- 5位:intel
- 6位:GE
- 7位:Home Depot
- 8位:Makerbot
- 9位:Local Motors
- 10位:BAE Systems
AUTODESK
1位のAUTODESKは何と言っても3Dソフトの分野では20年以上の歴史を持つ老舗だ。プロダクト、建築、機械設計、消費者向けなど3Dソフト、アプリケーションで最も使用されている。そのため3Dプリント技術や3Dスキャニング技術が普及すればするほどAUTODESKが使用されることも多くなるためだ。また、最近では3Dプリンターで初のOSとなる、SPARKを発表。同時にオープンソースの光造形3Dプリンターもリリースしている。いうなればAUTODESKが目指すのは3Dプリント業界におけるGoogleの地位を築こうとしている。
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Amazon
2位にランクインしたAmazonだが、今やインターネット通販では世界一と言ってもいい。今ではありとあらゆる商品を販売しているが、3Dプリントサービスの開始が大きく評価されている。その参入方法も、大手3DプリントサービスのShapewaysとSculpteoの2社がショップを設ける形での参入だ。この2社はAmazon内のショップ開設によって巨大なAmazonが有する会員も利用できるし、ますます拡大していく方向と期待されている。
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Stratasys
ストラタシスは3Dsystemsと並ぶ2大3Dプリントメーカー。その市場シェアは圧倒的で、3Dプリンター全体で世界シェアの50%を有すると言われている。今年に入り、これまでなかったフルカラープラスチック3Dプリンターやマルチ素材対応の機種をリリース。クォータリー レベニューが54%上昇したことも大きく影響している。
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3Dsystems
3Dsystemsは上記ストラタシスとともに代表的な3Dプリンターメーカー。しかしもはやその活動領域は3Dプリンターメーカーの域を超え、3Dプリント技術が影響するあらゆる分野に及んでいる。昨年以降、さまざまな関連企業の買収と資本提携を繰り返し、その規模、業態を拡大し続けている状況だ。Googleとの高速量産3Dプリンターの開発は衝撃を与えた。
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intel
第5位にランクインしているのがintel。なぜintelがという疑問もあるかと思うが、今年1月にアメリカで発表された新たな3D技術が話題を生んでいるからだ。2014年1月の消費者向けエレクトロニクスの展示会で発表されたのは、Intel Real Senseと言われる空間モーション把握技術。この技術をもとに上記3Dsystemsと3Dスキャンの開発も開始している。
intelの画期的な3D技術
GE
GEはエジソンで知られるエレクトロニクス企業の代表的な存在だが、実は3Dプリント技術の利用では20年以上の歴史を持っている。その使用範囲は多岐にわたり、ジェットエンジンの製造から家電の開発までさまざまだ。最近ではクラウド技術を自社の製品開発に活かすという画期的な取り組みも行っている。後に紹介するローカル・モーターズと家電製品の製品開発も開始中だ。
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Home Depot
ホームデポはアメリカ最大のホームセンターチェーンであると同時に、世界第2位の小売りチェーンだ。その店舗数は巨大なネットワークを持っているが、ストラタシスとMakerbotの3Dプリンターを販売することを発表したことから、その影響力が評価されているといっていい。
Makerbot
Makerbotは低価格タイプの3Dプリンターで最も市場シェアを持つ企業だ。ストラタシスの傘下企業だが、現状全世界の低価格3DプリンターではオープンソースのReprapとともに圧倒的シェアを持つ。しかし低価格3Dプリンターを取り巻く環境はここ1年で大きく変わってきており、1台数万円程度の高性能モデルが登場するなど、今後はどのよう状況が変わるかわからない。またソフトウェア最大手で1位のAUTODESKや、ヒューレット・パッカードがこの分野に参入を発表するなど、近い将来状況が激変する可能性が高い。
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Local Motors
ローカル・モーターズは名前が示す通り、自動車製造をクラウド上で行う企業だ。世界中から数多くのデザイナーやエンジニア、地元の技術企業が参画している。世界で初となる完全3Dプリントの電気自動車を作ったり、GEと提携することで新たな家電製品の開発という分野に進出している。まさにクラウドを利用した代表的企業だと言えるだろう。既にオンライン上で自動車の販売を開始しているが、彼らの目的は完全カスタマイズの自動車製造を提供することだ。
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BAE Systems
BAE Systemsはイギリスの国防・航空宇宙産業を製造する巨大企業だ。実はBAE systemsはボーイングやロッキード・マーチンなどよりも国防分野では売上高を誇る世界1位の企業だ。いち早く3Dプリンターをパーツ類の製造に取り入れ、大幅に利益を拡大している。
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3Dプリント業界に最も影響力を持つ人TOP10
次にご紹介するのは3Dプリント業界に最も影響力を持つ人だ。こちらは人と言っても企業の経営層にあたる人物のランキングであるため、やや企業ランキングとかぶる部分が多い。ランキングは以下の通りだ。
3Dプリント業界に最も影響力を持つ人TOP10
- 1位:Petra Schindler アマゾン取締役
- 2位:Damien Leigh ステープルズ シニアヴァイスプレジデント
- 3位:Elon Musk スペースX CEO(テスラモーターズ創業者)
- 4位:Meg Whitman ヒューレット・パッカード CEO
- 5位:Avi Reichental 3Dsystems CEO
- 6位:Clement Moreau Sculpteo CEO
- 7位:Peng Jun Golden laser co CEO
- 8位:Gilad Gans ストラタシス 代表取締役
- 9位:Andreas Bimlk CreoPop CMO
- 10位:Itamar Jobani OwnPhones CEO
以下補足だが、2位のステープルズは26カ国で世界的に2000以上の店舗を持つオフィス用品の小売りチェーンで、3Dsystemsと提携を結び3Dプリンターの販売を開始していることが大きく評価されている。7位のGolden laserはレーザー中国の代表的企業で世界60ヵ国以上で展開するレーザー加工機のメーカー。9位のCrePopは世界で最初の3Dペンのメーカーだ。
まとめ
Appinionsの発表した調査結果はいかがだろうか。これまでの既存の調査会社やコンサルタント会社が分析するのとは違った視点で見ることができる。
今ではインターネットのおかげで世界中の情報が一瞬で共有され拡散される時代になっている。そのためインターネットの情報はどこよりも早い。
テレビメディアで取り上げられる何日も前、もっと早ければ何カ月も前に話題になっている情報すらある。また、ネットメディアにおいても、専門性と細分化が進んでいる。
大手ニュースサイトの情報よりも、専門のブログサイトやニュースサイトの方が情報も早く詳しい場合が多い。こうした時代にあって、市場動向や、その業界の状況分析を行なうにあたり、多くのネット上のメディアや力を持つソーシャルメディアを考慮しないことの方が不自然だと言えよう。
こうした点からもAppinionsのとる独自アルゴリズム解析、すなわち専門性が高く伝達性が速いオンラインの情報を分析することは時代にあった手法でもあり、よりその業界に関心の高い層の意見を抽出することができる手法だ。従来の市場レポートとは違い、大いに参考になるとみておいいだろう。
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