電子回路基板のオンデマンド生産が可能?基板用3Dプリンター「The EX¹」とは

電子回路基板の3Dプリンター

3Dプリンターの研究開発が進む中、電子回路基板をオンデマンド作ることができるプリンターがキックスターターで登場した。この電子回路基板を作るプリンター「The EX¹」はいわばエレクトロニクス用の3Dプリンターだ。

3Dプリンターはプラスチックや石膏、金属などの素材で物体を成形する技術だが、「The EX¹」は任意の物に電子回路基板をプリントするというツールになる。

資金調達のクラウドファンディングキックスターターで資金を募集したところ1日で5万7千ドル(2013年11月12日18時現在)も集まっている。

この「The EX¹」は専用のソフトウェアを使って電子回路図を設計し、データを機器に送ると電子回路基板が印刷されるというシンプルな仕組みになっている。

印刷できる対象物はプラスチック、ガラス、木材、セラミック、シリコーン、布、紙などがある。使い方は回路をプリントした素材を入れセットし、設計データを選択してプリントボタンを押すだけ。

そうすると対象物にナノ粒子の銀がインクジェット方式で添加されて電子回路基板が組みあがるという方法だ。

The EX1本体

下記は「The EX¹」の簡単なスペックだ

  • サイズ:幅41.2㎝、奥行31.2㎝、高さ16.6㎝
  • 重量:約6kg
  • 印刷エリア:17.5㎝×8㎝

The EX1のクローズアップ

The EX1ソフトウェア画面

「The EX¹」と3Dプリンターの違い

3Dプリンターは物体を造形する機器だが、今回キックスターターで発表された「The EX¹」は電子回路基板をプリントアウトする機器だ。面白いのが電子回路をプリントすることができる素材がプラスチック、ガラス、木材、セラミック、シリコーン、布、紙などといったもので、通常の電化製品の基盤とは異なっていることだ。

こうした取り組みは電子回路のオンデマンド生産が可能となることを意味するだけではなく、動くモノとしての製品開発の幅が広がる可能性をもたらしてくれる。しかし、この機器で作られた基板の精度や不良率はどの程度なのであろうか?

電子回路基板で不良は絶対ダメ

電子回路基板は一言でいうとエレクトロニクス製品の動力の機関部と考えても差し支えない。

電気で動くモノはこの機関部である電子回路基板の部分に少しでも不安定な要素があるとすぐに故障につながってしまう。

例えば、電子回路の半田づけされた部分に1本の細い糸くずがあるだけでショートし動かなくなることがざらにある。

そのため電化製品の品質にはこの電子回路基板のクオリティが非常に重要な意味を持っている。

そのため電子回路基板に半田やパーツ類をプリントする際には非常に気を使わなければならない点が多々あるのである。

基板に実装する際の半田の品質や部品の精度であったり、基盤自体のクオリティ、さらには製造現場の清潔さまで管理しなければならないなど、非常に気を配らなければならない点がある。

なぜならたった1点の汚れや、1本の糸くずが不良品を発生させる恐れがあるからだ。

最悪の場合はリコールということも十分ありうる。エレクトロニクスの製造現場は非常に厳しい世界なのだ。

そうした点から見ると、それそのものだと動かないモノを造形する3Dプリンターとは根本的に求められる要求事項が異なるのではなかろうか?

そうした面からも「The EX¹」で作られた電子回路基板のクオリティは気になるところだ。

まとめ

個人の要望に応えることができる1個1個のカスタム生産は新たな市場性をもたらしてくれる。

また、大量生産用の機器は値段が高く、モノ作りに関係のない人が簡単に参入することができないが、3Dプリンターや「The EX¹」のような安価なオンデマンド生産用機器は多くの人間がモノ作りに参加する機会を提供してくれる。こうした状況はモノ作りにどういう影響を与えるのだろうか?

今までモノ作りに参入することができなかった人や関心がなかった人の参入は新たな視点や新たな発想をもたらし、未来を切り開く製品が生まれてくる機会が増えることは間違いないだろう。

しかしその一方で、誤解を恐れず言うなら、安易にモノ作りをとらえる(従来のモノ作りにプロ意識を持って取り組んでいる人たちに比べ)参入者が増えるだろう。

モノ作りでもサービスでも人に提供するのであれば最も大切なのは製造者のエゴではなく、いかに製品を提供される側が満足するかにある。

ましてや動かなくなれば不良品としてのレッテルを張られる電子回路基板を作るということに関しては、品質の担保は最優先事項であろう。そのためにも不良解析という概念が絶対にはずすことはできない。

今の時代はテクノロジーが進化し、データがあればモノが作ることができる時代となってきているが、より簡単にモノが作ることができるからこそ品質に関してはより一層の意識を持たなければならないのではなかろうか。

大量生産の金型だろうがカスタム生産の3Dプリンターだろうが、動くモノの動力源になる基板製造だろうが、最も重要な点は提供される側の立場に立った価値観や品質と機能性にあると考えられる。

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