イギリスは2016年までに全中学、高校4000校に3Dプリンター導入を目指す

3Dプリンター教育の普及

3Dプリンター市場において今後最も大きな市場の一つとして注目されているのが教育分野への導入だ。日本でも既に一部の大学や専門学校では導入が進みつつあり、経済産業省は中学・高校レベルでの導入に予算をつけている。

こうした流れは先進国で顕著だが、とりわけイギリスは教育機関への3Dプリンターの導入に最も積極的な国といっていい。アメリカも民間レベルで3Dプリンターの学校への配備を積極的に行っているがイギリスほどではない。

イギリスは今後2年間ですべての中学校・高等学校へ3Dプリンターを導入してしまおうという勢いだ。なぜこれほどまでに3Dプリンターを教育分野へ普及させようとしているのだろうか。そこには、新たな未来の人材を担う、子供たちの創造力を喚起しようという狙いがあった。

イギリスの3Dプリンターの導入状況

実はイギリスの学校に始めて3Dプリンターが導入され始めたのは2009年にさかのぼる。これは世界で最初に低価格3Dプリンターが学校に導入された事例だと言われている。当時はまだだれも3Dプリンターなどという言葉すら知らなかった時代だ(もちろん、製造業やプロダクトデザインに携わる人々は試作品を製造するために知っていたが)。

この最初の学校への3Dプリンターの導入が行われて以降、大学レベルなどでは何台か導入が試みられたが、2013年から2014年度まではほぼ教育に役立つものとしては扱われてこなかった。

その理由の第一は3Dプリントのレベルが今ほど精度が高くなかったことが言える。素材も当時はパウダー状の石膏などと素材も限定されていたし、精度も今ほどよくはなかったためだ。つまり試作の模型を作るための工作機の域を出ていなかったと言える。また、導入や工業での利用の域を出なかった理由の一つとして価格が大きな要因を占めていた。

1台数百万円から数千万円する高価な機械だし、材料費も高いため、そう安易に使用できるものではなかったのだ。しかし、こうした技術的が進歩し、低価格化が進むことで新たな価値として見直され始めている。それは2つの側面から子供たちに多くのメリットをもたらすとみられているためだ。

3Dプリンターが持つ2つの教育的メリット

それでは3Dプリンターが持つ3つのメリットとはどのようなものだろうか。第一に挙げられるのが、子供たちの創造力や起業家精神を喚起するのに非常に有効的であるということだ。

例えば3Dプリンターを使えばアイデアやデザインをカタチにおとしこむことが従来よりもはるかに容易に可能になる。たった一つのアイデアのために何百万円も使って金型を作る必要がないし、修正や改良が容易にできる。こうした3Dプリンターの最大のメリットは、子供たちの持つ自由なアイデアや発想を具現化することに役立つ。

この3Dプリンターを使いこなすことで、今後新たな企業が誕生する土壌を築くことが可能になり、多くの起業家の卵である学生を育成するには最適だと言えよう。

メリットの第二は3Dプリント技術の汎用性の高さだ。いま3Dプリンターが導入され始めている業界を見てみるとわかるが、3Dプリント技術はあらゆる業界で使用されている。

航空宇宙産業や自動車製造などのハードな製造分野に始まり、医療用での用途、人間の身体に身に着けるあらゆる商品、エンドユーザー向けの消費者製品などありとあらゆる分野にわたっている。

こうした幅広い分野での使用が可能になることから、3Dプリント技術を習得した生徒たちは、努力次第でどの分野でも仕事につけるという可能性がもたらされる。すなわち3Dプリント技術を習得することはデザインを学ぶと同時に、その商品を成り立たせる技術も習得することにつながるのだ。

これはイギリスの代表的企業ダイソンが提唱している職業だがデザイン&エンジニアリングという職種を育成するための基本にもつながっている。デザイン&エンジニアリングとは商品開発に携わる者は、人の心に印象づけるデザインだけではなく、その商品を形成する技術的なスキルも習得していなければならないという考えだ。

まさにイギリスは3Dプリント技術によってこのスキルを生徒たちに習得させ、彼らのキャリアにあらゆる将来の可能性を与えようとしている。

中学・高校レベルが導入の中心になる

こうしたこともあり、最も導入が期待されているのが、セカンダリースクールと呼ばれるレベル、すなわち日本でいうところ中学校、高校レベルへの3Dプリンターの導入である。なんとその計画は2年後までにイギリスに存在する全ての中学・高校とFEカレッジへ導入しようというものだ。

ちなみにイギリスの中学・高校は約4000校存在し、日本でいう専門学校のような存在であるFEカレッジは250校ある状況だ。この中学・高校・FEカレッジへの導入によって、さらにその先の大学へ進学した際には、より専門的で高度な技術を習得することに結び付けることができるとしている。

イギリスは昨年度から3Dプリンターの配備に積極的に取り組んでいるが2015年度に相当数の学校に、そして2016年度までには上記の中学・高校・職業専門学校レベルにまで備え付けることを目指すとのことだ。ちなみに小学校レベルでは数が多いことや、予算的にも厳しい側面があり、当面は見合されるとのこと。

まとめ

仮に2016年度の時点で、全ての中学・高校に3Dプリンターが配備されたとしたらどのようになるのだろうか。

例えば2016年度に12歳の子供が3Dプリント教育を受けたとしたら、その子供が大学を卒業し企業に勤めることを考えると、2026年度には3Dプリント技術を習得した若者が大量に登場することになる。もちろん、2016年度の段階で12歳以上の生徒も含めればその数は膨大だ。

これはあらゆる分野においてアイデアやデザインをカタチにする力を持つ人材が膨大に確保できることにつながっている。またこうした人材がさまざまな企業で活躍するだけではなく、新たな事業を起こす起業家の数もこれまで以上に増えることになるだろう。国の競争力を図る一つの基準が経済力であるならば、経済力を構成する大部分の要素が企業だ。

その企業の競争力を高め、新たな産業を興すきっかけにもなる3Dプリント技術を備えた人材を育成することは最も重要な教育政策だと言える。

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