戦後復興運動が今では4兆円規模の超巨大市場に
唐突だが、日本で一番初めにDIY商品がそろったホームセンターが登場した年をご存じだろうか。
それは昭和47年、1972年の年だ。日本が高度経済成長の後半でちょうど安定成長に入った時期だ。国民の所得も大幅に向上し、生活の中における身の回りの物まで気を使うゆとりが出てきた時代。
ちょうどそのころ、アメリカで人気になっていたDIYが日本にも本格上陸をしている。
今では当たり前の国道沿いの巨大店舗スタイルのホームセンターが1972年に登場して以来、DIY市場は、ホームセンターの増加に比例して拡大し続けている。
もともとDIY=Do it yourselfとは、第二次世界大戦後のロンドンで始まった国民運動だ。「戦争で破壊された街を自分たちの手で復興させよう」という運動に端を発しているが、今では日曜大工という言葉で親しまれ、週末のレジャーや、個人のモノづくりとして大きな市場規模に成長している。
下記のグラフは一般社団法人日本DIY協会が発表しているDIY売上高とホームセンターの数のグラフだ。
日本DIY協会によると、昭和48年には全国で28店舗しかなかったホームセンターが平成25年度には4540店舗まで拡大している。またDIY市場も昭和48年度では110億円規模であったのが、なんと今では4兆円に達する見通しだ。
拡大するDIY市場とホームセンターの数

画像出所:日本DIY協会
今では一大巨大産業まで成長しているDIY市場だが、その根本原理にあるのは、「自分だけのモノづくりを楽しみたい」といった思いや、「自分でもこれだけのモノが作れる」といった充実感や達成感が大きいのではないだろうか。
こうした思いは今、空前のブームとなって巻き起こっている3Dプリンターを使ったモノづくりにも当てはまる物だろう。本日は、海外で続々と登場してきている3Dプリンターによるモノづくりへの利用と、日本のDIY市場への影響と普及をご紹介。
3Dプリンターとホームセンターのキットで商品を自作
DIYはヨーロッパで火が付き、アメリカで空前のブームとなったのちに、日本に上陸したが、3Dプリントブームも全くおなじ流れを歩んでいる。
既に海外では数多くの3Dデータ共有サイトや、3Dプリントサービスがにぎわいを見せており、オリジナル製品や3Dプリントできるキットなど、多くの取組を見せている。あまりにも連日3Dプリンターを使った取組がリリースされるのですべては紹介しきれないが、その中でも今後のDIYに関連がありそうな代表的な事例をご紹介してみたい。
たった10ドルで作れるオリジナルな3DプリントLED照明
最初にご紹介するのは自分でオリジナルな照明器具を作るという取り組みだ。
この照明器具の考案者は、もともと自分の娘の部屋の照明を購入しようと小売店を回ったが、どれも100ドル近い金額がすることから、3Dプリンターでもっと安く作れないかと考えたのが始まりだ。このLED照明は、誰でも3Dプリンターでプリントし、作れるデザインになっている。
3Dプリンターがあれば、必要なものは材料費、ランプの配線キット、LED電球のみ。なんと価格は10ドルしかかかっていないという。まさにホームセンターで材料を購入し、自分で作るのと同じ感覚だ。
ちなみにこのLED照明のデータはMakerbotが提供する無料の3DデータダウンロードサイトThingiverseで公開中。
3Dプリンターで作れるDIYキットともいえるLED照明


Thingiverseの公開ページ

壊れたメガネフレームを自分で再生しレンズの無駄をなくす
次にご紹介するのが、DIYで作られる日曜大工とはちょっと異なるが、メガネフレームを自分で作ってしまった取組だ。この取組を発表したのは、グローバル3Dプリントコミュニティ3Dhubsにも登録する3Dモデルを開発する会社の人間。
メガネが壊れてしまったが、レンズは使えるため、新しいメガネを購入するのではなく、フレームを自分で再生させている。
はじめはメガネショップを回ったが、レンズの形状に完全にマッチするものが無かったため、それならば自分で合うものを作ろうとして開始したとのこと。
使用した材料は材料であるPLA樹脂と金属線、釣り糸だけ。ステップとしては、自分の鼻にフィットするために何回か試作プリントを行った後、最終品をプリントしている。
あとは出来上がったフレームとレンズを釣り糸とネジで止めるだけだ。これにより新しく購入するよりもはるかに安価に仕上げることができ、なおかつ既存のレンズを無駄にせずに済む。ちなみにこちらのメガネフレームの3DデータもThingiverseで公開中だ。
自分で再生させた3Dプリントメガネ


Thingiverseの公開ページ

まとめ -デジタルDIY市場の拡大と失われる市場-
上記の例は、あくまでも数ある中のうちの二つに過ぎない。
このように3Dプリンター自作して解決しようという取り組みは数多く登場しているのだろう。こうした3Dプリンターを使ったDIYは、基本的な大前提として3Dプリンターと3Dソフトウェアを使うことができなければ作ることはできない。
しかしその一方で、3Dプリンターの普及と3Dソフトウェアの無料化、簡略化は急速に進み始めている。こうした3D技術の普及が進めば、現在のDIY市場と同様に、一大市場として成長する可能性は大いに秘めている。
というのも、上記でご紹介した照明ランプやメガネの取組を見てもわかるとおり、基本的に自分で作るという行為の出発点は、現在の多くのDIYと変わらないからだ。
そこには、手作りか、デジタルツールを使うかの差でしかない。
そのため、現在では敷居が高いデジタルツールがより汎用性を持つようになれば、3Dプリンターによる個人のモノづくり、すなわちデジタルDIY市場が拡大するのは時間の問題だろう。その拡大と普及に伴って、多くのビジネスが立ち上がるとともに、既存の浸食されるビジネスも多く出てくるかもしれない。
例えばDIY市場にとって、道具や材料の選び方、扱い方を教えるDIYコンサルティングサービスが登場したように、同様のサービスが3Dプリント技術においても必要になる。
また、少なくとも、このメガネとLED照明の自作に関して言えば、メガネショップと、家具小売店は、彼らの自作した分の売上は喪失していることになるのだ。
デジタルツールが普及すればするほど、過去には専門企業しかできなかったことが、個人でもできるようになる。そこが技術の怖いところであり、3Dプリント技術は特に、多くの業界に影響を与えるテクノロジーだ。
例えば、3Dプリンターが影響する範囲は、原料調達から試作、製造、流通、販売に至る「モノを作って売る」というあらゆるフェーズに影響を与える。
そのため単なる一技術としてとらえるのではなく、全ての業態にあらゆる側面から影響を与える動きとしてとらえるべきだろう。
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