3Dプリンターがもたらす大量生産体制へのメリットとは

大量生産体制への導入が進む3Dプリンター

3Dプリンターは従来は大量生産前にプロダクトのデザインや機能、構造などを確認するための試作品を作る目的で使用されてきた。

しかし3Dプリンターの性能が飛躍的に向上し、3Dプリントで作ることができる素材も増えてきており、製造プロセスに一部使用する動きが高まっている。

基本的には一部の部品や特定の部品を製造するために使用するケースが増えており、いろいろな業界で3Dプリンターの導入が進んでいる。

製造プロセスの一部として使用が始まっている産業は、主に自動車製造や、航空宇宙産業、医療分野での導入が顕著で、それ以外の使用用途は本来の試作品製造として使われている。それでは大量生産の製造プロセスの中に3Dプリンターを導入するとどのようなメリットがあるのであろうか。

以下、過去に紹介した事例も踏まえてそのメリットを整理したい。

ストラタシスの3Dプリンター製造工場

コストカット

3Dプリンターで部品を製造した場合にまず挙げられるのがコストカットである。

この場合のコストとは、単純な材料費だけではなく、それ以外の部分、人件費や製造にかかるリードタイム、製造に使用するエネルギー、物流コストなどだ。従来の大量生産方式から3Dプリンターを導入することで飛躍的なコストカットを果たしたケーススタディがGEアビエーションの例がある。

GEアビエーションはジェットエンジンに使用する燃料ノズルの製造を3Dプリンターに切り替える動きに出ている。

従来は20種類の異なる金属パーツを組み合わせて1つの燃料ノズルを製造していたが、3Dプリンターで製造することにより、20個分の製造コストが削減されることとなる。

またコストカットだけではなく25%重量を軽くすることが可能となる。

航空宇宙産業以外での3Dプリンターの取り入れは、まずスポーツメーカーのナイキがあげられる。

ナイキはサッカーシューズのクリート(靴とスパイクペダルと結合するための留め具)を3Dプリンターで製造し始めた。

そのほか自転車メーカーのジャイアントでも3Dプリンターを自転車製造に取り入れており、自転車のサドルを3Dプリント製造に切り替え始めている。

各社導入するメリットとして挙げているのが第一に3Dプリント製造に切り替えることで大幅なコストカットが達成されるとしている。ただし、コストカットだけで品質が劣化することはしていない。むしろ3Dプリント製造によって品質が向上することが果たされている。

GEの燃料ノズル(従来品)

GEの燃料ノズル製造の記事はこちら

品質向上

第二のメリットとして品質向上があげられる。部品の製造に3Dプリンターを取り入れた企業は各社とも品質向上をうたっている。逆を言うと3Dプリンターで製造することにより従来品よりも優れた品質を担保できない限り、その部品は3Dプリンターでは製造しない。

例えば、航空宇宙産業のロッキードマーチン社では航空機部品の製造を3Dプリンターに切り替える前に、従来品よりも品質(耐久性や重量など)が向上することを証明しなければならない。

コストカットでもあげたGEアビエーションの燃料ノズルは、耐久性において従来の組み立て品よりもはるかに性能を向上させることができる。なぜならば20種類ものパーツを組み合わせて作るよりも1つのまとまった形状で製造することができるため、微妙なアッセンブルのズレも起きないというわけだ。

さらに25%の重量カットにより、搭載される航空機の燃料代削減に貢献することが可能になる。一方自転車メーカーのジャイアントはサドルを3Dプリント生産にすることにより、個人の体系や体重にあった自転車を提供することができる。

自転車を購入する個人にとっても、従来の製造方法よりも自分の体系にあった3Dプリント生産のサドルの方が体にフィットし、快適さが増すというものだ。そのため、単純にコストが削減されるからといって3Dプリントで生産するのではなく、消費者にとってメリットがあるかどうかが、生産切り替えの一番の基準になる。

ロッキードマーチンの品質改善に関する記事はこちら

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在庫管理が不要

こちらも広い意味でのコストカットの一部に入るのだが、製造コスト削減と品質向上が満たされたうえで、3Dプリンターに製造を切り替えた場合には、当然のことながら余分な在庫を持つ必要がなくなる。

従来は故障品のためのスペアパーツをある程度用意しておく必要性があったが、3Dプリント製造の場合には3DCADデータをデータベースで管理するだけで済む。

また、基本的な部品の改変や改良に関しても3DCADデータを操作して変形が可能であるため、わざわざ金型等を作る必要が無く、オリジナルな元データを残しつつ、改良バージョンも3Dプリントすることが可能となる。

そのため従来製品開発や製品改良の段階で発生していた廃棄物がなくなることになり、余分なエネルギーを削減することが可能だ。

サプライチェーンの簡素化

3Dプリント製造はサプライチェーンも従来とは異なるものに変えてくれる。

従来の大量生産方式だと、いろいろなパーツ類を各地で製造し、1か所の組み立て工場などでアッセンブルするという仕組みが成り立っているが、パーツを3Dプリント生産した場合には物流に費用をかける必要がない。

3Dプリント生産の場合にはパーツの設計図である3DCADデータをクラウド上で管理することが可能になるため、必要なパーツのデータは組み立て工場で直接3Dプリントすることで対応するようになる。

そのためこちらもコストカットとリードタイムの向上につながる部分だが、従来のパーツ輸送に発生していたコストと時間が不要になる。

こうした動きを見据え、既に大手国際郵便サービスのUPSやフランスの郵政公社などは3Dプリントサービスをこれからの事業として試験的に運用し始めている。

郵便サービスの3Dプリントサービスの記事はこちら

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競争力向上

上記であげてきたように、3Dプリンターで製造した場合には、トータル的なコスト削減と品質向上が可能になる。

製造にかかわるコストと物流に関わるコストの両面が削減されるため、最終製品になった場合にエンドユーザーに提供される価格を下げることが可能になる。

そのため他社と比べた場合価格競争力をもつことが可能になる。

例えば、GEアビエーションの燃料ノズルの場合には、飛行機の製造コストの低下と、軽量化による燃料コストの低下が、トータル的な提供価格の値下げを可能にするかもしれない。

また、ジャイアントの自転車はサドルの製造コストを低下させることで消費者に提供できる自転車の価格も値下げすることが可能になる。

同時に消費者からしてみれば自分の体系にマッチした自転車を従来より安い価格で手に入れることができるため、満足感が増す。

このように3Dプリンター製造をした場合には、最終的にメーカーにもエンドユーザーにとってもメリットをもたらすことになる。

まとめ

上記が3Dプリンターを大量生産に導入した場合の利点を簡単にまとめたものだ。

当たり前の話だが、あくまでも製造に関する全てのパーツが3Dプリンターで製造できるわけではない。

海外のメーカーはある特定のパーツに限って、3Dプリンターで製造したほうがメリットがでると判断した場合のみ取り入れている。

また、3Dプリンターで製造を行う場合には、相当な検証を行い、コストや時間がどの程度削減できるのか、また製品のクオリティはどのていど向上することができるのか、エンドユーザーにとってのメリットはどういうメリットがあるのかということをじっくりと検証し、全てがクリアになったうえで切り替えを始めている。

また、3Dプリンターの価格が低価格し始めているといっても、大量生産の中において、一定の部品やパーツを製造するためにはある程度まとまった台数を導入することが必要になる。

その分の投資金額は莫大な金額に上るため、巨大な体力のある企業でしか製造プロセスを変革することができないため、基本的には現段階において3Dプリンターの活用事例は大企業にならざる負えない。

しかし、今後3Dプリント技術が進展し、素材の低下やデバイスの低価格化が進むことで、中小企業での活用事例が増えていくことが期待できる。

また、機器自体の導入に関してはそこまでの予算はつけられないが、3Dプリントは利用したいという中小企業のため3Dプリントサービスが続々と開始されている。

そうしたサービスを利用しよりコスト低下と品質向上を図る方法もあると思われる。

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