3Dデータのプロダクトデザインに対する影響とは

増殖する3Dデータの取り扱いサイト

3Dプリンターの注目とともに3Dデータに対する認識も変わりつつある。

3Dプリンターが浸透するにしたがって、製品の設計図である3DCADデータがオープンにされ無料で公開されたり、データを有料で販売されるサービスが次々に起こっている。代表的なサービスとしてshapewaysがある。Shapewaysはデザイナーがデザインした製品をオンライン上でカスタマイズし、好きな素材で3Dプリントすることができるサービスだ。

2012年度は世界中で100万個出荷した実績を持つが、2013年度に3Dプリンターの注目に従って一気に有名になった。また2大3Dプリンターメーカーの3Dシステムズ社とストラタシス社は両社とも安価なデスクトップタイプの3Dプリンターのラインを持つだけではなく、デザイナーがデータをアップロードして3Dプリントできるオンラインショップを開設している。

ストラタシス社はデスクトップタイプで最大の出荷量を誇るMakerbotを買収するとともに、3DCADデータのダウンロード・アップロードができるthingiverse.comを運営している。3Dシステムズ社も同様の3DCADデータのサイトcubify.comを運営している。こうした3DCADに従来から関わっている企業以外にも、多くの3Dデータの売買サイトが立ち上がっている。

日本でも2013年度の初頭にはshapewaysという名前すらほとんど知られていなかったにも関わらず、そっくりなサービスが3Dプリンターブームとともに一気に群がり起こっている感がある。データのみの提供もあれば、出力して納品まで行うサービスまで様々だ。

3Dデータに対する誤解

こうした3Dデータのダウンロード・アップロードの売買サービスは従来から製造業に携わる人々、モノづくりの中小企業や職人、プロダクトデザイナーにとってはどのように受け取られているのだろうか。

3DCADデータ自体はモノづくりに関わる人たちにとっては別に珍しいソフトではなく3Dプリンター同様相当昔から使用されてきている。3DCADデータを作る作業もプロダクトデザインの分野において、デザインの中の一工程に過ぎない。

極論を言ってしまうと「作業」に過ぎないと認識されているのが通常だ。

昨今の3Dプリンターに伴う3DCADデータの扱いがデザイン=3DCADのような意味で広く取られているとしたらそれは大いなる勘違いであると思われる。

こうした勘違いはインターネットと3Dプリンターの認知が進むことによって、モノづくりとプロダクトデザインが広く市民権を得たことから起きているだろう。なぜなら今までモノづくりや製造業、3Dプリンターを全く知らなかった人たちが昨今のブームによって知るようになった。

しかしデザインやモノづくりに関する奥深い知識や、経験に裏打ちされる理解という部分が伴わない安易な解釈は危険である。

従来からモノづくりに携わっていた人々にとって、3Dデータと3Dプリンターは「モノづくり」ではなく「アート」に分類されると考えているのではないか。

製品を作って世の中に送り出す場合、デザインは製品企画やアイデア出しの段階から主導的な役割を果たすべきものだ。なぜならば世の中に受け入れられる製品をデザインするためにはその背景にある世の中の動きや社会情勢、流行などといったあらゆるものをもとに作り出さなければならないからである。

そのためモノづくりに対する認識を異なるものとしてイメージさせているのではないだろうか?確かにある意味では3Dプリンターが普及するにしたがってデータの重要性は増す部分があり、3DCADソフトが使用できる人材が意味をもつ側面があるだろう。

しかし、3DCADソフトを使って設計図が作れることよりも、なぜその製品はこのデザインになっているのかという背景や理論に裏打ちされたモノが必要である。

またそうしたデザインが無い製品(本来あってはならないものだが)ではないと社会や消費者もそのモノを欲しいとは思わないのではないだろうか?そのため3Dプリンターの汎用性が高まりつつある中、今まで以上にプロダクトデザインの重要性が増してきており、今まで以上に企業経営の中で役割が増してくると考えられる。

されど3Dデータのオープン化には良さがある

しかし3Dデータを取り扱う新たなサービスと3Dデータは今後のモノづくりを発展させるうえで良い影響をもたらすだろう。

第一にインターネット上でより多くの人々の考えアイデアが集約されることによって創意工夫が生まれプロダクトデザインに関する総体的な質の向上を招く可能性がある。なぜならば、この3Dデータを取り扱うダウンロードサービスの対象はエンドユーザーであるため、その製品デザインを判断するのもエンドユーザーである。

必然的に悪いものはダウンロード数や注文数が少なく、良いものは数は増加する。

また、インターネットは全てオープンにされているため、デザイナーもユーザーも作品を全て閲覧することもできるし、ものによっては元のデータをさらにブラッシュアップするということも可能である。

アメリカではソフトウェアなども全てオープンにし、開示された設計図やアルゴリズムをもとに、ほかの知らないだれかが改良しまたオープンにする、そしてそれをどこかの誰かが更に改良を行うという進化の系譜をだどっている。

期限切れ特許を3Dデータ化で公開

例えば今年の8月にはアメリカニューヨークの特許弁護士が期限切れになった製品の特許を3Dデータ化してMakerbotの運営するthingiverse.comに公開を行った。

このデータをもとに他の誰かが更なる製品改良を行い、新たな製品が生まれやすい環境を整えることが狙いだ。一方で、自社の製品の設計図や特許をインターネット上にオープンにして、不特定多数の人間に製品改良してもらう取組を行っている企業がいる。

その代表的企業がGEで、GEは家電製品関連の自社の製品特許や設計図をweb上で製品企画を行うサービスを提供するQuirkyと提携して自社製品の更なる改良を行っている。

また自社でもクラウドサービスを利用して、製品改良から販売支援までの企画も行っている。こうした製品デザインや特許のオープン化は従来の伝統的な製品開発やデザインの概念とは異なる手法だ。

一人よりも10人、10人よりも100人、100人よりも1万人のアイデアやデザインが集まればより優れたモノを生み出せるきっかけになるのだろう。

GEのクラウド上のモノづくりの取組記事はこちら

公開されたスクリューの3Dデータ

まとめ

3DCADデータやデータをインターネット上で集めるサービスは長い目で見てモノづくりによい影響を与えると考えられる。ただしこうしたデジタルツールを使った方法論は従来の伝統的なモノづくりに関わる人々にとっては、ある種の小面憎さと違和感、不信感があるのではないか。

しかしデジタルツールを使おうが、品質が悪いものやデザインがダメなものは消費者に受け入れられることは無いだろう。一方でこうしたデジタルツールを使った取組や製品開発は確実に少しずつだが波が押し寄せ始めている。

イギリスやアメリカは学校によっては中学校から3DCADやデジタルツールを使ったモノづくりの教育を取り入れようとしており、むしろ今後は3Dデータソフトはプロダクトデザインには使えて当たり前の時代になるのだろう。

それはあくまでもツールとして市民権を得るだけであり、デザインを行う本質は変わらない。むしろデジタルツールで製品化する作業が簡素化されればされるほど、よりプロダクトデザインの重要性はまし、製品企画にとどまらず企業経営の中で大きな役割を占めるだろう。

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