3Dプリンター市場の総括 2014年以降4年間で出荷台数が10倍に成長

2014年度以降10倍に増加

2013年度も後わずかとなっていますが、今年は3Dプリンターが一気に広まった年となった。グローバル市場で見てみても、出荷台数は2012年度から約49%近く増加し、導入された業界も多岐にわたっている。

また、個人向け3Dプリンターの普及も倍増しつつあり、日本でもヤマダ電機で販売が開始されるなど、徐々に広がりを見せている。

市場調査会社が各社こぞって今後の市場推移の見通しを発表しているが、アメリカのIT専門調査会社IDC(インターナショナル·データ·コーポレーション)が2014年度以降の新たな見通しを発表した。

IDCによると2014年以降、今後4年間で3Dプリンターの出荷台数が約10倍に成長すると予測している。

2012年度から2017年度までの、グローバル市場における3Dプリンターの年間平均成長率は台数で59%、収益で29%の成長に上るとのことだ。IDCは1975年に設立された調査会社で、主に情報技術・通信産業や、政府系機関に情報を提供している。

デスクトップタイプの2013年度の導入状況

2013年度の導入状況を振り返ってみると、3Dプリンターは大きく大別すると個人向けと高性能な業務用との2種類のタイプがある。

個人向けのデスクトップタイプの3Dプリンターは業務用に比べて安価である代わりに、性能はそれほどよくない。

導入先としては、主に教育機関に対して導入が進んでおり、アメリカやイギリスなどでは政府が中心となって学校導入を加速させようとしている。

デスクトップタイプでは大手2社の3DプリンターとオープンソースタイプのReprapタイプが主流だ。

大手二社のうち1社は3Dプリンターのリーディングカンパニーストラタシスの子会社Makerbotで、Makerbotの使命はアメリカ全土の学校に自社の3Dプリンターを導入すること。

Makerbotは教師向けの寄付を募るクラウドファンディングプロジェクトを立ち上げ既に、数十校の学校に導入を果たした。

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もう1社が3Dプリンターのパイオニアである3Dsytemsが販売するCubeシリーズだ。

Cubeシリーズは日本でもヤマダ電機で発売されるなど、デスクトップタイプとしてはポピュラーな3Dプリンターになりつつある。

販売取扱が拡大しており、日本でも有名だが、アメリカ最大のオフィス用品のサプライチェーンオフィスデポが全米150店舗でCubeシリーズの販売を開始することが決まった。

また、個人で3Dプリントサービスを行う人の大半はデスクトップタイプの3Dプリンターを使っている。

ローカルな3Dプリントサービスの登録サイト3DHUBsではヨーロッパの登録者が多いが、既に12月現在で2423人の登録があり、そのほとんどがReprapタイプか上記2社のものだ。

ヤマダ電機の3Dプリンター売り場 Cubeシリーズ

ハイエンドタイプの2013年度の導入状況

3Dプリンターはなんといっても使用メリットがあるのは製造業の現場で使用されるハイエンドタイプだ。

従来はラピッドプロトタイピングいわば量産化前の試作品製造の加工機械として使用されていたが、プリンター自体の性能がアップしたことによって、ダイレクトパーツの製造に利用されはじめている。

特に医療分野、航空宇宙産業、自動車産業など、に始まり、最近では自転車やスポーツシューズなどスポーツ業界でも使用が開始され始めている。

医療業界ではインプラント用や補聴器などの製造に使用される。

インプラントや補聴器などは個人の体系や体重などにあったパーツ製造が不可欠であるため、1個から製造することができる3Dプリンターは最適と言える。この個人の身体に適合するカスタマイズ製造は医療分野の使用だけではなくスポーツ業界でも使用され始めている。有名なナイキはシューズの製造に3Dプリンターを導入しカスタム製造を開始した。

また、台湾の自転車メーカージャイアントはサドルの製造に3Dプリンターを使うことを開始し、個人の体系と体重にあったサドルを作っている。

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最も3Dプリンターのメリットを生かして生産ラインに導入しているのが航空宇宙産業だ。

ジェットエンジンを作るGEはジェットエンジンに使用する部品の製造を3Dプリンターに切り替えつつある。

ジェットエンジン用の燃料ノズルは従来は20個以上の金属加工されたパーツを組み立てることによって1個の燃料ノズルをつくっていたが、3Dプリンターで製造することで、20個の部品を組み立てる時間、人員、材料費を削減することができた。

GEは年間85000ユニットの燃料ノズルを生産しているが、全てを3Dプリント製造に切り替える方向にある。

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2014年度以降の3Dプリンター拡大の背景

2014年度以降3Dプリンターが拡大することの背景の一番の理由は、3Dプリント技術の向上である。技術の向上と一言で言っても様々であるが、3点の技術があげられる。

精度の向上

第一は精度の向上だ。3Dプリンターの造形精度は工業用や医療用で使用されているタイプは精密な部品が作ることが可能だが、デスクトップタイプの性能はあまりいいとは言えない。

積層精度が粗く、精密な構造を求められるパーツ類や、エンドユーザーが手に取るコモディティアイテムの製造としてはとてものこと使用することは難しい。しかし造形精度が向上すれば更なる利用の拡大が見込まれる。

スピードの向上

第二の技術は造形速度だ。現在の3Dプリンターの造形速度は作る対象物の形状や精密度によって異なるが非常に遅い。

大まかに1cm積層するのに1時間じかくかかるため、1個の部品を作るにも1日近くかかってしまう。

例えばGEのように生産ラインに3Dプリンターを組み込んだ場合、大量に生産する場合には3Dプリンター自体の台数をそろえる必要がある。

トータルでコスト削減につながるとはいえ、初期投資で相当なコストが発生してしまうことになり、導入に踏み切る企業は大手に限られてしまう。

しかし造形スピードが大幅に向上すれば1台の3Dプリンターで作れるパーツ類も増え、初期コストも大幅に減らすことが可能だ。

現在3Dプリンターの造形スピードを速める研究は各社行われており、来年度以降この問題は徐々に改善されていく方向にある。

例えば、EOS社は造形スピードを従来品にくらべ60%も削減したモデルを発表した。

また、3DプリンターメーカーのCreate it REAL社は、造形スピードを2倍にするリアルタイムプロセッサ「3D RTP」を開発し、全ての3Dプリンターメーカーに販売を計画している。

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素材の多角化

第三の技術は素材の多角化である。3Dプリンターで現在使用されている材料はABSフィラメントPLAフィラメントからなるプラスチックや石膏、金属が中心であるが、様々な素材が研究開発されてきている。

ゴム状のタイプや、木材、次世代素材と言われるグラフェンなど、素材研究に3Dプリント技術が入り込んで同時に研究されるという状況だ。

言うまでもなく素材の多様化は3Dプリンターの使用シーンを拡大し、より広い分野での利用が可能になる。

また単一素材だけではなく、異なる複数の素材を組み込む複合プリント技術も進んでおり、新たな3Dプリンターも登場している。

3Dsysstemsは2013年12月の展示会で、異なる素材を複合してプリントする複合プリンターや世界で初となるフルカラーのプラスチック3Dプリンターのモデルを発表した。

素材の研究は素材の分野だけではなく、価格の部分での改善も行われている。金属原料のメーカーMetalysis社は3Dプリンター用の低コストなチタン粉末剤を完成させた。

こうした素材の多様化も3Dプリンターの拡大を推し進める背景となる。

まとめ

当サイトでも企業の3Dプリンター導入事例や3Dプリントサービスの増加などをお伝えしてきた。

2014年度以降も3Dプリント技術が向上することで、モノづくりに取り入れられる事例を取り上げ、参考の一助にしていただければと思っている。

3Dプリンターは圧倒的な技術力の向上によって、従来とは全く異なる使用用途をもたらしている。

単なる試作品製造としての用途ではなく、デジタル技術と組み合わせることで生産プロセスから販売までに至るサプライチェーンを大きく変革させようとしている。それは世界の組み立て工場として立脚するシンガポールの3Dプリンターに対する取組を見れば一目瞭然だ。

またアメリカやイギリスなども教育システムそのものに3Dプリント技術とデジタル技術を取り入れるカリキュラムを立ち上げている。こうした諸国の動きは単なる一企業の枠を飛び越えた国を挙げた取り組みとなっている。

ものづくり大国として自負する日本も3Dプリンターとデジタル技術に対して貪欲にその利用方法と知識を吸収し、次世代型の製造業に対応できる構造にする必要があるのではないだろうか。

こうした考えのもと、2014年度も情報を発信していきます。

i-MKAERでは光造形3DプリンターForm3+やレーザー焼結3DプリンターFuse 1Raise3Dシリーズなど多彩な3Dプリンターのノウハウ、販売をご提供しています。ご質問や無料サンプルや無料テストプリントなどお気軽にご相談ください。