クッキー(ビスケット)の歴史

現在世界中で食べられ、最も普遍的なお菓子の一つであるクッキー。お菓子メーカーやプロの料理人だけではなく、家庭でも手軽に作れることから、レシピサイトなどでも人気のお菓子だ。もともとその起源は、紀元前にさかのぼると言われ、旅の携帯食が始まりともいわれている。ちなみに、クッキーはほとんどの国ではビスケットと言われ、あまり両者の明確な違いを意識している人は少ない。ただし国によっては、例えばスコットランドなどでは、クッキーという言葉がプレーンなパンを表現する場合もある。ここでは語源のなりたちについて詳しく言及しないが、いずれにせよ現代におけるお菓子のクッキーは驚くほど豊富な種類が存在し、手軽にお菓子作りが楽しめる存在だ。

クッキー(ビスケット)の起源。元は旅行の携帯食

もともとクッキーの始まりが旅行の携帯食であったことは既に述べたが、その最大の理由は長期間保存がきくことや、高い栄養価、また手軽で持ち運びが可能という機能に集約される。例えば、船の中で料理をしなければならない場合、料理人に加えて航海日数×3度の食事分の食料を備蓄しなければならない。また、長期間保存するためのスペースを確保しなければならず、現代のような冷凍庫や冷蔵庫などの設備が存在しない時代には、手軽な携帯食がいわば航海には必需品であったのだ。実際、1588年の無敵艦隊で有名なスペイン海軍では、水平や水夫の1日の手当ては1ポンドのビスケットと1ガロンのビールであったと記録されている。このように船旅や軍隊の携帯食としての存在がクッキー(ビスケット)の始まりである。

お菓子としてのクッキー(ビスケット)。ペルシャ帝国の料理家によって開発

そんな携帯食として利用されていたクッキー(ビスケット)が、お菓子として開発されはじめたのは、7世紀のペルシャともいわれている。当然のことながらクッキー(ビスケット)は旅行用以外にも広く利用されていたが、その質感は硬く乾燥していて無糖だった。また西洋において主食はあくまでパンであることから、パンの調理の後に作られており、貧しい人のための安価な栄養補助食品としての役割であった。そのクッキー(ビスケット)が“お菓子”として付加価値がつくようになったのは、砂糖を使用することになってからである。始まりはペルシャ帝国の料理家によって開発されたものが起源とされ、当初はハチミツや果物で甘くする方法がとられていたという。

レコンキスタで全ヨーロッパに普及

その後14世紀にはヨーロッパでは当たり前の存在にまで普及し、王室の料理から町の露店販売まで、あらゆるスタイルで製造され全ての階層の人が日常的に食べるお菓子に進化を遂げたのだ。ちなみに、ヨーロッパにクッキーが広まったきっかけの一つは、キリスト教国のイベリア半島奪還を目的に行われた700年にわたる戦い、「レコンキスタ」であるともいわれている。レコンキスタは、イスラム教の国がスペインやポルトガルがあるイベリア半島を制服したことに対するキリスト教国の奪還事業で、軍隊の遠征には携帯食として重宝するクッキーが大いに活躍したに違いない。その後1620年後半には、船旅にも強いというクッキーの特性を生かし、オランダを経てアメリカに持ち込まれ、全米に広まることとなった。

日本では幕末まで兵糧の扱い

因みに、クッキー(ビスケット)が我が国日本に最初に登場したのは、やはりアメリカと同様、ヨーロッパ諸国が全世界を席巻した大航海時代である。具体的には1543年、鉄砲と共にポルトガル人によって種子島に伝えられたとされる。しかし、日本に伝えられたたった2丁の鉄砲が瞬く間に日本全国に普及したのとは違い、クッキー(ビスケット)が庶民の間で広く普及するまでにはかなりの期間を要することとなった。実際にクッキー(ビスケット)が記録として登場するのは幕末の時代であり、長崎の医師で蘭学者である柴田方庵が水戸藩からの依頼で製法書を作製し送ったという記録が初めてである。また、ゴーフルのお菓子で有名なお菓子メーカー風月堂が、明治元年に薩摩藩にビスケットを納めたという記録も残っている。このように見ると、ビスケットは幕末においても、古代からの用途と同様、兵士の食料、腰兵糧的な扱いとして利用されていたことが見て取れる。少なくとも、庶民のお菓子として広く普及するようになったのは明治時代になってからだ。

風月堂により庶民のお菓子として広まる

ビスケットを一躍庶民のためのお菓子として広めた存在が風月堂だ。風月堂は江戸時代から続く老舗のお菓子メーカーで、現代でもゴーフルと言えば明治以来のロングセラー商品として多くの人に親しまれている。実際、風月堂が和菓子から洋菓子へ進出するきっかけともなった製品の一つがビスケットだ。もともと江戸時代には和菓子の御用商人として諸大名のお菓子作りを一手に引き受けてきた風月堂だが、明治維新により西洋文明の導入が進む時代を見越し、洋菓子の開発にもいち早く取り組んでいる。そのため、早くも明治8年(1875年)には第一号となるビスケットの販売を開始している。西洋から遅れること数百年で、クッキーやビスケットはようやくお菓子として普及したのである。

ITテクノロジーの普及で誰でも“思い”を形にできる

クッキーやビスケットは、お菓子メーカーが販売する製品から、一般の人が手軽に作れる手作りクッキーまで幅広く作られている。特に、料理の分野はITの普及により、多くの人が参加できる仕組みが整っている。さまざまなレシピサイトでは、毎日数多くのレシピが投稿され共有される。また、何よりも手作りの料理やお菓子は、相手に対する“思い”や“気持ち”を込めたギフトとして、一番の表現方法だ。こうした手作り市場の盛り上がりに合わせるかのように、最近では業務用の材料も一般向けに販売されるようになり、誰でもプロレベルの材料を手に腕を振るうことができる。こうした相手を思う手作りクッキーは、テクノロジーの進化によって、更に表現の幅が増えそうだ。次回は、自らの“思い”を物体に押し込め形にする“型”の歴史と進化についてご紹介しよう。

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