3Dプリントセンター設立に1500万ポンドの公的資金を投資するイギリス

イギリスの3Dプリント政策とは

イギリスは国を挙げて3Dプリント技術の導入と開発に取り組んでいる。

民間の3Dプリントサービスを手掛ける企業への支援や、3Dプリント技術の教育制度への導入など様々な取り組みを実施している。

今回新たな政策の一つとして2015年オープン予定の3Dプリントセンターへの投資を明らかにした。

イギリスの財務大臣ジョージ・オズボーンが発表したところによると投資される公的資金は1500万ポンド(約25億5000万円)にも上る見通し。

今回の3Dプリントセンターの設立はまさにイギリスの製造業を牽引する設備として期待をかけている。

イギリスの主要な製造業は航空宇宙産業と自動車産業だが、3Dプリント技術が両産業の製造プロセスに革命的な影響をもたらすと期待が高まっている。

特にイギリスの航空宇宙産業は世界最大規模で、航空宇宙産業のコングロマリットBAEシステムズはアメリカのボーイングやロッキード・マーティンなどと世界一二位を争うほどの規模を誇っている。

今回の3Dプリントセンターの設立目的は、この航空宇宙産業の製造体制をさらに強化し、激化するグローバル競争に打ち勝つことを狙いとしているようだ。

イギリスの航空宇宙産業の規模

これほど力を入れるイギリスの航空宇宙産業はどの程度の規模なのであろうか。下記はイギリスの航空宇宙産業のポイントをまとめた図だが、まとめると以下のようになる。

  • イギリス中で23万人の仕事を支えている
  • 毎年イギリス経済に240億ポンド貢献している
  • 毎秒2.5ごとにロールス・ロイスのエンジンを搭載した飛行機が離陸している
  • 2031年までに民間ヘリコプター市場は4兆4000億ドルに達する見通し

政府主導の3Dプリントセンターの目的

航空宇宙産業はイギリス経済の今後を支える巨大市場だが、3Dプリントセンターで具体的にどのような事業を展開しようとしているのだろうか。

その前にイギリスの自国産業強化に対する意気込みが印象的であるため、投資を発表した財務大臣であるジョージ・オズボーンの発言を紹介する。

我々は航空宇宙産業分野においてヨーロッパで最高であり、私はさらにより良いものにしたいと考えています。今年から2030年までの間に27000機以上の新しい飛行機が必要とされ、イギリス経済にとって数十億ポンドの価値があると考えています。我々政府はイギリスの成長産業に投資する20億ポンドの資金のうち、航空宇宙産業の製造設備に6000万ポンド投資することを決定しました。

航空宇宙産業を強化するためのとりくみとして累計で6000万ポンド(100億円)近い金額を想定しており、3Dプリントセンターはそのうちの四分の一を占めるものだ。

3Dプリントセンターの具体的な役割として、航空機エンジン、航空機の着陸装置のほか、自動車や医療機器の新製品開発を行うとのことだ。

また同時に飛行機やジェットエンジン、民間用ヘリコプターに使用される新素材の開発なども手掛けることになる。

今回の3Dプリントセンターの建設はイギリスの経済政策の一部にすぎないがその果たす役割と期待の大きさは相当なものだろう。

まとめ -進む先進諸国の3Dプリンター政策-

イギリスの航空宇宙産業で代表的な企業は先にも述べたBAEシステムズとロールス・ロイスの2社だ。

以前もご紹介させていただいたが、この2社は既に3Dプリント技術を製造ラインに導入しており、自社の製造体制を強化している。

BAEシステムズは戦闘機に使用されるパーツ類を3Dプリンターで製造することで4年間で120万ポンド(約2億円)のコスト削減を見込んでいる。

一方ロールス・ロイスは航空機エンジンを製造しているが、ジェットエンジンを組み立てるパーツの製造を3Dプリント製造に切り替えた。ロールス・ロイスもコスト削減と圧倒的なリードタイムの短縮を実現することを可能にした。

航空宇宙産業における3Dプリント技術の導入はコスト削減、リードタイム短縮、品質向上、燃費低下によるサービスの向上、といった様々なメリットをもたらすことが証明されつつある。

2015年に今回イギリスが公的資金を投資する3Dプリントセンターが開設されれば更なる製造業の財務・品質・製造、3面における強化がなされるのではないだろうか。

昨年以降、世界各国が3Dプリント技術の自国産業に適合した効果的な運用方法を定め、それに余すところなく投資する動きが加速していると感じられる。

イギリスだけではなく、アメリカ、シンガポール、中国といった主要製造業を国の機関産業にもつ諸国がそうだ。既に2014年は「3Dプリンターは何に利用できるのだろう?」といった疑問を呈す時期は終わっている。

各国の3Dプリント政策の取組の記事はこちら

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