TRINUS、技術とユーザー目線の製品開発を行うクラウドメーカー

By | 2017年1月24日
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クラウドコミュニティによる製品開発の普及

クラウドコンピューティングの普及は、これまでのビジネスのやり方を変え、あらゆる業界の仕組みを変えつつある。ものづくりの分野においてもその影響は顕著で、とりわけ製品開発の領域において、その真価を発揮しつつある。

従来、製品開発はメーカーの中の一部の部門が中心になって行われてきたが、クラウドに基盤を置く製品開発の手法では、コミュニティに参加するユーザーによって開発が行われる。

オープンコミュニティといわれるこの手法では、参加するユーザーのアイデアやデザインが、ユーザーたちによってシェアされ、評価され製品化されていく。コミュニティの形態によっては、プログラムのソースコードのように設計データが公開され、ハッキングされ進化していく。

コミュニティによる製品開発の利点と課題

このクラウドコミュニティによる製品開発の利点は、より多くのアイデアを開発段階で集約することが可能で、優れたアイデアやデザインを集めやすいのが特長である。従来の製品開発のように一部のメーカーの製品開発部門が行う形態に比べ、より多くのアイデアを、より低コストで、スピーディに集めることができる。

最近では従来の大手メーカーも、このクラウドコミュニティによる製品開発の手法を一部取り入れ始める動きも登場してきている。

しかし、その一方で、オンラインコミュニティ手動のサービスでは(製品開発やものづくりに限らず)、やり方次第では、無尽蔵にユーザーが参加できるため、そこに集まるアイデアも玉石混合になりかねない。

必然的に“質の低下”を招きやすいという課題が付きまとうことになる。そのため、クラウドコミュニティビジネスでは、プラットフォームの質をいかに保つかということが重要になる。

TRINUS 

デザイナーとコミュニティによって製品開発が行われるクラウドコミュニティ  ※画像提供:TRINUS

今回ご紹介するTRINUS(トリナス)は、製造技術をベースに、製品開発のアイデア、デザインを集めるといった新たな手法により、この課題を見事に克服し、新たな製品を生み出すことに成功している。本日は、技術と生活を明るくする新たなものづくりを行うTRINUSの取り組みをご紹介しよう。

製品開発の“あるべき姿”を追求するTRINUSのコミュニティ

TRINUSは、「技術とデザインの化学反応による驚きを」をコンセプトに掲げ、製造技術をベースに、製品開発を行うクラウドメーカーだ。従来のものづくりのオンラインコミュニティとは、基本的に製品開発に対するスタンスが大きく異なる。

これまでのクラウドコミュニティの特徴は、“ものづくりの民主化”という価値観の元、誰でも参加できるということを軸にしてきたが、前述した通り無尽蔵な開放は、玉石混合の状況を招きやすい。

一方、TRINUSの場合は、製造技術をTRINUSが選定し、その技術を活かすアイデア、デザインをコミュニティの力によって集約する手法をとっている。コミュニティへの参加は原則自由だが、製品開発にデザイナーとして参加する場合には、単純に自分が作りたいものを投稿するのではなく、製品コンセプトまで確立したうえで投稿しなければならない。

このルールにより、ややもすれば“個人の趣味”に走りかねない“ものづくりの民主化”の弊害を、製品開発のあるべき姿に正すことに成功している。それでは次に製品開発にデザイナーとして参加する条件について詳しくご紹介しよう。

コンセプトメイキングの重要性。ユーザーニーズを考えさせる仕組み

まず大前提として、ものづくりと製品開発の最大の目的は、その製品を手にすることによって、その人の生活を豊かにし、幸せにすることである。

製品の価値や技術の価値は、すべてこの“ユーザーを豊かに、幸せにする”という点に集約される。そのためには、徹底してユーザー目線による製品開発を行わなければならない。TRINUSのコミュニティでは製品開発にデザインを投稿する際には、3つの観点が設けられている。

第一がデザイン・コンセプト、第二が基本フォルム、第三がフォルムのブラッシュアップである。この中で最も重要な部分がコンセプトの部分であり、TRINUSでは、このデザイン・コンセプトを明確に定義する上で、一方的な独りよがりのデザイン、製品にならないように努めている。あえて、TRINUSのこのコンセプト部分の定義をそのまま明記すれば、

デザイン・コンセプトとは、例えば「技術をどのような用途に活用すべきか」「なぜそうすべきなのか」といった、文化的思想又は感情の創作的な表現であって、モノ・コトの関連性のある仕組み及びビジネス戦略、市場戦略等を含み、かつ当該コンセプトは応用可能性や展開拡張性があり、かつ公表時点で類型のビジネスモデル、サービス、商品等が存在しない独自の特徴を有するもの

としており、この要件に該当しない提案はコンセプトの貢献としては認めらないことになる。

このコンセプトメイキングの工程は、製品開発やデザインに関わる人間であれば当然抑えていなければならない当たり前の概念であり、必ずデザインの形状がアウトプットされる前に、ユーザーに最適なコンセプトが策定されなければならない。

世の多くの人間が誤解しているが、“デザイン”というと、単なる外側の形状のことを指すと勘違いしているが、デザインの本来の役割は、「どの時代の、どんなユーザーの、どんな課題を解決し、どんな価値を提供するのか」という点を具現化したものに他ならない。

そして、その役割を端的に表現したものがコンセプトなのである。いうなれば、コンセプト無き製品、デザインは無く、製品開発にとって最も重要となる部分と言えよう。

TRINUS

技術力、素材などをベースにユーザー目線にのっとった製品化のアイデア、デザインが投稿される。 ※画像提供:TRINUS

このコンセプトメイキングは、別段特別な作業ではなく、これまでの製品開発やデザインでは、当たり前に行われている過程であり、クラウドコミュニティで製品を作る場合にもなくてはならない部分である。TRINUSは、このデザイン・コンセプトの選定を最も重要視しており、この過程において、参加するデザイナーは、ユーザーニーズを徹底して考えることになる。

製品開発から投票、購入までできるコミュニティの仕組み

ここで改めてTRINUSの製品化までの流れと仕組みについてご紹介しよう。まず初めにTRINUSが日本全国から選定した、ユニークな技術や素材が公開され、その素材・技術を活用した製品デザインの募集が行われる。

投稿されたデザイン案はオンライン上で公開され、投票やコメントなどが可能だ。最終的に製品化されるかどうかの判断は、この投票結果や実現可能性などをTRINUSが決定する。製品化が決定されたデザインは、TRINUS、デザイナー、該当する技術や素材メーカーと共同で取り組み、その進捗状況もサイト上で公開される。

その後開発が完了した製品は、サイト上で購入することができる。基本的にコミュニティに参加するには会員登録が必要で、一つのアカウントで、デザインの投稿も、投票やコメント、購入もすべて行うことができる。デザインが採用されたユーザーには、一定のデザイン料とロイヤリティが支払われる。

この仕組みにより、既にいくつかの技術や素材を使って製品化されており、オンラインストアだけではなく帝国ホテルや伊勢丹新宿、三越銀座などの実店舗でも販売が開始されている。

TRINUS

投稿されたアイデア、デザインをベースにコミュニティの評価などを参考に、製品化を決定する。   ※画像提供:TRINUS

独自の技術と素材にデザインで、人に価値を与える新製品たち

それではここで、実際に製品化された技術や素材をいくつかご紹介しよう。そこではTRINUSが掲げる「技術とデザインの化学反応による驚きを」といったコンセプトの通り、さまざまな技術や素材が、アイデアとデザインの力によって、斬新な製品に生まれ変わっている。

「抗菌メッキ」技術と花瓶の組み合わせが生み出すもの

第一にご紹介するのが、株式会社神戸製鋼所が開発した抗菌メッキ技術KENIFINE™(ケニファイン)を使い、花瓶を作るという取組だ。KENIFINE™(ケニファイン)は、従来の10倍以上もの抗菌効果を持つメッキ技術で、水中に繁殖する緑膿菌を減少させる効果があるとされている。

緑膿菌とは、抵抗力が低い人、例えば病院内の患者の体内に入ると感染症を引き起こす恐れがあるとして、病院内での花瓶の水による生け花は禁止されているのが一般的であった。

しかし、KENIFINE™(ケニファイン)を使って開発された花瓶、PLANT’S JEWEL(プランツジュエル)で実験を行ったところ、なんと49万個の緑膿菌が存在する水が、24時間後にはゼロになるという効果が示された。

この花瓶PLANT’S JEWEL(プランツジュエル)は、切り花を細菌から守るだけではなく、病院に安心して飾れる新たな価値をもたらしている。

TRINUS

抗菌メッキ技術を花瓶に応用。切り花を細菌から守るだけではなく、病院に安心して飾れる新たな価値をもたらしている。 ※画像提供:TRINUS

TRINUS

49万個の緑膿菌が存在する水が、24時間後にはゼロになるという実験結果。 ※画像提供:TRINUS

抗菌メッキ技術KENIFINE™(ケニファイン)

新宿伊勢丹や三越などでの販売も開始。   ※画像提供:TRINUS

紙配合のポストプラスチック材料。楽しさと環境性能を両立させた色鉛筆

お次にご紹介するのが紙、廃棄古紙を使って作られた色鉛筆、花色鉛筆である。通常鉛筆は、芯の部分にはロウなどに染料や顔料を混ぜて作られ、外側の部分には木が使われるのが一般的だ。

しかし、この花色鉛筆は、木材の部分に、廃材であった古紙とプラスチック原料を混ぜ合わせた新素材MAPKAによって成型されている。

この素材は廃棄する際にも環境性能が高く、汎用プラスチック原料と比べて、CO2排出量を約28%も削減できる効果がある。まさにポストプラスチック材料とも呼ばれる新素材だ。このMAPKAによって作られた花色鉛筆は、紙ならではの質感が特長で、優しい肌触りとマットな質感が印象的である。

これによって作られた花色鉛筆は、持ちやすく滑りにくい機能性もさることながら、日本ならではのデザインによって、削りかすが花びらのように美しいなど使う人に以外な楽しさも与えてくれる。

ものを書くという何気ない行為に、楽しさと遊び心を与えてくれるプロダクトも生み出されている。

ちなみに、この花色鉛筆の製造では、企業が地域に仕事を生み出すプロジェクトの一つ、「内職ワークスペース」という形も活用され始めている。「内職ワークスペース」は、お次にご紹介する3Dプリント樹脂金型デジタルモールド®に取り組む有限会社スワニーが、商店街の空きスペースを利用して開始した長野県伊那市の手作業による内職作業プロジェクトで、製造の機械化と昔ながらの日本の手作業による加工仕上げを融合させたもの。

人口減少が進み、空きスペースが広がる地方経済の活性化の新たな動きとして注目される取り組みだ。この花色鉛筆の製造から、TRINUSは、クラウドによる企画からデザイン、試作、製造、加工といった新たな形のメイド・イン・ジャパンを復活しつつある。

MAPKA

古紙とプラスチック原料を混ぜ合わせた新素材MAPKA   ※画像提供:TRINUS

花色鉛筆

廃棄される外側の木の部分にMAPKAを使用。新たな色鉛筆として製品化された。

花色鉛筆

削りかすも花びらのように楽しめる遊び心がある色鉛筆に。

3Dプリント技術とプレス加工により生み出された、MINAMOのお皿

最後にご紹介するのが、以前もご紹介した3Dプリント樹脂金型であるデジタルモールド®を使ったプレス加工による金属のお皿、MINAMOのお皿だ。デジタルモールド®は、ストラタシスのインクジェット方式のPolyJet 3Dプリンターによって作られる射出成型用の樹脂金型だが、金属製品の量産加工であるプレス成型(デジタルモールド・プレス)にも対応している。

従来、プレス成型用の金型は、金属製であるのが通常であったが、これまで難しかった「複雑かつ滑らかな鏡面」が実現されることとなった。

ステンレスならではの鏡面仕上げに加え、水面の波の様子が再現されている。これまで金型を作るためには多額のコストと時間がかかっており、大量のロットが販売されることが前提となっていたが、デジタルモールド®であれば、3Dプリンターからダイレクトに製造可能で、またこのMINAMOのお皿のように様々なパターンを手軽に表現することができる。

より製品開発に取り組むハードルが下がり多くの挑戦を生み出すテクノロジーだと言えよう。

デジタルモールド®

3Dプリント樹脂金型であるデジタルモールド®を使った取り組みも登場。

デジタルモールドプレス

プレス加工に対応したデジタルモールドプレスでの利用。

水面のお皿

デジタルモールドプレスにより新たな金属のお皿として開発されたMINAMOのお皿。メッキ加工では表現しにくい水面を表現。

MINAMOのお皿

デジタルモールド®ならではで様々なパターンも再現できる。

デジタルモールドプレスについてはこちらに詳しくご紹介しています。

まとめ 新たな仕組みが価値あるメイド・イン・ジャパンを生み出す

TRINUSは、技術や素材をベースにしているが、あくまでも主眼はユーザーの生活を豊かにするということが中心である。「技術をどのような用途に活用すべきか」「なぜそうすべきなのか」といった、製品コンセプトがあったうえで、その技術や素材が活かされるのである。

ものづくりにおいて、技術に基盤を置いた場合、ややもすれば、技術の追求に主軸を置いた製品開発に陥りやすくなる。そこには作り手側の技術に対する思いは存在するが、ユーザー目線は乏しくならざるをえない。製品開発は本来ユーザーにとってこういう機能が必要だから、この技術を使うという、ユーザーニーズありきの順番でなければならない。

TRINUSでは、このものづくりにおいて最も大切なものの見方を、クラウドコミュニティに取り入れることで、より価値ある製品を生み出そうとしている。

ちなみに登録しているデザイナーはすでに2800名(2016年10月時点)を超え、生活を豊かに、明るくするためのアイデア、デザインはさらに拡大していくだろう。またこの製品開発コミュニティは、同時に高い技術力や独自素材を持つ、日本の製造業に新たな可能性を与えることにも成功している。

かつての大量生産時代には、多くのメーカーや製造業が、安価な労働力を求めて海外に生産拠点を移してきたが、クラウドコンピューティングや3Dプリンターを中心にしたダイレクト製造の普及で、本格的なメイド・イン・ジャパンが復活しつつある。

TRINUSは、技術とユーザー目線の製品開発を行う新たなクラウドメーカーとして、価値あるメイド・イン・ジャパンを生み出す企業として期待される存在だ。

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