トヨタのi-ROADが始動、マスカスタマイゼーションの可能性

マスカスタマイゼーションの流れ

インターネットの世界では、全てがデータ化され、低コスト化される。これまで有料であったものが無料になり、一瞬のうちに共有されあらゆる人間が利用することができる。このインターネットの巨大な影響はソフトの分野だけではなく、物質の分野まで進出し始めている。その代表的な存在が3Dプリンターだ。

3Dデータからダイレクトに物体を作れるこのマシーンは、金型と対比される単純な加工機ではない。3Dプリンターの本質は、設計図がデータ化されることで一瞬のうちにインターネットで共有され、世界中どこにいてもインターネットから物体を作り出すことができる機能にある。

この3Dプリンターとインターネットが既存の製造業にもたらす影響は巨大だ。それは単純な物流や生産体制だけにとどまるものではない。消費者の価値館も大きく変え始めていくからだ。インターネットと同様、物を実装化する過程が大幅に高速化、低価格化されれば、より迅速に消費者が好むモノをすぐさま提供することができるように成る。

すなわちこれまでの画一的な生産体制では細かいニーズに対応できなくなる。ただでさえモノがあり余り、同じような機能や同じような見た目の製品が蔓延する中、従来通の製品企画と従来通の製造体制では、高速化し多様化する消費者の価値観に対応できるものではない。

ここで求められるのが人々の個別の要望に応えられるカスタマイズ性と量産性である。マスカスタマイゼーションと言われるこの方法は巨大なメーカーにとって最も求められる体制だといえよう。このような動きが求められる中、トヨタはまさにこの動きの前兆とも言える取組を開始し始めた。本日はトヨタのオープンロードプロジェクトをご紹介。

i-ROADの3Dプリントカスタムパーツ

トヨタが開始しているオープンロードプロジェクトとは、新たな都市型の乗り物i-ROADの開発プロジェクトだ。i-ROADとは自動車でもバイクでもない、都市を移動するのに最適な未来の乗り物だ。

1回の充電で50キロも走行できる。オープンロードプロジェクトはこのi-ROADの開発を一般人、有識者・クリエーター、ベンチャー企業などを対象に東京都内から100名の試乗パイロットを募集し、ともに製品開発を行っていくというプロジェクトだ。試乗期間はひとり一ヶ月で、合計8期にわたって行われるため1年間に及ぶ。

その試乗によって得られた意見や技術によって最終的な製品に結びつける考え。このi-ROADはコンセプトもさる事ながら、その機能性もまさに未来の乗り物と言える。リチウムイオン電池を搭載し、100Vのコンセントで充電可能、完全な電気自動車としてCO2の排出はゼロ。バイクのような操作性を持ちながら、自動車のようにヘルメットは不要だ。

さらにドライバーのハンドル操作によって左右の前輪が上下に動き、スキーのような感覚を持つことができる。大きさは車体の幅が870mmという超コンパクトサイズで都会での移動に最適だといえる。そして何よりも、これまでの自動車とは異なり、ユーザーの要望に合わせてボディパーツを3Dプリンターでカスタマイズすることが可能だ。

i-ROAD動画

i-ROADスペック

  • 全長:2,345mm
  • 全幅:870mm
  • 全高:1,455mm
  • ホイールベース:1,695mm
  • タイヤサイズ:フロント80/90-16 リア120/90-10
  • 最小回転半径:3.0m
  • 乗車定員:日本1名、欧州2名
  • 空車重量:300kg
  • パワートレイン:電動モーター×2
  • 最高速度:日本60km/h 欧州45km/h
  • 充電走行距離:50km
  • バッテリー:リチウムイオン電池

将来のマスカスタマイゼーションのテストの可能性

このi-ROADはベースとなる車体は同じだが、表面のテクスチャーやカラーを3Dプリンターで変更できるという楽しみをもたらしている。現状ではi-ROADでカスタマイズできるパーツは限定されているが、これは将来のトヨタ車のマスカスタマイゼーションの展開の可能性を示すものではないだろうか。

もともとトヨタの生産方式は「必要なものを、必要な時に、必要な量だけつくる」という考えすなわちジャスト・イン・タイムを基準に、マスプロダクション(大量生産)を効率的に運営できる方法が取られているが、この思想は、エンドユーザーの個別の要望を取り入れ、必要なものを製造するマスカスタマイゼーションと共通するものである。

消費者が欲しいデザインや機能を個別に提供することができれば、より無駄なラインナップをつくる必要はなくなるためだ。今回のi-ROADにおける3Dプリントカスタマイズが将来のトヨタ車全体の製造に適用されるかどうかは分からないが、その可能性を感じさせる取り組みだといえよう。

パーツを3Dプリンターでカスタマイズできる
表面のテクスチャー、カラーなどをカスタマイズ

まとめ これまでの画一化された量産体制は通用しない

時代は確実にマスカスタマイゼーションの方向に向かいつつある。今回のトヨタの取組だけではなく、それ以外の動きは既に起こりつつある。たとえば以前もご紹介したがGoogleと3Dsystemsが行うスマートフォンのカスタマイズ製造を行うProjectAraはますカスタマイゼーションの代表的な事例だといえよう。

さらには、大量生産ではないが、ローカルモーターズは確実に個人個人のカスタマイズを目的とした自動車製造を開始している。また、3Dプリンターを使用指定はいないが、BMWminiはさまざまなパーツを自由にカスタマイズできる部分が魅力としてユーザーに評価されている。

このように確実にエンドユーザーが求める物は複雑化し、よりニーズに合致した製品を提供できるかが鍵になる。その一方で、製品を提供する側もスピードと生産性、さらに高いカスタマイズ性を発揮しなければならない。大企業に求められる部分は、そのための生産体制をいかに整えるかという部分に尽きるだろう。

これまでの従来通の画一化されたマーケティング調査、製品企画、試作、量産、販売という手法は一切通用しなくなる。製造業全体は、時代に合わせた方法に組織や考え方を変更する必要がある。

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