回路プリントから電子部品の実装までできる電子回路専用3Dプリンター

電子機器の動力源、回路基板のオンデマンド製造

3Dプリント技術は物体を構成する技術だが、電子機器のように動く物体を作ることは不可能だ。

当たり前の話だが、電気で動くモノは、その動力源である電子回路基板が必要なためだ。この電子回路基板は、いわば電子機器の心臓部ともいえる部分。

この電子回路部分は、一般的にはプリント基板と言われる緑色などのボードと、そこに着けられている無数の部品、はんだなどで構成されている。

回路はその電子機器の機能や動く動作方法によって設計図が作られ、プリント基板にプリントされ、さまざまなパーツが取り付けられることになる。この電子回路基板の製造方法も一般的には、リフロー炉などを用いた大量生産方式がとられるが、1個単位でオンデマンドで作ることができる新たな機械が登場している。

いわば「電子回路の3Dプリンター」ともいえるこの機械は、電子回路の設計図ごとに、プリントから電子部品の配置まで一貫して行ってくれるものだ。

 プリントだけではなく、電子部品の設置も可能

この電子回路の3Dプリンターとも呼べる機器は、ニューヨーク大学工科大学出身のエンジニアが作った企業が開発したもので、Squinkというもの。現在資金調達サイトキックスターター上にて製造のための資金調達を開始している模様だ。

これまでオンデマンドの電子回路の製造を可能にする機器は、いくつか登場しているが、Squinkの画期的な点は、回路のプリントだけではなく、電子部品も設置することが可能な点にある。

電子回路部分は従来のものと同様、導電性インクをプリントしているが、電子部品の設置では、導電接着剤を用いることで可能にしている。

Squink動画

電子回路の3DプリンターSquink

導電性インクのプリントだけではなく電子部品の設置も可能

Squink開発メンバー

Squinkは無線LAN対応やUSB対応なため、PC経由でもUSB経由でも電子回路の設計図をダウンロードし、プリント可能。設計図の複雑さにもよるが基本的には1設計図あたり30分程度で作ることができるため、物体を造形する3Dプリンターよりははるかに早くできる。

 電子機器の試作に最適

このSquinkは電子機器の試作に最適だろう。商品の外側は3Dプリンターで作り、商品の動力源となる回路基板はこのSquinkを使用することにより、従来の商品開発とは比べ物にならないくらい早く、コストを抑えて試作品を作ることができるかもしれない。

とりわけ電子機器の場合は、商品のデザインとともに機能性や動作性も重要な要素を占めることから、商品の試作と修正は極めて重要になる。

また、これにより商品開発に挑む起業家や個人にとっても電子機器を作ることがずっと楽になるに違いない。通常の回路基板を作れる施設を持つ製造業と違い、起業家や個人ではこうした設備を持つことは不可能に近い。しかしSquinkがあれば、自分の考案した機能性や動作を迅速に試作品におとしこむことができる。

電子回路設計の試作に最適

squink-2
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まとめ -試作には最適、最終品の製造は要注意-

3Dプリンターとともに、電子回路がオンデマンドでデータから作れるようになれば、より商品開発のスピードはアップするだろう。Squinkの製品化に期待したいところだ。

しかし1点注意しなければならない点は、試作のみの用途に限るように思われる。電子機器は、その機能性や安全性という部分は全て心臓部である回路基板に依っているといっても過言ではない。

まさに回路基板の性能、品質=その製品の性能、品質といっても過言ではない。それでは回路基板の性能、品質とは何か。それは接合部分の性能、品質に他ならない。

当たり前のことだが、この世に存在する全てのモノ、商品はモノとモノが組み合わさることで成り立っている。

つまり接合技術がどれだけすぐれているかで、その商品の価値が決まるといっても過言ではない。

とりわけ、回路基板は、回路部や非常に多くの電子部品で構成されていることから、一つ一つの接合部の精度がもろに影響してくることになるのだ。

例えば、ある電子部品の付着部に微細な毛糸などが付着した場合、そこを電気が通ったらどうなるだろうか。

当然、燃えてその部分は炎症を起こすことになる。そうするとその製品は動かなくなるか、最悪の場合、安全にも関わる事態となる。

接合技術の精度がいかに大切かがわかるだろう。日本製の商品が故障が少なく、海外製の商品が故障が多いのは、この接合部分が日本の方がはるかに優れているためだ。

そのため、今回ご紹介したSquinkはあくまで試作品の製造で使用するのがベストだろう。もちろん、超精密なクオリティを担保できる接合レベルであれば問題はないが。

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