レーザー焼結(SLS)で最終品製造。プラスチック粉末のカラーコーティング技術とは

ナイロンポリアミドのパウダーから始まったレーザー焼結(SLS)

金属粉末の3Dプリンターで世界一のシェアを誇るEOS。金属粉末造形装置で全世界の40%の市場シェアを持ち、この分野における世界的なリーディングカンパニーといってもいい。

そのEOSを設立したのは現在のCEO最高経営責任者であるハンス・J・ランガー博士だ。 ハンス・J・ランガー博士は今から遡ること26年前1989年にEOSを設立、現在でもレーザー焼結(SLS)の分野において第一人者とも言える人物だ。EOSのレーザー焼結(SLS)の始まりは、現在世界でトップシェアを持つ金属粉末が始まりではない。

当初はプラスチックレーザー焼結(SLS)の開発から始まっている。 これは、創業当初の最大顧客である世界的な自動車メーカーBMWからの要望によるもの。現在主流となるメタル分野は、プラスチックレーザー焼結(SLS)システムの開発の後、開発されたものだ。

もともとプラスチック粉末から始まったレーザー焼結法だが、主なプラスチック素材はナイロンポリアミドが主流になる。 ナイロンポリアミドは衣服から自動車用部品まで多用される素材だが、レーザー焼結で使用される代表的なプラスチック素材だ。特許切れによって登場する廉価版のレーザー焼結(SLS)3Dプリンターもほとんどがナイロンパウダーを使った機種になる。

しかし、レーザー焼結法(SLS)で使用できるナイロン素材のカラーは基本的にブラックかホワイトなのが現状のところ。後処理で着色などもできるが、二次的な作業になってしまう。そのような状況の中、新たにレーザー焼結法(SLS)で使用することができるプラスチック素材に着色する開発が進められている。

このレーザー焼結用パウダーへの着色技術には、上記で述べたEOSの創業者兼CEOハンス・J・ランガー博士も投資を行っている状況だ。今回は、レーザー焼結法の幅を拡大するプラスチック粉末の着色開発をご紹介しよう。

プラスチックパウダーを8色にカラーコーティング。大幅な品質向上

レーザー焼結法(SLS)の幅を広げ、プラスチックパウダーをさまざまな色にコーティングする技術を開発するのが、DyeMansionと呼ばれる企業だ。EOSと同じドイツ企業でミュンヘンに本社を置いている。このDyeMansion社が手がけるコーティング技術は粉末状態の段階でナイロンパウダーを着色するというもの。

完璧なコーティング技術により、レーザー焼結後も部品の長期使用を可能にし、水や汚れに対して強い耐性を持つ。いわば単純に材料をカラーリングするだけではなく、材料特性自体も大きく向上させることにつなげられる。上記のように表面外観や汚れ、水をはじく防水加工になるだけではなくパーツとしての耐磨耗性を向上させるわけだ。

レーザー焼結(SLS)で作られたプラスチックパーツの特徴は表面がザラザラしている感じだが、このDyeMansion社によるコーティング加工では表面の粗さが改善され、パーツとしての品質も向上することになる。ちなみに、現在開発中とのことだが、通常の白よりもはるかに滑らかなホワイトニングという白さも実現することができるという。

現状利用できるカラーは、ブラック、オーシャンブルー、アイスランドグリーン、シャイニーイエロー、ディープ・パープル、EOSレッド、スワングレー、ピンケストピンクの8色だ。

8色にコーティング可能 ※画像出処 DyeMansion社
レーザー焼結(SLS)自体の精度も向上させる

ISOも取得、耐久性や耐磨耗性など6種類の機能向上

このDyeMansion社によるカラーコーティングは、独自技術によって完全に着色される。その精度は前段で述べたとおりレーザー焼結(SLS)の性能すらも向上させる力を持ち、数々の実証実験によって機能が証明されている。また、同時に医療や有害物質のテストでもISOを取得しており、有害物質の漏洩に関するISO10993-5と、皮膚接触テストISO10993-10を取得済み。

これにより完全なレーザー焼結(SLS)用のパウダーとして使用できる。一応、このカラーコーティングによって得られる性能は6つ、高品質な感触、耐汚染性向上、耐久性向上、耐磨耗性向上、紫外線抵抗性向上、防水性向上がもたらされる。

コーティングすることで表面の粗さも減少、機械的特性を向上させる

レーザー焼結(SLS)専用プラスチックパウダーのカラーコーティング効果

  • 高品質な感触:従来のザラザラしたレーザー焼結の感触ではなく、大幅に表面粗さを低減しビロードのような滑らかな感触を実現する。
  • 耐汚染性:表面コーティングにより異物の付着を防ぎ、製品の耐汚染性を向上させる。
  • 耐久性:表面カラーコーティングによる均質性と輝きは何年も保存され製品としての耐久性を保証。
  • 耐摩耗性:耐磨耗性も表面コーティングによって向上させる。
  • 紫外線抵抗性:単なるカラーリングとは違い、紫外線からの抵抗性を向上させ、製品としての長期の使用可能を実現。色落ちせず何年間も長期的に使用できる。
  • 防水性:撥水効果により水を防ぎ、高品質、耐久性に優れた耐性を実現。最終製品としての使用を前提とした加工が可能。
美しい仕上がりだけではなく、耐久性、紫外線抵抗、防水性などを向上

まとめ レーザー焼結(SLS)で最終品のダイレクト製造が加速する

このプラスチックパウダーのカラーコーティングは、素材に単なる着色を施すだけではない。これによって、素材そのものの機械的特性を大幅に向上させ、プロトタイプではない最終品のダイレクト製造へとつなげることが可能になる。レーザー焼結法(SLS)は特許切れによって金属粉末の加工が大きく注目されているが、このプラスチックパウダーのフルカラー化と大幅な機械的特性の向上により、更なる可能性が拡大しそうだ。

現在3Dプリンターは高性能なFDM3Dプリンターでは最終品のダイレクト製造に一部使用が開始され始めているが、それ以外ではいまだプロトタイプ製造の域を出ていないのが現状のところ。今回のEOSが出資したレーザー焼結(SLS)のカラーコーティング技術により、また一つ最終品の製造が近づきつつある。

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