射出成形レベルの仕上がりと生産性。ワッカーケミーのシリコーン3Dプリント

3000以上もの製品に使用される素材。シリコーン

シリコーンは、あらゆるプロダクトに使用されている素材だ。その分野は広範で、医療、建築、電子部品、日用品などで、およそ3000種類以上にも及ぶと言われている。もともとは、1940年代にGEが耐熱性を持つ絶縁体として開発されたのがはじまりで、今日の幅広い用途に至っている。

とりわけ、耐熱絶縁体としての機能から電子部品である半導体の材料としての利用がエレクトロニクスの大いなる進歩をもたらした。その材料は炭素原子であるケイ素をもとに人工で作り出されたポリマーで、その配合などにより、シリコーン樹脂、シリコーンゴムやシリコーンオイルなど形状を変化させる。

ちなみにシリコーンを使った我々のもっとも身近な製品として、コンタクトレンズや、ティッシュペーパー原料、また美容成形素材として使用される。そんな我々の生活に当たり前のシリコーンだが、新たにシリコーン専用の3Dプリンターが登場した。

シリコーンを使ったプロダクトでは射出成形など金型を使用した成形方法が主流であったが、今回は、ドイツの世界最大のシリコーンメーカーワッカーケミー社がこの最新技術を使用した取り組みを発表した。

射出成形の生産性と生体適合性、耐熱性、透明性を持つシリコーン3Dプリント

今回、シリコーンの3Dプリントを発表したワッカーケミー社は、この分野における世界最大のメーカーだ。ヨーロッパ、アメリカ、アジアと全世界に生産拠点を持ち、日本のつくばにも旭化成との合弁会社で拠点を持っている。その歴史は古く創業は1903年に遡る。

100年以上も続くシリコーンのリーディングカンパニーだ。同社は1947年にシリコーンの分野に参入を開始して以来世界中にこの製品を提供している。そして今、新たな製造技術として注目される3Dプリント製造の道を切り開こうとしているのだ。

シリコーンはその柔らかいゴム状の性質ゆえ、一般的な3Dプリント製法である熱溶解積層法FDMでは成形することが難しい。そのため従来通りの金型による製法が一般的だった。しかし、今回ワッカーケミー社は0.3mmの微細なレベルで処理することができるシリコーンの3Dプリント技術の開発に成功した。

点滴のように抽出。UV光で効果し積層する。
抽出と硬化を繰り返し、0.3mmレベルで積層が可能

その方法で作り出されるシリコーンパーツは射出成形で作り出されるパーツと何ら遜色がないという。この方法は、ロボットアームノズルから小さな点滴液のようにシリコーンを抽出、それぞれの層ごとにUV光を照射して固形化する手法だ。この製造プロセスによって、これまで固形化することが難しかったシリコーンのオンデマンド製造が可能になる。

また、将来は1秒あたり100グラムといった処理量を実現することによって、カスタムオンデマンドを実現しながら非常に迅速な生産体制が可能になる。この方法によって作り出されるシリコーン成形体は、従来の金型で製造されるシリコーンプロダクトと何の遜色もない滑らかな表面を持っているだけではなく、完全に生体適合性、耐熱性、透明性を備えている。

完成品は射出成形品と遜色がない透明性、なめらかさ、耐熱性、生体適合性を持つ

コンタクトレンズやインソール、生体用パーツの製造可能性

このシリコーンの3Dプリント製造の取り組みが画期的なのは、従来の金型と遜色が無い性能を持つシリコーンパーツを製造できる点だ。表面の仕上がりだけではなく透明性や、生体適合性、耐熱性といった一般的なシリコーンが持つ特性をそのまま再現できる。

これにより現在シリコーンで作られているさまざまなプロダクトが3Dプリンターで効率的に精度高く製造できるわけだ。例えばコンタクトレンズなどの光学用途や、ランニングシューズなどのシリコーンインソール、補聴器や鼻パッドなどのシリコーンパーツなど、その可能性は無限大だといえよう。

冒頭でも述べたとおり、シリコーンが使用される製品は3000種類を超える。今回のワッカーケミー社のシリコーン3Dプリント開発は、シリコーンを使った新たなものづくりを切り開くだろう。

3000種類以上ものシリコーンプロダクトの可能性

まとめ 専門メーカーが開発する3Dプリントで拡大するデジタル製造

今回のワッカーケミー社が開発するシリコーンの3Dプリントは、シリコーンという素材を知り尽くした、この分野で世界最大のサプライヤーによって開発された。その素材の特性や加工方法を知り尽くしているからこそ、新たな新技術である3Dプリントへの適合がなされたものだと考えられる。

こうした事例は他社で挙げるとすれば光学レンズメーカーのLUXeXceLが挙げられるだろう。LUXeXceLも長年光学レンズを製造してきたが、独自の3Dプリント技術によって、後処理不要の最終品をデジタルデータからダイレクトに製造することができる。そのレベルは射出成形で製造されるものと同等であり、光学レンズに必須の光透過率もコーティング不要で96.9%まで実現可能だ。

このように最新の製造技術である3Dプリントへの適合はその素材やプロダクトを知り尽くしている従来のメーカーが乗り出すケースが多い。こうした動きはまさにこれからのデジタル製造時代に対応する動きだといえよう。今後も専門の業種、素材に特化するメーカーが独自の3Dプリント製法を開発する可能性が期待できる。

シリコーンの特性と用途についてはこちらをどうぞ

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