ガスタービンパーツ製造で3Dプリント技術を導入するシーメンス

ガスタービン技術で世界3強の一つ

シーメンスはドイツのミュンヘンに本拠地を置く世界的な多国籍企業だ。

その分野は多岐にわたっており、電子機器から医療、交通、防衛、電力など非常に幅広い事業を展開している。

特に医療機器であるMRIや補聴器などの製造でグローバル市場のリーダーであり、同時に鉄道車両でも世界の鉄道車両製造の20%のシェアを持つ。

まさに機械関連の製造に関してはなんでも行うGEと並ぶ製造コングロマリットだ。

実は日本での活動は非常に古く、遠く幕末までさかのぼる。もともとはドイツ政府から徳川幕府にシーメンス製品が持ち込まれたのが始まりだ。

そんなシーメンスだがガスタービン技術でも世界トップクラスのレベルを持っている。

ガスタービンはガスタービンエンジンと言われる動力源であり、航空機やヘリコプター、ひいては火力発電所の起動には欠かすことができない存在。

ガスタービンの製造技術ではほぼ世界3社がトップを占めている。

GE、三菱重工、そしてシーメンスだ。中でもシーメンスはガスタービン製造販売の利益率で15%を超える高利益率をたたき出しており、この分野でもトップを走っている。

ガスタービンエンジン部品の3Dプリント製造

ガスタービンエンジンの製造では技術、利益率ともにトップを走るシーメンスだが、新たに製造プロセスに3Dプリント技術を導入することが発表された。

シーメンスはアメリカニューヨーク州、ニスカユナにある研究施設で3Dプリント技術を開発している。

2016年度からガスタービンエンジンに使用する燃料ノズルおよび、そのほかのパーツ類の生産を3Dプリンターで行うと発表した。

3Dプリントされた燃料ノズルや各パーツ類は現在シーメンスが製造しているボーイング737マックスとエアバスA320neoで使用される。

航空機用のジェットエンジンのパーツ類は既にGEが3Dプリント製造の計画を発表しているが、ここにきてもう一社であるシーメンスも3Dプリント製造の導入に踏み切ったようだ。

ちなみにGEは年間で85,000ユニットの燃料ノズルを製造しているが、GEもシーメンス同様2016年の導入を計画している。

GEのジェットエンジン燃料ノズルの記事はこちら

まとめ -3Dプリント技術で競争力の強化を図る諸国-

シーメンスはあらゆる機械類の製造販売を行っているがガスタービンエンジンの製造で特徴的なのが高利益率だ。

15%から20%の利益率を持っており、これは日本企業の製造業の利益率と比較した場合には数倍以上。

これはシーメンスだけに言えることではなく、欧米の製造業には共通して言えることだ。また欧米だけではなく、韓国のエレクトロニクス企業や自動車産業にも言える。

欧米や韓国の製造業の利益率の高さ(日本企業と比較した場合の)は、一国に、競合となりうる同列企業がほとんど存在しないことが大きな要因だろう。特に電化製品メーカーでは基本的に1国1企業である。

例えば韓国ではサムスンとLG、オランダはフィリップス、ドイツはシーメンス、アメリカはGEなど、競争力が高い企業が多い。

一方で日本は電化製品一つでも、東芝、パナソニック、シャープ、日立、三菱など、競合がひしめきあい必然的に価格競争の結果利益率が海外メーカーに比べ圧倒的に低くなってしまう。

日本企業の技術レベルは世界でトップクラスで、1990年代前半に世界市場を席巻したが、今では欧米、韓国企業の技術レベルは日本とそん色はない。

あるいはそれ以上の技術レベルを持っている。

基本的には1国1業界1社に集中することによって国際競争力を強めているが、3Dプリント技術の導入は更なる製造業の産業構造を変革し、更なる競争力を強めることになるだろう。

シーメンスやGEの3Dプリンター導入の目的もそこにある。3Dプリント技術を導入することで圧倒的なコスト削減と品質向上、リードタイムの短縮による新たな新製品開発への投資というものづくりにおける好循環を引き起こすことは間違いない。

過去20年にわたり欧米企業や韓国企業にグローバル市場で後れをとる今、日本も3Dプリント技術をはじめとした、新技術を導入し、デジタル化とグローバル化が主流となる次世代型の製造構造に対応する必要があるのではないだろうか。

そうした点からも欧米企業の新技術導入の事例は常に注目する必要がある。

航空機パーツの3Dプリント製造の記事はこちら

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