車体の軽量化は燃費を向上させる
3Dプリンターで製造することのメリットはコスト削減だけではなく、パーツの耐久性の向上や軽量化が実現できることにある。
特に乗り物にとっての重量は燃費に直接影響してくる部分で、自動車産業や航空機産業の製造現場において、3Dプリンターが取り入れられている要因の一つは軽量化だ。
特に自動車は車体重量と燃費は比例関係にあると言われており、近年の環境貢献に対する配慮と相まって、車体軽量化をいかに達成させるかという点が一つの開発ポイントになっている。
下記の図は国土交通省が調べた燃費と車両重量の相関関係を示した統計図だ。
マニュアル、オートマ、ハイブリッド、CVT車すべての車種の重量と燃費を分布した統計データで、重量が軽くなればなるほど燃費が向上することがわかる。
また、消費者にとってはガソリン代は日々の生活に直結する部分でもあり、燃費向上によってガソリン代を少しでも減らすことができればとてもありがたい部分だ。
車体の軽量化が一つの焦点となる中、自動車業界において3Dプリンターを使う様々な取り組みが行われている。本日は3Dプリンターを使うことでどの程度軽量化できるのかを示す格好の導入事例をご紹介。
重さたった13kgのレーサー車両
今回ご紹介するのはドイツの応用科学芸術大学HAWKが製作した超軽量車両「Rapid Racer」だ。
驚くべきことに「Rapid Racer」の車体を構成するほぼすべてのパーツ類が3Dプリント技術により作られている点にある。製作にあたっては3Dプリントメーカーのストラタシスの助力を得て行ったとのことだ。
製作期間は10日間にわたり、各パーツ類はABSを3600層まで重ねて3Dプリントされている。
3Dプリントされたパーツはコードレススクリュードライバー、ギアホイール、ホイール、チェーン、ネジといった、「Rapid Racer」を構成するタイヤ以外のほぼすべてのパーツで、完全に3Dプリンターによって作られているといっても過言ではない。
結果として3Dプリントされたパーツの総重量は18.2ポンド約8.2kgで、「Rapid Racer」の車体総重量は29.5ポンド約13.3kgと、超軽量車両を達成することが可能になった。
ちなみに3Dプリントするためのデータの総容量は44メガバイトとのこと。
「Rapid Racer」横
「Rapid Racer」正面
まとめ
「Rapid Racer」の取組は、3Dプリント技術を使ったパーツ製造のメリットを示す実験的な意味を持っている。
既に自動車産業や航空機産業では3Dプリンターでパーツ製造を行う取組がなされている。
フォードは3Dプリント技術に25年前から取り組んでおり、エンジンカバーやインテークマニホールドなど多くのパーツ類で3Dプリントによる試作品製造を行っている。
また航空機分野ではGEやロールスロイスはジェットエンジンのパーツ類を3Dプリンターで量産する方向で動いている。
「Rapid Racer」のようにすべてのパーツ類が3Dプリンターで製造されることはないだろうが、主要な部品や、3Dプリント製造に切り替えるとによって性能が大幅に向上するパーツは今後どんどん従来の製造方法から3Dプリンターを使った製造に切り替えられていくだろう。
「Rapid Racer」はそうした製造業における3Dプリント技術のメリットを最大限表現した実験であり、3Dプリンターを使うことで、どのように最終製品の品質が向上するのかを示した事例だと言える。
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