ポリカーボネート(PC)の特性と用途 iPhoneから工業用ネジまで

By | 2014年10月21日
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ポリカーボネート(PC)の用途 耐衝撃性と加工性の高さ

ポリカーボネート、モノづくりやデザインの現場では略してポリカ、PCなどと言われているプラスチック素材。その最大の特長はプラスチック素材の中で最高度の耐衝撃性を持つことだ。

例えば、ポリカーボネートの耐衝撃性は、ABS樹脂の5倍、塩化ビニール樹脂の10倍、ポリエチレンやアクリル樹脂の50倍にも達するほどの強さを持つ。ハンマーなどで強打しても割れないぐらいの耐衝撃性を持っているのだ。

さらにポリカーボネートは耐衝撃性以外にも耐候性や耐熱性にも優れた性質を持ち、高い透明度を持っている。こうした高い物性が注目され、ポリカーボネートは一般の工業製品から、軍事目的と幅広く使用されている素材だ。

また、高い物性を持つのと同時に、加工に優れているのもポリカーボネートが重宝される理由の一つ。伸縮性があり、多くのプラスチック成形に適した素材でもある。

こうした物性と使い勝手の良さから、その使用範囲は非常に多岐にわたっている。ここではポリカーボネートの物性を活かした、さまざまな使用実績をご紹介しよう。まずはじめにポリカーボネートは、加工性の高さと耐久性の良さ、優れた透明性から、家電製品や日用品など、エンドユーザー向け製品に多く使用されている。

どれだけ使っても壊れにくい強度と、ユーザーを魅了する高いデザイン性を再現することが可能だからだ。のちほど加工の部分で詳しく述べるが、日本でも大人気の代表的なスマートフォンiPhoneのボディなどにも使用されている。

また、ポリカーボネートはこうしたデザイン性が求められる家電製品以外にもいろいろな製品で使用されている。例えばカメラのボディや、双眼鏡などのボディもポリカーボネートが使われるケースが多い。カメラや双眼鏡は野外での使用が多いことから、落としても壊れない強い耐衝撃性と、頻繁に外気にさらされても耐えうる高い耐候性が求められる。

こうした野外での使用には、耐衝撃性と耐候性を持つポリカーボネートは最適というわけだ。また、こうした特性は、戦闘機などのキャノピーや、自動車などのライトカバー、オートバイのヘルメットなどにも適応性がある。

こうした使用例はポリカーボネートの一部に過ぎない。他にも食器に使用されたり、筆記用具や文房具、メガネやサングラス、ゴーグルなど、透明性を活かした多くの製品の材料として使用されている。

このようにポリカーボネートは、その優れた物性(耐衝撃性と透明性、加工の良さ)から、デザイン性が求められるエンドユーザー向け製品に始まり、野外での使用を想定した機能性の製品まで、さまざまな製品のプラスチック素材として重宝されている。

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ポリカーボネートの歴史

ポリカーボネートの開発はアクリル樹脂が開発されてから25年後の1958年に行われた。もともとドイツの100年以上つづく化学工業製品メーカー、バイエル社が開発したプラスチック素材で、日本での生産は1960年ごろから開始されている。

バイエル社は1863年創業の化学工業と製薬会社を兼ねる企業で、解熱鎮痛薬で有名なアスピリンを製品化した企業としても有名だ。日本にも丸の内オアゾに居を構えている。

このポリカーボネートは当初は高い耐衝撃性や透明性を活かして野外での窓ガラスなどに使用が開始されたが、すぐにその優れた特性は知れ渡り、2年後の1962年にはポリカーボネート性の哺乳瓶が登場した。その後もさまざまな製品開発に利用が開始され、今では年間31万トン(2012年度)も生産されているほどだ。

(※最近ではポリカーボネートの原材料であるビスフェノールAが健康に悪影響があるという指摘があることから、哺乳瓶の素材としては使用されなくなっているのが現状のよう)

ポリカーボネートの特性 長所と短所

ポリカーボネートは、上記で述べたように群を抜いた耐衝撃性を持つと同時に、耐候性や耐熱性にも優れた素材だ。また同時に高い透明性をもつことから、アクリル樹脂と同じ有機ガラスに分類されている。

アクリル樹脂は耐衝撃性がガラスの10倍から16倍であったが、ポリカーボネートの耐衝撃性はアクリル樹脂の約50倍。ハンマーで思いっきりぶったたいても壊れることがないほどで、プラスチック素材の中では圧倒的と言ってもいい耐衝撃性を誇る。また、透明性はアクリル樹脂にはやや劣るもののガラスに等しい光透過率を誇る。

アクリル樹脂は光を通す透過率がガラス以上の93%にも達するが、ポリカーボネートの光の透過率は85%から90%でほぼガラスと同等。こうした点からポリカーボネートもカメラのレンズなどの光学機器に使用される場合もある。また耐熱性や耐候性に優れ、環境変化がはなはだしい野外での使用にも最適だ。

こうしたことから、航空機のキャノピーなどにはアクリル樹脂と同様に使用できる。また、防弾用などのシールドとしても使用がされている。さらに耐熱性では高温でも低温でもどちらにも耐久力があり、電子レンジから冷蔵庫まで使用できる。こうした優れた耐熱性と透明性は食品用に使用される最大の理由だ。

この優れた機械的特性は、工具としての機能も果たせるほど。金属ではないプラスチック製のネジの材料としても馴染みの素材だ。その反面、薬品耐久性は悪く、アルカリ剤などで劣化してしまう。下記はポリカーボネートの長所と短所を列記したものだ。

ポリカーボネートの長所

  • 耐衝撃性:プラスチック素材の中で最高の耐衝撃性を誇る。その強さは防弾材料に使用されるほど。
  • 透明性:ガラスに等しい透明性を誇る。光の透過率は85%から90%ほど。
  • 耐熱性:優れた耐熱性を持ち幅広い温度環境下での使用に耐えうる。冷蔵庫や電子レンジなど食品用の容器としては最適な耐熱性を持っている。
  • 耐候性:難燃性に優れ、建築材や電気電子分野での使用も盛ん。野外での使用にも耐えうる。
  • 寸法精度:プラスチックの持つ成形収縮率が小さく、加工性が高い。ほとんどの成形方法に対応しており、寸法安定性にも優れている。また精密な成形も可能。
  • 軽量:ポリカーボネートはそのほかのプラスチック素材に比べて比較的軽いという特性を持つ。まさに軽くて丈夫なプラスチック素材だ。

ポリカーボネートの短所

  • 耐薬品性:耐薬品性に弱い。アルカリ剤、溶剤で劣化する。
  • 高温高湿の環境には弱い。

ポリカーボネートの製法

ポリカーボネートは炭素と酸素と塩素の化合物であるホスゲンという分子と、ビスフェノールAという分子から構成されるプラスチック素材である。基本的な原料はこの2種類の分子から作られることになるが、製法は3種類で異なっており、作り方によって分子の密度などが異なる。また、ポリカーボネートにガラス繊維やABS樹脂など、その他の分子を配合することでより優れたプラスチック素材を作りだすこともできる。

ポリカーボネートの加工 射出成形とiPhone5Cの美しい仕上がり

ポリカーボネートの最大の特性の一つは、加工性の高さだと言える。プラスチックの基本的な成形方法である、射出成形や押出成形、真空成形やブロー成形など、ほとんどの成形方法に対応している。

また、最近では3Dプリンターの製法で代表的な、樹脂を溶かして積層する熱溶解積層法(FDM)の材料としても使用が開始されている。このようにポリカーボネートはさまざまな加工方法に柔軟に対応しているが、ここでは代表的製品と成形方法をもとにポリカーボネートの特長をご紹介しよう。

ポリカーボネートの素材としての特長(耐衝撃性の高さと美しい光沢)を活かした代表的製品では、スマートフォンで代表的なiPhone5Cがあげられる。

現在はiPhone6が登場しているため、販売は中止されているが、パステルカラー調の5色展開で話題を集め、これまでホワイトとブラックの2種類であったiPhoneの世界に新たなカラーバリエーションをもたらした。

また、金属成形で作られていたiPhoneにプラスチック成形を取り入れることで、美しさを保ちながら低価格化も果たした事例として高く評価されている。もともとアップルは初代iMac以降、MacBookなど、ボディの素材にポリカーボネートを多用するメーカーとして有名だ。

美しい鏡面のような光沢と、落としても壊れない耐衝撃性といったポリカーボネートの特性を家電製品のモノづくりに生かしている。このiPhone5Cのボディも、継ぎ目の無い一体成形のポリカーボネートが使用されている。それではiPhone5Cの美しい一体成形はどのように作られるのだろうか。

それはプラスチック成形の王様と言える射出成形で作られている。射出成形は金型に高熱で溶かした樹脂を押し込み、冷却してカタチにする成形方法。最大の特長は、量産できるうえに、美しい精密な仕上がりを表現することが可能な点だ。その分、射出成形は金型の設計と製造にかかるコストは高く、プラスチックの温度コントロールにはそれなりの技術が求められる。

だがiPhoneのように一定数の販売量が見込める製品であれば極めて効果的な製法だと言える。

iPhone5Cの場合は、射出成形でポリカーボネートのボディを成形した後、スピーカーや音量などのボタンを取り付ける穴をあけている。この穴あけにはCNCミリング加工が施されるが、ポリカーボネートで成形されたボディはこの穴あけ作業で回りのプラスチックが破損しない強度を保っている。

まさにボディの美しい仕上がりを完成させるためには最適な強度特性を備えていると言えるだろう。このようにポリカーボネートはデザイン性を再現するだけの強度と柔軟性を持つ優れた素材で、エンドユーザー向け製品の製造には最適なプラスチック素材言える。

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3Dプリンターとポリカーボネート ストラタシスの高性能マシーン

高い物性とさまざまな加工に対応したポリカーボネート。この最強のプラスチック素材も3Dプリンターでの使用が開始されている。開始されていると言っても3Dプリンターの材料は圧倒的にABS樹脂とPLA樹脂が多く、まだその普及はわずかしかなされていない。

基本的なプラスチックの3Dプリントは、樹脂を溶かして積み上げて成形するFDM熱溶解積層法になるが、この製法の特許を持つストラタシス社の高性能3Dプリンターでポリカーボネートは使用可能だ。

より厳密な言い方をすればストラタシス社のFortus 360mc、 400mc、900mc、3つの3Dプリンターで使うことができる。このFortusシリーズはそれぞれグレードに差があるが、簡単にまとめると精密で高精細なパーツを1個単位でつくることができる高性能な3Dプリンターだ。

これまでポリカーボネートはあくまでも金型を使用した量産加工でしか使用できない素材であったが、このストラタシスの発明により、ポリカーボネートの優れた物性を1個単位から生産できる。

これまでも述べてきたように、ポリカーボネートは優れた物性と、透明性、光沢感などから、極めて汎用性が高いプラスチック素材だ。とりわけデザイン性を再現するための素材としてうってつけの特性を持っている。そのポリカーボネートが金型で高額な費用をかけることなく3Dプリンターで使用することができれば、より多くの製品開発に結び付けることが可能だ。

まさにストラタシスのポリカーボネートのFDMは、モノづくりに関わる人々に多くの可能性を与えてくれるものだと言える。

まとめ 機能性とデザイン性の両立ができる素材

ポリカーボネートはエンドユーザー向けのさまざまな製品に最も多用される素材の一つと言っていいだろう。これまで述べてきたように非常に多くの製品に使用されてきている。改めてポリカーボネートの特性をまとめてみると、優れた耐久性と同時に、炭素繊維ほどではないにしろ比較的軽いという物性をもつ。

また、ガラス並みの透明性と光沢をもち、加工も容易だ。使われる製品にもよるが、まさに機能性とデザイン性を両立するのに最適なプラスチック素材だと言えよう。上記でも述べたがこの高性能な素材はストラタシス社の3Dプリンターでも使用が開始されている。今後さまざまな製品開発にとって試作することができるプラスチック素材にもなってきており、ますます使用範囲が拡大することが期待される。

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