PLA樹脂(ポリ乳酸)の特性と用途 加工と新素材の開発

By | 2014年10月7日
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PLA樹脂(ポリ乳酸)の用途

PLA樹脂は、およそ20年近く前に開発された植物由来のプラスチック素材だ。プラスチック材料の中では比較的新しい種類に分類されるだろう。もともとプラスチックは石油により生成されることから石油化学製品とも言われている。

しかしその一方で、地球温暖化や石油資源枯渇という近年の環境意識の高まりがあり、その時代の流れから石油由来に変わる存在として作られたのがPLA樹脂(ポリ乳酸)だ。

PLA樹脂はPoly-Lactic Acidポリ乳酸の頭文字をとった略で、トウモロコシやジャガイモなどに含まれるデンプンなどの植物由来のプラスチック素材だ。もともとは、工業用のプラスチック素材として幅広く使用されているABS樹脂の変わりとなる目的で開発された。

その内容は乳酸を重合することによってできた高分子で、簡単に言い換えると乳酸から作られたポリエステル素材と言える。このPLA樹脂だが、上記のようにABS樹脂などの石油由来の樹脂の代替プラスチックとして使用されることが期待されているが、ABS樹脂と比べ耐久性や耐熱性が弱く、同等の性能を出すためにはその成形方法なども相応の工夫が必要な素材だ。

とはいえ生成過程において、カーボンニュートラルという特性(二酸化炭素を排出しない)が注目され徐々に上記のような課題を克服したPLA樹脂が登場したり、その製法も改良されつつある。

このようにPLA樹脂(ポリ乳酸)は植物由来という特性や、廃棄後の処理によって二酸化炭素や水などに分解できることから、多くの製品に使用が開始されている。代表的な使用例でいえば食品と接することが許される食品用トレイや、農業用フィルム、またABS樹脂と同じ性能まで強化させることで、家電製品のパーツ類や、自動車用パーツにも使用が開始されている。

今では携帯電話やパソコンの外装もPLA樹脂で作ることも可能だ。さらには3Dプリンターの材料としても使用が開始されており、他の分子と混合させることによって全く異なる性質を持たせたPLA樹脂が登場してきている。

このようにPLA樹脂は新たな時代のプラスチック素材として多くの可能性を秘めている素材だ。本日はPLA樹脂の特徴と今後の開発状況についてご紹介。

いろいろな用途で使用が拡大するPLA樹脂

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PLA樹脂(ポリ乳酸)の特性 分解性と家電製品への利用

PLA樹脂は上記で述べた通り、植物由来の乳酸から生成されているプラスチック素材だ。石油由来とは異なり、生成中に二酸化炭素の排出量が少ないことや、土に埋めて分解することができることからも環境にやさしい素材として注目されてきた。

ちなみに土中における分解だが、どんな土に埋めても分解されるわけではない。堆肥などの微生物が存在する場所であれば埋めて分解することができる。通常堆肥に埋めた場合、約1週間ほどで分解され、二酸化炭素と水のレベルまで分解されることになる。

このような分解機能がある性質のプラスチックは生分解性プラスチックと言われ、PLA樹脂(ポリ乳酸)はその中において最も進んだ分野と言える。

このような成分分解機能からPLA樹脂(ポリ乳酸)は農業用シートやハウス用フィルムとして使用が盛んだ。また使用サイクルが頻繁な食品トレイや、包装用フィルム、レジ袋などでの使用も行われている。しかし通常の結晶化しないPLA樹脂は、従来の石油系樹脂であるABS樹脂に比べて性能が劣り、使用範囲が限定されるという側面がある。

例えば粘りや柔軟性においてPLA樹脂はABS樹脂に比べて弱く、耐衝撃性も弱い。また耐熱性も低く、金型を使った射出成形などの使用においても、ABS樹脂とはことなる注意点が必要だ。

このようにPLA樹脂はある意味比較的新しい素材であることからその使用範囲や可能性はまだまだこれからで、その使用が広がるのはまさにこれからともいえるだろう。

PLA樹脂(ポリ乳酸)の製法 デンプンから生成

それではPLA樹脂はどのように作られるのだろうか。植物由来と言っても今一つ想像がつかないが、PLA樹脂はデンプンから抽出される乳酸が原料になっている。デンプンは良く知られているようにジャガイモやトウモロコシなどから取られる成分だが、簡単に言うとデンプンに含まれる乳酸を抽出生成を繰り返すことで、プラスチックが作られると言っていい。

デンプンから抽出した乳酸をさらに加熱脱水、重合すると低分子のポリ乳酸を得ることができる。このポリ乳酸の分子レベルではプラスチックとして結合するには不十分であり、このポリ乳酸をさらに加熱分解することでラクチドが得られる。このラクチドを結合させることでPLA樹脂として使用できるようになるのだ。

PLA樹脂(ポリ乳酸)の加工 射出成形のむずかしさ

PLA樹脂はその環境性の高さから、食品用トレイや、農業用以外に、家電製品の筐体(カバーや外装)として使用が開始されているが、ABS樹脂と異なる特性を持っている中、どのように加工され、その代替品として機能を発揮するのだろうか。

ここでは家電製品の外装やパーツなどの製造で最も多用される射出成形を例に挙げご紹介しよう。射出成形は樹脂を溶かして金型に注入し、冷やして固める製法だが、金型内の温度がプラスチックの分子に影響を与えることから、素材によって細かく温度を調整しコントロールする必要がある。

とりわけ家電製品の外装に必要なのは、強い強度と耐熱性だが、ABS樹脂とは物性の異なるPLA樹脂で同等に近い性能を出すためには、より緻密な金型コントロールが必要になる。冒頭でも述べたがPLA樹脂はABS樹脂に比べ、耐熱性や耐久性、強度の分野で弱いのが指摘されている。

しかし、PLA樹脂は、高温で結晶化させることによって、通常のPLA樹脂よりさらに強い強度と耐熱性を与えることが可能になるのだ。ちなみにプラスチックはPLA樹脂に限らず通常非結晶状態だが、結晶化させることで強い剛性や耐熱性を付与することができる。

PLA樹脂はこの結晶化によって、家電製品の外装にふさわしい強度と耐熱性を得ることが可能になる。PLA樹脂が結晶化するには110℃±10℃と高温の状態が必要で、なおかつ結晶化が終わるまで長時間かかる。そのため射出成形金型を使ってPLA樹脂を結晶化するには緻密な温度コントロールが必要になる。

それは金型温度を単純にPLA樹脂の結晶化する温度にすればいいというわけではなく、樹脂そのものが結晶化温度に達するようにコントロールしなければならない。そこには金型温度を操作する技と経験が必要だ。このようにPLA樹脂はその環境特性が優れているとはいえ、成形に高度な技術を要する難しい素材なのだ。

しかし最近では金型に熱移動シミュレーターを設置する開発や、PLA樹脂そのものに結晶化促進剤を混ぜた新たなPLA樹脂の開発が進みつつあり、従来ほど手間暇をかけずにABS樹脂と同等のクオリティや加工のしやすさを再現することが可能になりつつある。

3Dプリンターの材料としてのPLAフィラメント

これまで述べてきたようにPLA樹脂(ポリ乳酸)はプラスチック素材として比較的新しい素材だと言える。また、その使用条件や使用方法もかなり高度な技術が必要なため、取扱が難しいということがあげられるだろう。

その一方で、用途に応じた新たなPLA樹脂の開発もこれから広がっていく可能性がある。とりわけPLA樹脂の新開発では3Dプリンターの材料としてその利用可能性が期待されている。

3Dプリンターの材料は主にPLA樹脂とABS樹脂が主流を占めるが、今PLA樹脂に様々な異素材を融合させる新たな樹脂の開発が行われている。ここでは3Dプリント材料になった場合のPLA樹脂とABS樹脂の特性、違いと、新たに登場しつつある変わったPLA樹脂をご紹介しよう。

PLA樹脂とABS樹脂の違い

3Dプリンター用の材料となった場合でもPLA樹脂とABS樹脂の基本的特性は上記に挙げた通りである。ABS樹脂は粘りがあり、耐久性、耐衝撃性、耐熱性が高い。また造形後の加工も容易であり、塗装ややすりなどの後加工も簡単にすることができる。

その一方でPLA樹脂はABS樹脂のような粘りは無く硬い。そのため表面の塗装ややすりなどの後加工に不向き。また耐熱性が低く高温に弱いという特性がある。

射出成形の部分で述べたが、PLA樹脂は金型を使った射出成形では、高温の結晶化により家電製品の外装などにも使用できる耐久性や耐熱性を備えることが可能だが、現状の3Dプリンターでその性能を付与する方法はない。そうした反面、PLA樹脂の弱点を補うために、さまざまな素材を混ぜ合わせ独自の特長を持つPLA樹脂のフィラメントが登場している。

PLA樹脂をベースにした特殊フィラメント

3Dプリンターの材料としてのPLA樹脂はABS樹脂にくらべ熱に弱い点や、後加工がしにくいという点などもあり、小さい物体を成形する場合にはABS樹脂の方が多用されるのが一般的だ。

また、それぞれの溶解温度が異なることから、現在のFDMタイプの3Dプリンターではあまり併用されないのが一般的である。その一方でこうしたPLA樹脂フィラメントの課題を克服し、そして3Dプリンターの使用の幅を広げてくれるような開発が行われている。

それはPLA樹脂をベースにし、異なる素材を粉末状で混ぜ合わせることで、全く異なる質感を3Dプリントフィラメントで再現することができる開発だ。例えば、代表的な開発例を挙げると、PLA樹脂に木材粉末を混ぜ合わせることで木の質感を再現できるフィラメントや、同じく銅粉を混ぜ合わせることでブロンズの質感を表現できるフィラメントが登場している。

こうした特殊フィラメントはPLA樹脂の性能を強固にするだけではなく、3Dプリンターの使用範囲を拡大する開発と注目を浴びている。代表的なメーカーでいうとオランダのフィラメントメーカーColorFabbが有名で、木目調のwoodFill、竹の質感のbambooFill、銅の質感のCopperFill、青銅の質感のBronzeFillなどがあげられる。

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まとめ PLA樹脂の今後

PLA樹脂(ポリ乳酸)はまさにこれから使用用途や開発が進む新素材だと言えよう。それは金型を使った量産でも、1個単位のオンデマンド対応ができるFDM 3Dプリンターでも同じことがいえる。

射出成形の部分でも述べたが、ABS樹脂と同等の精度を出すPLA樹脂が登場し、金型内の温度コントロールや結晶化も従来より容易になりつつある。

また3Dプリンターの材料ではPLA樹脂をベースにした開発が3Dプリンターの使用範囲を拡大することにつながっている。今後先進国の間では環境意識の高まりや、脱石油資源の価値観が高まりつつあり、PLA樹脂はそのような流れにも最適なプラスチック素材と言えよう。

中には3Dプリント用のフィラメントをプラスチックの廃材をリサイクルすることで生成しようという動きも出てきている。PLA樹脂は今後、プラスチック素材の中でもどんどん使用範囲が拡大しそうだ。

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