完全植物由来でABSに匹敵。PLAフィラメント製剤登場

By | 2016年3月30日
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続々と3Dプリントフィラメント開発が進むPLA樹脂

セルロイドからはじまり、フェノール樹脂(ベークライト)の開発から発展が進むプラスチック。今では、さまざまな機能や特性を持つプラスチック素材が開発され、身の回りのあらゆる製品に使用されている。とりわけ加熱すると柔らかくなり、冷却すると硬化する熱可塑性プラスチックは、加工のしやすさと、優れた特性から現代のものづくりの主力材料といってもいい。

このプラスチックで最も多用されるものの一つがABS樹脂で、優れた耐熱性や耐衝撃性、加工性の高さ、美しい仕上がりなどから、さまざまな製品に使われる。しかし、近年二酸化炭素排出や環境貢献の意識の高まりから、ABS樹脂の代替材料として開発されたPLA樹脂も注目を集めている。

PLA樹脂は植物由来で作られたプラスチック素材で、ABSに匹敵する性能を実現することを目指し開発された。 とりわけ金型加工では、温度管理が難しいが、ABS樹脂と同様のクオリティを実現することも可能になっている状況だ。このPLA樹脂だが、FDM 3Dプリンターの分野でもABS樹脂とともに主力材料フィラメントの一つとして数えられている。

しかし、金型加工とは違い、FDM 3Dプリンターのフィラメントとしてはその実用性はABS樹脂にはるかに劣る。 まず耐熱温度が低いことや、耐衝撃性なども低いことから、ABS樹脂の代替品としての役割は果たされていない。

今このPLA樹脂を使った3Dプリントフィラメントの開発が続々と進んでいる。これまで、PLA樹脂に他の素材を配合した高性能フィラメントをご紹介してきたが、新たに、完全にABS樹脂の代替品となる植物由来のフィラメント製剤が登場した。

PLA樹脂 3Dプリントフィラメント ABSに匹敵

目指すはABSフィラメントに匹敵する完全植物由来のPLAフィラメント

今回の新たな3DプリントPLAフィラメント製剤を開発したのはネイチャーワークスである。ネイチャーワークスは、100%再生可能なプラスチック開発を目的として設立された会社で、Ingeo(インジオ)というPLA樹脂(ポリ乳酸)製剤を開発製造している。今回のPLA樹脂も、このIngeo(インジオ)3D860という3Dプリントフィラメント用製剤である。

この製剤によって作り出されるPLAフィラメントは、一言で言うと、ABS樹脂フィラメントに、性能、コスト両方の面から代替品になりうるものだ。冒頭でもご紹介したように現在のPLAフィラメントはABSフィラメントに比べて、耐熱性、耐衝撃性の面ではるかに劣るということが挙げられるが、このIngeo(インジオ)3D860で作られたPLAフィラメントは、こうした性能面でもABSに匹敵するように設計されている。

また、原料が植物に含まれるブドウ糖や、砂糖をベースに作られており、ABSフィラメントの加工時に発生する独特の臭気や、二酸化炭素排出量も飛躍的に抑えることが可能な製剤。ネイチャーワークスは、1989年の創業以来、環境にやさしいプラスチックの開発に着手してきたが、3Dプリント用のフィラメント材料の開発は比較的最近で、このIngeo(インジオ)360の前進となるIngeo(インジオ)850から行われている。

ちなみに、ネイチャーワークスは製剤メーカーで、Ingeo(インジオ)は、フィラメント用の材料として、フィラメントメーカーに供給され、PLAフィラメントとなる。今回開発されたIngeo(インジオ)3D860は新型だが、この前身となる3D850は、既にフィラメントメーカーである、3DOM、KINGFA、PLASTRUDE、TLC Koreaなどに供給され製品化されている。

PLA樹脂 3Dプリントフィラメント ABSに匹敵

Ingeo(インジオ)で製品化された3DOMのPLAフィラメント

Ingeo(インジオ)PLAフィラメントの特性

  • 印刷温度:190℃~230℃(ABSは230℃~250℃)
  • 臭気や蒸気:非常に低い排出量
  • 溶融性能:良好な融着性
  • 熱収縮:優れた低収縮性を発揮
PLA樹脂 3Dプリントフィラメント ABSに匹敵

二酸化炭素排出量を大幅に削減。低臭気で臭わない。 ※画像出処;ネイチャーワークス

アニール処理で耐熱性・耐衝撃性ともにABSに匹敵する性能

ネイチャーワークスによると、ABS樹脂と同等の性能を発揮させるためには、100℃から115℃の温度で10分から15分のアニール処理を施す必要があるとのこと。下記はアニール処理を施した場合のグラフだが、アニール処理を施した場合は、耐熱性、耐衝撃性ともにABS樹脂に匹敵する性能を発揮している。

ただし、アニール処理が行われない場合は、ABS樹脂の性能よりも劣るということが示されている。ちなみに、アニール処理とは、電気炉や熱風乾燥機によってプラスチックの成形品を一定時間加熱することで、歪みを防止する処理のこと。主に加工後の形状変化やクラック(割れ)を防止するために施す処理で、精密なプラスチックパーツの後処理や塗装や接着に入る前に行われる。

PLA樹脂 3Dプリントフィラメント ABSに匹敵

アニール処理でABSフィラメントに匹敵する性能を発揮

まとめ 機能工業用部品や完成品レベルの性能を目指す

このIngeo(インジオ)PLAフィラメントは、単純な3Dプリント単体のみでは、ABS樹脂よりも耐熱性や耐衝撃性は劣るが、アニール処理を施すということで、匹敵する性能を実現している。ただ、現状のアニール処理を行わない状態においても、耐衝撃性においては既存のPLAフィラメントの性能をはるかに凌駕しており、PLAフィラメントの開発も長足の進歩を遂げつつあるといえよう。

ネイチャーワークスは今後もPLAフィラメント用の製剤開発を続け、この性能アップを皮切りに、機能工業用部品や完成品を作成することができるレベルのPLAフィラメントの開発を行うとのことだ。ちなみに現在FDM(熱溶解積層法)のフィラメント開発は続々と行われており、PLA樹脂をベースにしたフィラメントもさまざまな素材と混合したハイブリッドフィラメントが登場しつつある。

FDM 3Dプリンターは、特許失効以来、安価なデスクトップモデルの開発が進んでいるが、同時にフィラメント素材の開発もよりものづくりや試作開発の幅を拡大することに繋がっている。今後も新型フィラメントの開発と素材の多角化は、未来のものづくりにとって重要なファクターだといえよう。

PLAフィラメントの開発についてはこちらの記事もどうぞ

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