進む顧客のカスタマイズの要求
経済的な豊かさとインターネット技術の浸透によって、モノが有り余り、消費者はどこにいても自分の好みの製品をどこまでも突き詰めて探すようになっている。
そのため、最近の風潮としていろいろなメーカーが顧客に対してカスタマイズするサービスを提供し始める傾向が数年前から出てきている。
NIKEやアディダスの自分だけのカスタマイズできる靴やBMWminiなど、人はいろいろなモノに自分だけのオリジナリティを求め、メーカーも可能な限り一般消費者の細かい要望に応える時代になりつつある。
こうした時代背景を見てみても、3Dプリント技術の最大の特長であるカスタマイズ性とオンデマンド生産は非常に大きな影響をもたらすだろう。
3Dプリントの精度が精密になり、利用できる素材も多角化してきている中、表現方法や対象のプロダクトも増えてきている。
3Dプリント技術を利用してカスタマイズ製品を提供するほぼすべての企業がインターネット上のホームページでそうしたサービスを提供しているが、本日はネット上ではなく、小売店の店舗内に3Dプリントに対応したカスタマイズサービスを提供できる仕組みをご紹介。
このサービスと仕組みを提供する企業は3Dプリンターメーカーの企業が集まるピッツバーグに本拠地を構えるPieceMaker Technologiesというベンチャー企業。主に小売店舗内におもちゃを対象に3Dプリントできるディスプレイを設置運営するというビジネスだ。
小売店舗で3Dプリントカスタマイズ製品の購入が可能
このPieceMaker Technologiesが提供するディスプレイはいわば小売店舗内に3Dプリントできるディスプレイ店舗を設置するというもの。
店舗に来店したお客さんが、ディスプレイ上で、購入したいおもちゃのモデル、色、形状、素材等を選択し、プリントボタンを押す。
選択された玩具は20分で仕上がるため、お客さんが買い物をしている間にほぼ仕上がる仕組みだ。
通常の3Dプリントサービスではお客さんがあらかじめ3Dデータを持参するか、メールで送り3Dプリントしてもらうという方法だが、このPieceMaker Technologiesが提供する仕組みはディスプレイ上で任意のデザインを選択しプリントするため、データの持ち込み等はできない。
このサービスにより、小売店は顧客のために低コストのカスタマイズ可能な製品を提供することが可能になる。
PieceMaker Technologiesが提供するディスプレイの試作機
3Dプリントサービスに乗り出す小売店
欧米やロシア、中央アジアなどでは、スーパーマーケットでもなく、デパートでもないハイパーマーケット呼ばれる超巨大複合施設が存在する。
日本でいうと最近幕張にできたイオンモールなどがほぼ相当するが、単なるスーパーとしての機能以外にあらゆるデモンストレーションを行うなど付加価値を多様化させ提供している。
このように小売チェーンはこうした多様化する顧客の嗜好に合わせるために顧客利便性とサービスの多様化に力を入れ始めているケースが多い。
その一環として小売りチェーンが3Dプリントサービスを導入する動きが徐々に見え始めている。
以前もご紹介させていただいたが世界最大の小売りチェーンウォルマートが3Dプリントサービスの導入を検討したり、既に子会社の小売りチェーンで3Dスキャニングサービスを試験的に導入し始めたりしている。
そのためPieceMaker Technologiesが提供するおもちゃの3Dプリントカスタマイズディスプレイは浸透する可能性を秘めている。
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まとめ
PieceMaker Technologiesが提供するおもちゃの3Dプリントディスプレイはおもちゃで開始されるとのことだが、将来的におもちゃ以外の製品でもサービスが提供されるようになるのではないだろうか。
まずおもちゃで開始されることの理由として、自分だけのモノが欲しい子供をターゲットにした方が興味を引きやすい点や、簡易的な3Dプリントではおもちゃが最適なのかもしれない。
また、現状の3Dプリント技術ではそこまで精度の高い製品をプリントすることができないことが言える。
昨年末から今年に入り、高性能で表現性に富んだ3Dプリンターが登場し始めているが、市場に投入されるのはまだ先だ。
また簡単で小さいプロダクトではないとプリントに多くの時間を費やすことになりサービスとして成り立ちにくいという点があげられるだろう。
しかし、3Dプリンターの精度や造形スピードは年々飛躍的に向上しているため、将来的に小売店舗で、より幅広い製品のカスタマイズ製造ができることになるのではないだろうか。
オンライン上ではなくリアル店舗で顧客が触れられるサービスを展開するというPieceMaker Technologiesの取組は先見の明がある。
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