光造形3Dプリンター(SLA、DLP)の原理と仕組み

By | 2017年3月9日
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光造形とは

3Dプリンターの代表的な製法の一つでもある光造形。光造形は、ステレオリソグラフィー(Stereolithography、略称SLA、SLなど)とも言われ、もっとも古い3Dプリンターの製法の一つでもある。

開発したのは大手3Dプリンターメーカー3Dsystemsの創業者兼最高技術責任者のチャック・ハル氏で、1986年に特許が取得された。この光造形は、最初の商業用ラピッドプロトタイピング技術として知られ、積層造形の代表的な製法でもある。

この光造形の仕組みを一言でご説明すると、液体状の樹脂素材に光を照射することで硬化し、物体にする技術である。

現在、3Dプリント技術と言われるデジタルデータからのダイレクト製造は、様々な種類の製法が登場しているが、この光造形は現在最も広く使用されている3Dプリントの一つであり、独自の進化を遂げている技術でもある。

また、高額なハイエンドタイプの機種から、安価な組み立て式まで多様な種類のマシーンが登場しており、3Dプリンター市場の一角をなす存在でもある。

そこで今回は、この光造形3Dプリンターに関する特長、すなわち原理と仕組みや、長所と短所、代表的な機種までご紹介したいと思う。

光造形3Dプリンターの原理と仕組み

光造形法は、液体樹脂に光(紫外線、UV光)を照射して硬化させる技術である。3Dで設計されたデータに基づき、紫外線レーザービームを液体樹脂のプールに照射し、一層づつ硬化させていく。

硬化は造形ステージと言われるプレート上に一層づつ固められ、一層固まれば、1段造形ステージが上がる(もしくは下がる)ことで次の層の硬化が始まる。この造形ステージは光造形法の積層ピッチである0.05 mm から 0.15 mmづつ移動していく。

紫外線のレーザーはレンズを通してスキャナーに反射され液体樹脂に照射されるが、このスキャナを動かすことで任意の場所に紫外線をあてることが可能。はじめに固められた層の上に新たな硬化が始まるが、下部よりも大きい面積を照射する場合にはサポート材で支える必要がある。

光造形3Dプリンターの種類

光造形3Dプリンターは、紫外線を照射するプロセスによって更に二つの種類に分類することができる。一般的には、光造形というと3Dsystemsのチャック・ハル氏が開発したステレオリソグラフィー(Stereolithography、略称SLA、SLなど)のことを指すが、デジタルライトプロセッシング(DLP)方式といい、プロジェクターによって光を照射するタイプの物も開発されている。

また、このデジタルライトプロセッシング(DLP)を進化させた高速高性能造形が可能なCLIP製法という新技術も開発されている。CLIP製法については後述するため、ここではステレオリソグラフィー(SLA)と、デジタルライトプロセッシング(DLP)方式について簡単にご紹介しよう。

※光造形法の一種ともいえる光硬化性樹脂を使ったインクジェット3Dプリンターについては、「インクジェット3Dプリンターの原理と仕組み」で別途詳しくご紹介いたします。

ステレオリソグラフィー(SLA)

ステレオリソグラフィー(SLA)は、前段の光造形法の原理と仕組みで述べた通り、液体樹脂のブールに紫外線を照射し、造形ステージを下げながら一層づつ硬化して物体にする製法である。造形モデルの一番下の層が硬化したら、その上に次の層を積み上げ立体化していく。

デジタルライトプロセッシング(DLP)

一方、デジタルライトプロセッシング(DLP)は、ステレオリソグラフィー(SLA)と比べて、紫外線を照射するアプローチが異なる。SLAが上から紫外線をレーザービームで照射するのに対し、DLPの場合は、下からプロジェクターによって紫外線を照射し液体樹脂を硬化させる。

そのためDLP方式の場合は造形ステージは積層のたびに上に上がっていき、造形物は吊り下げられながら積層される。ちなみに、プロジェクター技術はその他の分野(映像、医療、セキュリティなど)様々な分野で使用されている技術であることから、比較的汎用性が高く、現在の安価な組み立て式の光造形3DプリンターはほとんどこのDLP方式を採用するものが多い。

このDLPデジタルライトプロセッシング法では、液体樹脂タンクの下から光が照射されるため、必然的に照射部分は平面になり、一層ごとの造形時間が一定になるといった特性を持つ。

連続界面生産方式(CLIP)

DLP方式を利用し、光造形3Dプリンターの新たな境地を開いた製法が、連続界面生産方式、通称CLIP製法と言われる方式だ。この技術はCarbon社が2015年に開発した革新的な技術で、液体樹脂のプール内で紫外線を照射し固める方法をとる。

従来のSLA方式やDLP方式の光造形法は一層づつ、造形プレートを上げ下げして積層するが、このCLIPの場合、液体樹脂内部で硬化させながらプレートをあげるため積層跡が残らないのが特長である。

光硬化性樹脂の硬化を阻害する要素である酸素を、独自技術でコントロールすることで、驚くべき高速性と、金型造形並みのクオリティを実現している。

このCLIP製法、連続液界面生産方式で作り出されるパーツは、金型による射出成型で作り出されたようなクオリティを実現し、一般的な積層造形に見られる積層跡がほぼ無いに等しい。

また、以下のCLIP製法を体現したCarbon M1 3Dプリンターの項でご紹介するが、材料も独自開発された光硬化性樹脂を使用できるため、エンジニアリングレベルの強度や耐久性を実現することに成功している。

CLIP製法とCarbon3Dプリンターについてはこちらをどうぞ。

光造形3Dプリンターの長所と短所

光造形3Dプリンターは、その他の3Dプリント技術と比べて、幾つかの長所を持っている。その代表的な特長が速度と精度である。この二つの基準は造形する物の形状や大きさ、素材などによって異なってくるが、数時間から1日で比較的精度の高い物体を造形できる。

また、表面なども滑らかで複雑な構造が再現できることから、幅広い用途に使用される。射出成型やブロー成型、鋳造などの金型のマスターモデルに始まり、一部治具や最終品の機械パーツでも使用できる。

短所としては、光硬化性樹脂であることから、耐候性が低く、造形後に直射日光に当たると劣化する可能性がある。しかし最近では材料の種類も大幅に拡大してきており、エンジニアリングレベルの材料などが登場してきていることから、用途はさらに拡大するだろう。

光造形3Dプリンターの長所

  • 造形スピードが早い
  • 精度が高い
  • 複雑な造形が可能
  • 表面が滑らか

光造形3Dプリンターの短所

  • 耐候性が低い
  • 直射日光に当たると劣化する
  • 造形後の後処理が必要(サポート除去、未硬化樹脂の洗浄など)

光造形3Dプリンターの材料:紫外線硬化性樹脂の特製と種類

使用される樹脂はエポキシ樹脂アクリル系樹脂をベースにした紫外線硬化性樹脂である。プラスチックは基本的に、加熱すると柔らかくなり、冷却すると固まる性質を持つ熱可塑性樹脂と、もともとは液状で、加熱すると固まる熱硬化性樹脂に二分されるが、紫外線硬化性樹脂は熱硬化性樹脂であるエポキシ樹脂をベースにしていることから、同系統に分類される。

現在では様々なタイプの紫外線硬化性樹脂が開発されており、粘りが強く耐久性が高い樹脂や、耐熱性が強化された樹脂、熱可塑性樹脂であるABS樹脂と似た特製を持つ樹脂、ポリウレタン系の弾力性がある樹脂などが登場してきている。

紫外線硬化性樹脂 弾力性

弾力性があるポリウレタンの紫外線硬化性樹脂 画像提供:Carbon

光造形の歴史:特許出願に隠された開発秘話

SLA、ステレオリソグラフィーは、光造形3Dプリンターのもっとも代表的な製法である。現在世界の3Dプリンターメーカーの二大メーカーの一つである3Dsystemsを立ち上げたチャック・ハル氏が1986年に特許を取得したものだが、実際には1983年にそのアイデアを思いついていたという。

SLAの開発については幾つかのエピソードがあり、チャック・ハル氏が特許申請を行う3週間前に、フランスのエンジニアであり、化学者でもあるアラン・ル・メオーテ氏とそのグループによって特許申請されていたが、フランスのゼネラル・エレクトリック・カンパニー(現アルカテル・Alsthom)およびCILAS(レーザーコンソーシアム)により放棄されたため、チャック・ハル氏の特許として認められている。

ちなみに特許破棄の理由は、「ビジネス視点の欠如」とのことで、のちに、アラン・ル・オメーテ氏はこの特許放棄について、フランスの技術革新のあり方には問題があると考えていると発言したとも言われている。

また同時にステレオリソグラフィー(SLA)の商業的可能性については、”爆発的な可能性”を秘めていると当時のインタビューに答えていたとされ、その栄光の座を3Dsystemsに渡すこととなった。ちなみにアラン・ル・オメーテ氏は、3Dsystemsを立ち上げたチャック・ハル氏に大いなる尊敬を評するとともに、アメリカの能力に賞賛を送っている。

このステレオリソグラフィーの開発のように、ある発明が実際に商用化にいたるかどうかという部分や、ほぼ同時期に同じ発明が違う場所で行われていたということは歴史上まま存在することであり、電話や白熱電球の発明などでも見られる話である。また、光造形法では、日本の小玉秀男氏がもっとも早く開発しており、1980年に特許申請されていた(1986年時点で審査請求期間を徒過)。

光造形3Dプリンターの代表的メーカー

光造形の3Dプリンターは、現在様々な機種とモデルが存在する。高額なハイエンドモデルから、安価なデスクトップモデル、また、進化したCarbon3Dプリンターまでさまざまだ。ここでは代表的なメーカーと機種をご紹介しよう。

3Dsystems

光造形法であるステレオリソグラフィー(SLA)の開発元として名高いのが3Dsystemsの3Dプリンターだ。同社の光造形法の代表的な機種がProJetシリーズとProxシリーズのラインナップに存在する。

3Dsystemsは、光造形法の一種、進化版ともいえるインクジェット方式のもの(紫外線硬化性樹脂をインクジェットのように噴霧し固める技術)も持ち、上記のラインナップはインクジェットタイプの物も含んでいる。基本的に3Dsystemsの光造形法はハイエンドモデルが中心だが、デスクトップのProJet® 1200も存在する。

Formlabs

光造形3Dプリンターのデスクトップモデルとして最も代表的なメーカーがFormlabsだ。クラウドファンディングの最大手キックスターターで資金調達に成功し、乱立するデスクトップタイプの光造形3Dプリンターの中では、最も幅広く知られる機種となった。また、同時にデスクトップタイプの中でもっとも早く登場した機種として、高精細な3Dプリントが特長だ。

このFormlabsは、材料の種類も豊富で、通常の紫外線硬化性樹脂以外にも、ゴムのようなフレキシブルなタイプの紫外線硬化性樹脂や、耐久性、耐衝撃性に優れる素材、またインベスティメント鋳造や歯科モデル専用まで揃えている。

光造形3Dプリンター Formlabs

光造形3Dプリンターのデスクトップモデルとして有名になったFormlabs

光造形3Dプリンター 紫外線硬化性樹脂

高精彩な仕上がりを実現している。  画像提供:Formlabs

光造形3Dプリンター 紫外線硬化性樹脂

エンジニアリングレベルのタフな樹脂も提供している。

Kudo3D Titan2

もう一社、デスクトップタイプで有名な企業がKudo3Dである。Kudo3Dが提供するTitanシリーズ(現在はTitan2)は、Formlabsとは違い、造形タンクの下部から光を照射するDLP方式を採用しており、造形モデルはさかさまに作られる。Titan2は、光造形のデスクトップ3Dプリンターでは、プロレベルの高精細を誇り、45ミクロンの高精細で造形が可能。

光造形 3Dプリンター

高性能のデスクトップ光造形3Dプリンター   画像提供:Titan2kudo 3Dプリンター

光造形3Dプリンター

デスクトップレベルで超高精彩が実現可能。

Kudo3DのTitan2についてはこちらの記事もどうぞ

Autodesk Ember

Autodesk Ember 3Dプリンターは、3Dデザインソフトの最大手、Autodeskが開発したオープンソースの光造形3Dプリンターだ。10ミクロンの積層ピッチを誇り、高解像な造形が可能。こちらのEmberの最大の特長は、Autodeskが提供するスパークプラットフォームといわれる企業間のオープンコミュニティで開発がされるという点にある。

そのため、3Dプリンターそのものの進化や、材料の進化の恩恵を、このオープンプラットフォームで受けられるというメリットが大きい。

Autodesk 光造形3Dプリンター

Autodesk Ember3Dプリンター

Ember 3Dプリンターとスパークプラットフォームについてはこちらの記事もどうぞ

Carbon M1 3Dプリンター

光造形3Dプリンターの種類の部分でもご紹介したが、光造形から発展を遂げた製法であるCLIP製法(連続液界面生産)の3DプリンターがCarbon M13Dプリンターである。Carbon M1 3Dプリンタ―は、コダック社と開発した独自の光硬化性樹脂の素材を使い、エンジニアリングレベルの完成度を実現している。

先にも述べた通り、紫外線硬化性樹脂の硬化を妨げる酸素を、液体樹脂のタンクの下部から紫外線を照射することで、内部での硬化を実現し、高速性と驚くべき高解像度を実現しているが、Carbon M1 3Dプリンターは、5種類の樹脂が対応しており、いずれも優れた機械的特性を有する。

剛性と強度に優れたRPU硬質ポリウレタンや、耐衝撃性と耐摩耗性に優れたFPU軟質ポリウレタン、高い引裂強度と高弾性をもいつEPUポリウレタンエラストマー、高耐熱、高強度のCEシアネートエステル、プロトタイプ専用6色樹脂PRプロトタイプといった素材が利用可能。この材料ラインアップからもわかる通り、Carbon M1 3Dプリンターは、高性能な機能性パーツを生産することを目的とした3Dプリンターだ。

Carbon 3Dプリンター

光造形を進化させたCarbon 3Dプリンター

Carbon 3Dプリンター

積層の跡がない滑らかな仕上がりを実現   画像提供:Carbon

Carbon M1 3Dプリンターの詳しい情報はこちらをどうぞ

光造形3Dプリンターの用途

これまで光造形3Dプリンターの特性や代表的製品についてご紹介してきたが、光造形3Dプリンターの主な用途はその高精彩な精度を活かしたプロトタイプの作成にある。

光造形3Dプリンターの特長は、精密で滑らかな仕上がりが可能な一方で、対応している素材が、エポキシ樹脂ベースの光硬化性樹脂であることから、直射日光に弱く、最終品として使用する十分な物性を持っていない。この点が、最終品などで多用される熱可塑性樹脂を使用できる熱溶解積層法(FDM)と対照的な点である。

しかし、光造形3Dプリンターの材料も進化してきており、先にご紹介したCLIP製法によるCarbon M1 3Dプリンターのように、エンジニアリングレベルの物性を持つ材料も登場し始めている。また、熱可塑性樹脂ではないが、それに近い性能を再現することができる光硬化性樹脂も登場してきており、単純な形状確認のみのモックアップから、機能まで最終品に近いものを再現できる機能性プロトタイプまで用途を拡大しつつある。

本項ではご紹介しないが、同じ紫外線硬化性樹脂を使い、インクジェットのように噴霧し紫外線を照射するインクジェット3Dプリンターでは、機能性プロトタイプの再現まで用途を拡大しつつある。このように、光造形3Dプリンターの用途も、今後の製法や材料の進化によってさらに拡大することが見込まれる。

光造形3Dプリンター プロトタイプ

高精彩なプロトタイプがスピーディに作ることができる。 画像提供:Carbon

光造形3Dプリンターの未来

光造形3Dプリンターは、より一般的とされるSLAとDLPの製法から、更に進化しつつある。一つの進化がMaterial Jettingといわれるインクジェット方式の3Dプリンターである。

基本的な原理は、光造形と同様、液体状の紫外線硬化性樹脂を使用するが、二次元のインクジェットプリンターのように、微細なドロップ状にして噴霧することで、より表面の滑らかさを向上させている。また、このインクジェット状にすることのメリットは他にもあり、CMYK(シアン、マゼンダ、イエロー、ブラック)といったすべてのカラーを構成する基本色を液体樹脂に加えることで、色彩表現が自在になり、更には物性も幅広く表現することが可能だ。

例えば、このインクジェットタイプの新型であるストラタシス社のJ750という3Dプリンターは、最大36万色近くのカラーバリエーションを表現することができる。また、既にご紹介した通り、光造形を進化させたCLIP(連続液界面生産方式)では、従来の光造形3Dプリンターの弱点ともいえる、紫外線硬化を阻害する酸素を排除することで、驚くほどの生産性を実現している。それはまさに射出成型によって作り出される量産品のごとくである。

このように、光造形3Dプリンターの未来を見てみると、進化が著しい熱溶解積層法とともに、最終的に行きつくところはマスカスタマイゼーションの実現に向かっているといえるだろう。また、フルカラーやマルチカラー、マルチ素材という現在のアッセンブルされた製品のダイレクト製造にも最も近い製法が、光造形3Dプリンターなのかもしれない。

さらには、こうした技術的発展と同時に、従来からのデスクトップマシーンの性能も向上し、より手軽な存在になることが予測される。今後の3Dプリンター市場の大きな一翼として更なる進化が期待される製法だ。

光造形3Dプリンター

機能性を備えた紫外線硬化性樹脂の登場で、プロトタイプからエンドユースまで拡大する可能性がある。

光造形3Dプリンター

着色技術も登場。さまざまなカラー表現も実現する日も近い。  画像提供:Carbon

まとめ

これまでご紹介してきたように、光造形3Dプリンターは数ある3Dプリント技術の中においても、最も広く普及している技術の一つである。また、特許の失効によって様々な開発が進み、性能だけではなく材料開発も進みつつある。更に、近年主流であるオープンソースによる開発手法により、従来とは比べ物にならないスピードで発展が進みつつある。その顕著な例がCarbonであり、AutodesukのEmberなどがいえるだろう。

また、FormlabsやKudo3Dのようにデスクトップレベルの性能もこれまでとは比べ物にならないくらい進化を遂げている。先にも述べた通り、光造形3Dプリンターの性能と材料バリエーションの拡大は、マスカスタマイズの波とデジタルデータによるダイレクト製造の波を大きく全身させることにつながるかもしれない。

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