パロアルト研究所は物体と電子回路を融合させる3Dプリント技術の研究を発表

物体と電子回路を融合させる研究開発

3Dプリント技術の開発と同時に、近年研究開発が盛んなのが電子回路のカスタマイズ製造技術だ。3Dプリントは、物体を三次元データ通りに出力し生成する技術だが、電子回路も同様に、電子回路の設計図通りに、基板上に作り込む技術。どちらもデータ通りに生成する技術だが、3Dプリンターの方が親しみやすいし、理解しやすい。

いろいろな素材が使えるし、われわれの日常生活で当たり前に存在するものを作れるようになっているためだ。一方、電子回路の方は、かなりとっつきづらく、一部の人にしか理解されないのが通常のところ。

そもそも電気や金属の専門知識が必要だし、電化製品を動かす仕組みは、よほど興味がないと感心を持たないのが人情だ。こうしたことから3Dプリント技術が進み、一般消費者が手軽に扱えるようになったとしても、使用範囲は小物やアクセサリー、食器などといった『動かないもの』、すなわち電気を使わないものに限定されるだろう。

しかし、いまさまざまな方法で電子回路が3Dプリントする開発が行われている。

通常、電子回路というと緑色のマザーボードにさまざまな細かい半導体チップなどが配置され電子回路図が描かれているのが一般的だが、全く異なる物質に電子回路を構成する開発が注目を集めている。

その技術は異なる物質に電子回路を描くことで、オブジェクトすなわち物体と電子回路を融合するといった画期的な開発だ。本日はパロアルト研究所が開発する異なる物質に電子回路をプリントする驚異の技術をご紹介。

インク溶液に半導体チップをミックスする技術

そもそもこの異なる物質に電子回路をプリントする技術を開発するパロアルト研究所はどのような研究所なのだろうか。パロアルト研究所はカリフォルニア州パロアルトに居を構えるゼロックスが主要株主になっているコンピュータサイエンス、半導体技術などの研究開発機関だ。

スタンフォード大学の校内にあり、過去にはスティーブ・ジョブズやビル・ゲイツも訪れたことがある。

そんなパロアルト研究所が新たに開発する技術は電子回路を構成するチップ、すなわち半導体ウエハーと、物体をカタチ作る素材となるインク溶液を混ぜ合わせ、3Dプリントで描かれたワイヤー上に電子回路を描くという技術だ。

通常、電子回路上に配置されている細かい電子回路チップは、円形のシリコンウエハーを細かく裁断することで作られる。

その後細かく裁断され作られたチップを、設計図に基づいてマザーボード上に配置し、一般的な電子回路が作られる。しかし、パロアルト研究所の開発では、シリコンウエハーを人間の髪の毛ほどの細さに裁断し、その後インク溶液の中に溶かすことでワイヤー上に電子回路を組み込めるというものだ。

電子回路チップの元になるシリコンウエハー

通常は裁断されたシリコンウエハーから半導体チップが作られる

パロアルト研究所はインク溶液と半導体チップを混ぜ合わせる技術を開発

髪の毛ほどの細かさに半導体チップを裁断

あらかじめプリントされたワイヤーに半導体チップを配置することができる

ワイヤーに半導体チップが配備される

まとめ

詳しい技術的内容はあまりに専門的過ぎてわからないが、インク溶液にミックスせれた無数の半導体チップには、正電荷と負電荷が設けられており螺旋状に配置され、特殊技術により電子回路が配備されるという。

細かい技術的概要はともかく、この技術によって従来のマザーボードのみにしか作れなかった電子回路が、それ以外の物体に直接センサーや管理回路を組み込むことが可能になる。

パロアルト研究所の発表では主な用途として自由に折り曲げできる高性能なフレキシブル電子デバイスや極小の電子機器の製造などに利用できるという。

また、研究内容に含まれる部分が、3Dプリンターの製造プロセスにこの技術を組み込むという研究だ。

現在の3Dプリント技術はマルチ素材対応のものはまだほとんどないが、樹脂やワイヤーなどを組み合わせることが可能になり、この電子回路プリントとくみあわせることができれば、わざわざ基板を用意しなくてもデータから直接動く電化製品が作れるなんてことも可能になるかもしれない。そんな可能性を感じさせる研究開発だ。

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