異なる金属粉末を合成する新たな3Dプリント技術は製造業に巨大な影響を与える

物性が異なる金属材料を接合することの大変さ

3Dプリント技術の中でも、とりわけ金属粉末の造形方法は、多くの製造業にメリットをもたらすと言われている。

自動車製造や飛行機、家電製品など金属材料の利用範囲は多岐にわたるからだ。金属の3Dプリント技術はレーザーで、パウダー状の金属粉末を焼き固め物体にする方法論をとっているが、その利用できる素材は非常に幅ひろい。

金、銀、銅、ステンレス、アルミニウム、チタン、コバルトなどなど大半の素材が今では適応している。しかし、異なる金属同士を接合するには非常に大変な作業を有する。

基本的な問題として、接合するためには熱を用いるが、金属はその種類ごとによって熱に対する物性が全く異なるためだ。種類によって、溶ける温度である融点も異なれば、硬さも異なる。

また導電性も違えば、腐食性なども全く異なる。このように物性が違う金属を接合することは極めて難しく、例えば、銅とステンレスを接合するためには、銀ロウを使ったロウ付け作業が必要になる。

細かい技術的な話は割愛するが、この銀ロウは材料費としても極めて高く、接合するのにもかなりの手間暇がかかるのが一般的。このように、異なる物性をもつ金属をつなぎ合わせることは極めて難しく、コストもかなりかかる状況だ。

4種類の金属粉末を合成し合金を作る新技術

しかし、現実の金属を使った製造現場では、異なる物性を組み合わせたほうが製品力が向上することが多々存在する。例えばかねてから3Dプリンターの使用が期待されているジェットエンジンのパーツ製造を例にとると以下のようなことが言えるだろう。あるパーツの場所によっては直接熱源に接する部分の金属材料は耐熱性に優れたものが必要になるが、熱源に接しない部分は、別に耐熱性は要求されないことになる。

その場合は耐熱性よりも軽くて丈夫な別の金属材料のほうが最適になるし、もし自由に異なる素材を組み合わせることができれば、製品全体の性能向上につなげられる。こうした異なる金属材料を接合する技術はこれまで画期的なものは存在しなかったが、いま新たに3Dプリント技術で異なる金属を一つの物体に合金することができる研究が発表された。

この研究を発表したのはNASAのジェット推進研究所とカリフォルニア工科大学、ペンシルバニア州立大学の研究開発チームだ。この発表はこれからの製造業に膨大な影響を与える可能性があるとして注目されている。一言で言うと1回のプリントで、異なる金属材料を組み合わせることができるマルチ金属3Dプリント技術だ。下記の画像は新たな3Dプリント技術の概念図だ。

回転棒に金属粉末をレーザー焼結する新技術

回転棒にレーザーで金属粉末を焼つけ積層する仕組み。そのため階層によって異なる金属が成形できる事に成る。最大4種類の金属粉末まで合成可能であり、取り付けられた4つの送風機によって金属粉末が送り込まれ、レーザーで焼結される。いわば金属粉末のグラデーション製法だ。

異なる金属を積層したもの、内部の細い棒は耐熱鋼 として知られるA286スチール、外側はニッケルを36%含有した鉄、インバー36の積層

異なる金属粉末の積層方式

まとめ -製造業に巨大な影響をもたらす可能性-

この技術が実用化され、さまざまな合金を接合することなく、合成することが可能になればその影響は計り知れないものがある。冒頭でも申し上げたとおり、金属と金属の接合に要するコストは膨大なものであり、溶接することなく1つの造形で複合金属が構成されれば、製造業が得るメリットは巨大なものだ。

また、この発明は単純なコストメリットだけではなく、これまでの伝統的な製法を覆すほどの威力を持っているといっていいだろう。これはものづくりの基本だが、全てのものはさまざまなモノとモノで構成されており、そこには必ず「接合」という技術が存在する。そのためいい品質の製品や、故障がない製品というものは、構成されているモノとモノのクオリティだけではなく、それを接合する接合技術が極めて高いことが挙げられる。

特に我が国の家電製品が故障がなく、世界からもメイドインジャパンとして信頼されている秘訣は、この「接合技術」だといっても過言ではない。

しかし、最近の3Dプリント技術の進展を見てみると、これまでの伝統的な接合技術とは明らかに異なるアプローチをしてきている。今回の異なる金属粉末の合成技術も、実用化には至っていないが、その「接合」のレベルが向上すれば、驚異的な威力を発揮するかもしれない。

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