金属用低価格3DプリンターS1は40万円で鋳造と同じクオリティを発揮

最先端技術が結集する金属加工

金属加工の歴史は人類の歴史そのものと言っても過言ではない。

最も古い金属加工は鍛造で紀元前8000年ごろの銅による使用が始まりだと言われている。その後紀元前6000年ごろに鋳造が開始された。

この二つの製法は今でも重要な金属加工の製法で、多くの製品の製造に使用されている。しかも今では完全に機械化され、原理は同じでも高度にハイテク化されている状況だ。

もちろん上記の製法以外にも多くの金属加工は存在するがその製法は時代の進歩とともにカタチを変え、常にハイテク製品の製造を担ってきたといってもいい。自動車は金属加工の固まりだし、意外と知られていないがゴルフクラブは超最先端素材と金属加工の結集と言っていい。

このようにハイテク分野を担う金属加工において最も新しい製法と言えばレーザー焼結法があげられるだろう。粉末状からレーザーで焼き固める製法で、従来の鍛造や鋳造、削り出しなどに比べ材料の無駄もなく、データから一体成形できる。2014年になってようやく特許が切れを迎え、今水面下でさまざまな開発が行われている状況だ。

既に今年に入りこの技術を利用した低価格モデルの3Dプリンターが早くも登場している。既に登場したモデルは「レーザー焼結(SLS)の特許切れで低価格3Dプリンターが続々と登場」で述べたが、さらに、新たな開発に名乗りを上げる企業が登場した。

1台4000ドルの金属粉末3Dプリンター

本日ご紹介するオーストラリアのスタートアップ「オーロラLabs」が開発する金属粉末の低価格3Dプリンターは何と4000ドルという価格帯を想定している。クラウドファンディングキックスターターで資金調達を開始しており、3種類のラインナップを販売する予定だ。

さまざまな金属粉末に対応しているとともに、プラスチックやセラミックにも対応しているという。細かい精度はスペックの発表のみだが、その精度は鋳造と同等まで発揮できるクオリティで低価格だが高性能を発揮できる。

「オーロラLabs」が開発する4000ドルの金属粉末の3Dプリンター動画

オーロラLabsのS1メタル3Dプリンター

3DプリンターS1 スペック

  • プリンターサイズ:1600mm×450mm×450mm
  • 解像度:50ミクロン、100ミクロン
  • 精度:99.5%の濃度(高品質の鋳造に類似)
  • 対応素材:316ステンレス鋼、420ステンレス鋼、インコネル625、インコネル718、ハステロイC、真鍮、ブロンズ、軟鋼など
  • 専用STLソフト付属
  • S1:150mm×150mm×200mm(造形サイズ) 2粉末フィーダー 3998ドル
  • S2:150mm×150mm×200mm(造形サイズ)3粉末フィーダー 6219ドル
  • S2大型ヘッド:180mm×180mm×500mm(造形サイズ) 3粉末フィーダー 7110ドル

このS1シリーズの開発を行なう「オーロラLabs」は材料科学、ソフトウェア工学、ロボット工学、数学、プロダクトデザイン、表面工学と物理学の専門家によって構成されている。彼らの発表では、このS1シリーズは低価格ながら高性能が発揮でき、自動車用パーツや工具、ロケットモーターのパーツまで製造することができる。彼らの表現をかりれば「500ドルから1000ドル程度の価格帯で1万ポンドの推力ロケットモータを構築することができる」とのこと。

精度は鋳造の99.5%の濃度に類似

まとめ 安くても高い精度が求められる

「オーロラLabs」が開発するS1シリーズは当面はキックスターターのみでの販売を行う計画で、同時に金属粉末の材料をも供給可能だ。ちなみに材料粉末の価格はアメリカへの発送ベースで、316ステンレス鋼でキロベースで45ドルだ。

当然のことながら金属粉末は樹脂などと比べてもかなり高額になる。金属粉末3Dプリンターの低価格化はミシガン工科大学の教授とそのチームが1200ドルのオープンソースモデルの開発を発表するなど、これから続々と登場することが予測される。

しかし、樹脂のFDMモデルと同じような普及の仕方はしないのではないかと思われる。なぜなら、樹脂などと比べて、金属原料はかなり高額になるし、いくら低価格で金属用3Dプリンター手に入るとはいえ、クオリティが悪ければ使用できる範囲も限定される。

例えば、試作品を作る程度であれば、樹脂のFDMの低価格3Dプリンターで十分だ。何も材料費が格段に高い金属粉末の3Dプリンターを使う必要はない。こうしたことからも、低価格化が進むとはいえ、そこに求められるのはそれなりのクオリティになる。むしろ言い方を変えれば、従来の製法である鍛造や鋳造、切削や溶接などと同等の精度がだせなければ使用する意味がないのではないだろうか。

今後金属粉末の低価格化は進むとはいえ使用する人は企業ベースになると思われる。

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