MakerBotが3Dプリントを30%高速化。新機能MinFillとは

FDM 3Dプリンターの性能を決める“ソフトウェア”の力とは

特許切れによって続々と登場する安価な3Dプリンター。特にFDM、熱溶解積層法によるデスクトップ3Dプリンターは、世界中で様々な機種が登場してきている。

多くのデスクトップモデルのFDM 3Dプリンターが、積層ピッチの精密性を謳っているが、実際には精密な積層ピッチの設定でプリントしようとすると、膨大な時間がかかり、同時にミスプリントを引き起こす可能性が高い。

特許切れによってFDM 3Dプリンターは爆発的に登場しているが、実際、多くの廉価版の性能は、開発された当時の領域を出ないのが現状といえるのではないだろうか。

そのような中において、根本的にデスクトップ3Dプリンターの性能を向上させる上において、最も重要なポイントが“ソフトウェア”の開発力である。

千差万別のあらゆる3D設計モデルに対応する秘訣

FDM 3Dプリンターは、フィラメントといわれる熱可塑性プラスチックを糸状にしてた材料を、溶かして積み上げて物体を造形していくが、物体の形状によって最適なプリント方法は様々である。

例えば、単純な四角い形状のものをプリントする時と、複雑な形状のものをプリントする時では、最適なプリント構造やアプローチはそれぞれ異なるだろう。つまり積層する際の押出ノズルの動きがより多様なパターンに最適化されていることが、FDM 3Dプリンターの性能を向上させるうえで最も重要だといえるのである。

そこにはユーザーが作る千差万別の3Dデータに対応し、なおかつ見た目のクオリティや強度を保ちつつ、更には材料特性に応じた最適なプリント方法を発揮するソフトウェアが必要になる。

このようにFDM 3Dプリンターの性能を決定づけるものは、積層ピッチや材料といったハード面の幅よりも、ハードウェアをコントロールするソフトウェアの能力に左右されるのである。そして、FDM 3Dプリンターのソフトウェアを向上させるためには、ありとあらゆる形状の設計データに接続することができるクラウドコンピューティングが重要となるのである。

本日は、クラウド3Dプリンターの代表ともいえるMakerBotの新機能、造形時間と造形材料の消費の大幅な短縮を実現した「MinFill」についてご紹介しよう。

クラウドで一元管理でき、プリント性能が飛躍的に向上したMakerBot Replicatorプラス

MakerBotクラウドの新機能「MinFill」とは

MakerBotはデスクトップタイプのFDM 3Dプリンターで、最も普及しているモデルの一つである。FDM の開発元であるストラタシスの傘下に入ることで、更なる進化を遂げている。

その進化の最大のものが、今回ご紹介するソフトウェアの進化である。ストラタシスは、今からさかのぼること二十数年以上も昔、1989年に熱溶解積層法(FDM)の3Dプリンターを初めて開発したメーカーだ。

最初の初号機はまさに現在普及し始めているデスクトップで扱えるもので、以来、デスクトップからハイエンドモデルまであらゆるラインナップを持つ。

このストラタシスにはあらゆる“形状”をプリントしてきた二十数年間の蓄積があり、そのノウハウと技術力がMakerBotの進化に大きな影響を与えている。今回登場した「MinFill」という機能は「造形する物体の品質や外観を低下させることなくインフィル(造形モデル内部の構造体)を最小限に抑えることが可能な、 初めての汎用ソリューション」(出典:ストラタシス・ジャパン、ニュースリリース)。

この機能によって、従来と比べて、造形スピードが最大30%早くなり、材料消費も30%抑えることができる画期的な機能だ。

こちらは、内部構造の比較。右側が従来のインフィルによる造形モデル、左側が MinFill機能を使って造形されたモデル。この機能によって 外観を損なうことなく、 造形時間とコストを約30%削減することができる。 画像提供:ストラタシス

高度なアルゴリズムが3Dモデルを自動解析、最適化する

FDM 3Dプリンターは、物体の強度を確保するために、内部にインフィルといわれる支えとなる構造が必要となる。3Dプリントする物体が大きくなればなるほど、このインフィルに要するプリント時間と材料は多くなり、必然的に造形時間と消費材料が大きくなる。

今回MakerBotは、造形する物体の形状に応じて、このインフィルの量を最適化し、削減するソリューションを開発した。この「MinFill」は、高度なアルゴリズムにより自動的に3Dモデルを解析、最適化する機能であり、品質や外観も従来通りのまま、造形時間と消費材料を抑えることができる。

下記の図は、「MinFill」による造形時間の節約のグラフだが、造形サイズが大きくなればなるほど、その効果は大きい。こんかいの「MinFill」はMakerBot Replicator+, Replicator (第5世代)およびReplicator Z18の機種に対応している。

造形サイズとMinFillによる節約時間のグラフ。サイズが大きくなればなるほど効果が発揮される。

迅速なプロトタイプや強度を有しない物体には最適な機能

このMakerBotソフトウェアの新機能「MinFill」は、迅速なプロトタイプの作製や、強度や反復的に使用することによる耐衝撃が要求されない物体の造形には大きな効果を発揮する。

下記の写真は、MakerBotが「MinFill」設定による節約時間の目安表だが、圧倒的にスピードアップすることができる。実際、弊社で作製しているプロトタイプに早速この「MinFill」を適用させてみたが、造形時間がかなり短くなっている。

この「MinFill」は物体の大きさが大きくなればなるほど効果が出る機能で、厚みわずかわずか5mmほどの物体ではほぼ造形時間は変わらない。

一方で、容量が大きなサンプルでは、造形時間が約4時間近く短縮され、材料消費量も77g分抑えることが可能となった。このように、「MinFill」は物体の大きさや形状によって内部構造を最適化してくれ、より効率的でスピーディな3Dプリントを実現してくれる。

様々な物体の節約時間の目安。大きさと形状に応じて内部構造を最適化してくれる
こちらは実際にMakerBotプリントソフトでのシミュレーション画面。通常の内部構造では、15時間26分かかる。
デフォルトのスタンダード設定ではバランスの部分にチェックが入っている。
内部構造をデフォルトのバランス重視の設計から、MinFillにチェックを変更するだけ。
再度シミュレーションで見てみると、15時間26分から11時間51分まで減らすことが可能に。
因みに、厚さわずか5mmの物体では、ほぼ造形時間は変わらない。こちらはバランス設定で1時間46分。
MinFillの設定で2分短縮。わずか5mm厚でもソフトウェアが自動解析で最適化してくれる。

まとめ クラウドベースで進化し続けるMakerBot

MakerBotは、新型の機種MakerBot Replicatore+でご紹介したが、クラウド3Dプリンターとして画期的な機能を有している。ソフトウェアがクラウドベースであるため、1台のパソコン、スマートフォンで複数のMakerBotを一元管理することができる。

また、造形精度とプリント速度、安定性は他のデスクトップタイプの群を抜いているといっても過言ではない。特に、ストラタシスの長年のソフトウェアのノウハウに加え、ThingiverseやGrabCADといったクラウドコミュニティにも対応することで、膨大な3Dデータベースとソフトウェアがクラウド上で連携し、それをハードのファームウェアと連携させることで、他の追随を許さない進化を遂げつつある。

特許切れによって多くの廉価版が登場しつつあるが、MakerBotの進化は更に加速しそうだ。

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