全国の図書館で3Dプリンターとデジタル教育を無料で提供する「Maker Lab Club」

国民の3Dデジタルリテラシーを高める狙い

アメリカは学生や子供たちへの3D技術の普及に相当力を入れている状況だ。対象としている3D技術は3Dプリンター、3Dスキャニング、3Dデザインソフト、の3つ。中学校高校レベルの学校での導入やカリキュラム制定とともに、3D専門の大学院やコースまで設ける動きが登場している。

しかし、こうした3D教育の普及は既定の教育制度にとどまる物ではない。今度は図書館と博物館を対象に3Dプリンターを設置し、子供たちや図書館利用者に無料で3Dプリンターや3Dデザインに触れてもらう場を提供しようとしている。この動きの中心になるのが3Dシステムズとアメリカ図書館協会、科学技術センター協会で、国民のITリテラシーならぬ、3Dデジタルリテラシーを高めたい考えだ。

今回このプロジェクトの中心として3Dシステムズが設置したのが「Maker Lab Club」と言われる図書館・博物館ネットワーク。3Dプリンターの設備を設けたい図書館は、このコミュニティに参加することで3Dシステムズから無料で3Dプリンターや3Dワークショップの専用コンテンツが支給される。それでは具体的に3Dシステムズが行なうMaker Lab Clubとはどのようなものなのかご紹介しよう。

Maker Lab Clubとアメリカ図書館協会の野望

Maker Lab Clubは上記で述べたように、アメリカ国民の3Dデジタルリテラシーを高めることを目的としている。全国の図書館と博物館に3Dプリンターを設置することで、多くの人々に無料で3D技術に触れもらい、新たなモノづくりや発想の拠点にしたい考えだ。

具体的に言えば、図書館や博物館は地域に根付いた拠点であることから、地域密着型の参加型学習の中心的存在になることが狙いだと言える。

それではなぜこれほど図書館や博物館が自らの設備を充実させ、学習環境の整備に意欲的なのだろうか。

そこには世界で最も大きな組織、アメリカ図書館協会の存在が大きいと言える。アメリカには図書館が全国で約9000以上も存在するが、この9000以上もの図書館の運営はMaker Lab Clubのメンバーであるアメリカ図書館協会が行っている。このアメリカ図書館協会は構成員が6万人を超える世界最大の境界で、同時に世界最古の図書館協会でもある。

このアメリカ図書館協会は図書館の水準向上や、教育機関への監督指導を行なうことを目的としており、政府にもロビー活動を行なうほど力を持っている存在だ。

そのため、日本の地方自治体が運営する公共図書館とはその設備面、水準などでは異なると考えた方がいいだろう。また、アメリカ図書館協会は日本の私設図書館とはレベルが異なり、議会や政府を動かし予算を獲得するだけの力と組織を持っている。

とりわけ図書館設備や教育関連に関する動きや議題では、積極的に議会に働きかけ、予算獲得のロビー活動も盛んだ。アメリカの図書館にIT設備が充実していることも、アメリカ図書館協会の動きが大きい。ちなみにアメリカの図書館のIT設備普及率は2012年度で91%に上る。

今回の3Dプリンター関連の設備獲得も、元来、図書館設備の水準を上げることに積極的なことから当然の動きだ。

図書館と博物館が地域のデジタル教育の拠点になる

上記で述べてきたように、アメリカ図書館協会の目的はシンプルで、図書館と博物館の教育拠点としての役割を高め地域のデジタル教育の中心的存在になることだ。こうしたことから、Maker Lab Clubは全ての図書館や博物館が参加することが可能だ。参加し、加盟が認められた場合は3Dシステムズから大きな支援を受けることができる。

例えば3Dシステムズの3DプリンターCube2を無償で2台から4台配備され、さらには3Dデザインと3Dスキャンに関するワークショップカリキュラムや専用コンテンツが提供される。また、図書館や博物館の人たちに向けたオンライントレーニングサイト3DUへのアクセスも可能になるとのことだ。

Maker Lab Clubには参加はどの図書館、博物館でも可能だが、一応一定の条件がもうけられている。応募者の条件としては、3Dプリンターの専用保守担当者の確保、メンバーシップに参加した年に3Dプリントプログラムや、3Dプリントクラスなどの教育プログラムを開催すること、地域社会でのデジタル教育の拠点としての計画を持つこと、常に3Dシステムズやアメリカ図書館協会、科学技術センター協会と連携することだ。

Maker Lab Clubの参加募集は既に開始されており、今年の年末には参加した図書館、博物館に3Dプリンターが発送され、2015年以降から本格的なMaker Lab Clubプログラムがスタートする。

参加図書館や博物館には3DシステムズのCube2を2台から4台提供

まとめ 政府、企業、教育機関が一丸となって取り組む

アメリカの図書館の目的は、アメリカ社会の中における教育分野の一躍を担うことだが、規定の教育機関から独立して存在するわけではない。現在ほぼすべての図書館がIT化されているが、こうした通信状況の充実を利用し、規制の小学校、中学校、などの教育機関とも連携し、学校の3Dプログラムと提携を行なう体制もこのMaker Lab Clubの目的になっている。

面白いのが、ただ単純に機械だけ配備して、あとはご自由にどうぞというスタイルではなく、図書館や博物館が独自に教育プログラムをたちあげ、3Dプリンターや3Dデザインの実践的教育を行っていくことが注目される。

そこに対して3Dシステムズとアメリカ図書館協会、科学技術センター協会がバックサポートを行い、組織的に運営する体制がとられるというわけだ。

また、このMaker Lab Clubには図書館や博物館以外に、科学センター、水族館、植物園、動物園も参加可能で、3D技術の幅広い活用が目指される。上記でも述べたが、アメリカの図書館の教育界における影響力は強く、日本の町にある図書館をイメージすると、この計画の実践的な凄さがイメージしにくい。

いずれにせよアメリカは3D技術の教育体制を全国的に整え始めている。国や企業の競争力を高め豊かにする原動力が人材だとすれば、子供たちに時代に合った技術を習得させることは最重要課題として取り組むことが必要だ。

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