20倍の速度を持つ中国の低価格3Dプリンター「Make」登場

続々と登場する光造形3Dプリンター

2012年10月にForm1がキックスターターに登場して300万ドルもの資金調達に成功して以来、光造形法の3Dプリンターが多くの支持を集めている。

とりわけ樹脂を溶かして積層するFDMタイプの3Dプリンターに比べ、速度、印刷のクオリティ、解像度などすべてにおいて、光造形法の3Dプリンターの方が上回っている。

ちなみに光造形は熱硬化性樹脂の代表とも言えるエポキシ樹脂アクリル樹脂をベースにした紫外線硬化性樹脂に紫外線を照射し硬化させる方法。最近では材料開発が進み、ポリウレタンなどのゴムライク材料も登場してきている。デスクトップタイプではFormlabs社のForm2が代表的な存在だ。

その仕上がりは比べてみれば一目瞭然で、FDMタイプのものが積層の粗が目立つのに比べ、光造形は高精度で滑らかな仕上がりだ。Form1が登場してからも、光造形3Dプリンターのリリースは止まらず、1台5万円から購入できるLittleRPや、AUTODESKが3DプリンターのOSとともに発表したオープンソースモデルなど、続々と登場している。

そんな中、新たに中国企業が光造形3Dプリンターの新規参入を発表した。その新たな機種はFDMタイプの3Dプリンターの3倍から20倍プリントスピードが速い高速造形が可能だという。本日は中国の光造形3Dプリンター「Make」をご紹介。

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中国の20倍高速の光造形3Dプリンター

中国はアメリカと同様有望な3Dプリント市場とみられ、2016年度にはアメリカを抜き、世界最大の3Dプリント市場に成長するとも言われている。そんな中国市場だが、世界の3Dプリンター開発の波に乗り遅れることなく、官民一体となった3Dプリント開発が行われている。

基本的には政府主導で開発が行われ、そこに各企業や学術研究機関が連携する形で3Dプリンターの開発が行われている。これまでもいくつかの中国事情をご紹介してきたが、今回ご紹介する「Make」は完全に一企業の動きだ。

「Make」を開発する企業「ARTISAN MAKE」は中国深センに本拠を置く新興企業。これまで登場した光造形モデルに勝るとも劣らない性能を持つ3Dプリンターをリリースしている。

その最大の特長は高速で滑らかな仕上がりが可能な手で、通常の一般的なFDMタイプの3Dプリンターの3倍から20倍の速度で造形が可能だ。主にジュエリーや歯科キャストの生産に有効性を発揮するという。

中国の新興企業「ARTISAN MAKE」の光造形3Dプリンター「MAKE」

「MAKE」で作られた造形物

「MAKE」スペック

  • プリントスピード:FDMの3倍から20倍高速
  • 用途:正確な小型サンプルのプリントに最適
  • プリント材料:UV樹脂
  • プリンターサイズ:380mm×380mm×550mm
  • 造形サイズ:125mm×125mm×180mm
  • プリンター重量:15kg
  • 最小レイヤーの薄さ:0.025mm
  • DPI:4096mm×4096mm×6000mm
  • ファイル形式:STL
  • 価格:22,800人民元(約40万円)/1ユニット

価格は1ユニットに500mlの液体樹脂がついて22,800人民元、約40万円とやや高め。主に中国市場を対象に販売を開始している。また、この中国の新興企業「ARTISAN MAKE」は今回発表した光造形モデル以外に、レーザー焼結法の低価格3Dプリンターの開発も行うのではないかと予測されている。

というのも、つい先月レーザー焼結法の低価格モデルを発表したイギリスのスタートアップ企業Norge社と提携関係を結んだと発表されたためだ。Norge社はレーザー焼結法の3Dプリンターを2機種発表し、話題となった企業。本格的に中国市場の獲得に乗り出す計画かもしれない。

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まとめ 技術力が向上している中国メーカー

最近サムスンのアジア市場での勢いが以前ほどではないという話を聞いた。円安による原材料費の高騰やさまざまな問題が起因しているが、そのうちの一つに中国の新興家電メーカーに押されつつあるという話もあった。

かつてサムスンと言えば20年前は日本でも品質の悪い韓国メーカーというイメージしかなかったが、今では世界のサムスンにまで成長している。それと同じように中国企業も着々と技術力を向上させ成長してきている状況にある。

中国の代表的家電メーカーと言えばレノボやハイアールがあげられるが、その工場は片側道路三車線を誇るほどの広大さで設備はほとんどが超ハイテク化されている。

このように見ると、一昔前までは中国企業は安かろう悪かろうの代名詞として扱われていたが、企業によってはかなりのレベルまで品質が向上していると思われる。とりわけ製造業やIT産業が盛んな地域が深センだ。

深センは中国第4位の生産高を誇る都市だが、経済特区としてもしられ、製造業だけではなくITや通信、金融の中心地でもある。そのためそこに居を構える「ARTISAN MAKE」の3Dプリンターの性能も期待ができよう。

中国は国土が広大で人口も多いことから、さまざまなレベルの企業が存在し、一社だけを見て全体を判断するのは極めて危険なことだ。以外に我々の知らないところで高い技術力を持つ企業が着々と成長しつつあるかもしれない。

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