本格的な実用車両の3Dプリントに乗り出すローカルモーターズ
巨大な超高速3DプリンターBerthaと、全世界に展開するクラウドコミュニティで自動車製造に革新を与えようとするローカルモーターズ。マイクロファクトリーといわれる小規模なコミュニティ工場を各地域に設置し、3Dデータからダイレクトに電気自動車を作ろうという試みだ。このローカルモーターズの取組がいよいよ本格的にスタートしようとしている。
昨年9月にわずか6日間で3Dプリント電気自動車Stratiをつくり、一躍世界から注目を浴びたが、いよいよその試みを引き続き3Dプリントプロジェクトがスタートした。ローカルモーターズは今回のプロジェクトの立ち上げにあたり、名前をあえて伏せ、プロジェクト■■■としているが、その目的は3Dプリンターの真髄、ダイレクトデジタルマニュファクチャリング(DDM)の力をいやが上でも見せつけ、既存の自動車製造を破壊しようというものだ。
このプロジェクトが始動すれば、自動車製造はこれまでとは全く概念で行われるようになる。それはある意味コスト的にも、デザイン的にも人々のニーズにより細かく対応できる究極のユーザーニーズかもしれない。本日はローカルモーターズが新たに発表したプロジェクトをご紹介。
高速道路適合車両の3Dプリントで実用化を証明
今回ローカルモーターズが立ち上げたのは、世界で初となる本格的な3Dプリント製造の高速道路対応車両のコンテストだ。前回昨年の9月に発表された3Dプリント電気自動車Stratiはある意味初めての試みで、速度も一般的に使用できるほどの機能が持たされていなかった。
おそらく多くの人が思った疑問として、速度や安全性の観点から、本当に実用化できるのかという部分があっただろう。
しかし、今回新たに行われるプロジェクトでは高速道路でも使用することができる機能、すなわち実用車としてのスピード、安全性を兼ね備えたフルスペックの自動車を3Dプリンターで作ってしまおうという取組だ。3Dプリンターが普及し、製造が可能になってもプロトタイプではなく実用性のあるものが作れなければ真の価値を発揮しない。
ローカルモーターズはこの取り組みを通して、3Dプリンターの真髄とも言えるダイレクトデジタルマニュファクチャリング(DDM)の力を見せつけようとしている。
ダイレクトデジタルマニュファクチャリングの真髄を見せつける計画
今回発表された高速道路対応自動車のチャンレンジプロジェクトでは、主に以下で述べるポイントに重点を置いて、3Dプリンターがもはやプロトタイプ製造のマシーンではなく、本格的な最終品の生産マシーンとして機能することを見せつけたいようだ。第一に今回も、車両の大部分を高速巨大3Dプリンターで製造することが条件になっている。
高速道路での使用が条件ということから、一般に使える、いわば実用車としての機能と安全性があることを示したい考えだ。また、第二の狙いはダイレクトデジタルマニュファクチャリング(DDM)が、これまでの自動車製造と比較して、はるかにユーザーフレンドリーだということを示すことにある。
現在の自動車は一言で言えば金属加工の塊だが、ローカルモーターズの炭素繊維配合樹脂をつかった3Dプリンターで作れば、金型やスタンプ製法などによる金属加工は使用しないためはるかに安く、早く作ることが可能だ。また、結果として低コスト、短納期での生産は、ユーザーに価格として跳ね返ってくる。さらには、部品点数も圧倒的に少なくなるためメンテナンスもこれまでよりも容易になるだろう。具体的には、下記のようなメリットがあるとのこと。
高速道路車両の3Dプリントチャレンジのメリット
- 3Dプリントボディとシャーシは既存の車のパーツ量の半分
- オープンソースで、コミュニティに参加する人は全てのノウハウ、メンテナンスマニュアル、OEM部品の3Dプリント製造の権利が取得できる
- 部品の削減は組み立て工程の短縮、メンテンスのコストを抑える
- ニーズに合わせてカスタマイズ可能。自分の好みのデザインや仕様に修正・改変できる
このプロジェクトも前回同様デザインが投稿され、審査員の決定とコミュニティの投票で最終案が決まる。1位は7500ドル(約93万円)、2位は2500ドル(約30万円)、3位は1500ドル(18万円)の賞金が手に入る。すでに17案ほどのデザインが投稿されており、参加者はローカルモーターズのホームページ上からスターターキットをダウンロードして、自分でデザインすることになる。
ちなみに参加条件は以下のとおりで、高速道路で走ることができるアメリカ運輸省の連邦自動車安全基準および規制の209条と210条に適応しなければならない。
車両デザインの条件
- 4人乗り
- 2ドア
- 屋根はソフトルーフもしくはセパレイトパーツ
- スターターキットのサイズに収まる大きさ
- 主要パーツは、DDM(3Dプリント、CNCフライス盤、ウォータージェット部品)、またはOEMソース(使用部品表のドキュメント)のいずれかで構成
- フロントガラス
- バッテリー、モーター、乗客、ホイールベース、トラック幅寸法はパッケージファイルに定義されているとおり。変更すると無効
まとめ DDMの実用化には規格のクリアが必須
デジタルデータからダイレクトに物体を作り出す手法、ダイレクトデジタルマニュファクチャリング(DDM)の真髄は、ローカルモーターズのこのプロジェクトに全て詰まっているといってもいいだろう。個人の細かいニーズに応えるだけではなく、コストを圧倒的に安くし消費者にも安い値段で提供することができる。
またメンテナンスも容易で、コストもかからないのが特徴だ。こうした3Dプリンターの真髄とも言えるダイレクトデジタルマニュファクチャリングDDMは、いいことづくしのように聞こえるが、完全に機能するためには、たった1点の課題をクリアしなければならない。それが安全性や実用性といった規格をクリアするということだ。
一般的に3Dプリンターが最終品の製造に使用されるケースが少ないのも、作られた製品が品質を決定づけるための規格をクリア出来るかどうかにかかっているわけだ。こうした点からも今回のローカルモーターズの高速道路で使用できる車両を作るという取り組みは、ダイレクトデジタルマニュファクチャリング、通称DDMの可能性を広げるものだといえよう。
規格に則り、安全性や実用性がクリアされれば巨大なクラウドコミュニティを通じ、世界のさまざまなニーズを集約、迅速にピンポイントにその人のみのオンリーワンの製品を提供できる新時代のメーカーが誕生するだろう。
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