低価格の光造形3DプリンターKASTは12倍の高速プリントを誇る

続々と登場する低価格な光造形3Dプリンター

オープンソースということもあってか、続々と光造形3Dプリンターの新商品開発が続いている。

光造形技術の3Dプリンターの最大の特長は、高解像度で滑らかな仕上がりができる点にある。樹脂を溶かして積層するFDMタイプのものよりも綺麗だし、プリントスピードも早い。材料の種類はFDMタイプの方が多いが、現状では仕上がりの良さから、低価格モデルでは光造形の方に多くの期待が寄せられている。

そのため新規に3Dプリンター市場に参入するケースも、この光造形モデルで参入するケースが非常に多い。

ただ光造形の場合は、基本的に液体のエポキシ樹脂や、アクリル樹脂ポリウレタンなどをベースにした紫外線硬化性樹脂で、FDMのようなプラスチック素材のバリエーションが少ない。高精度なFDM 3Dプリンターでは最終品が造形できるが、エポキシ樹脂を紫外線で硬化させる光造形ではプロトタイプの使用が一般的である。

この分野で大ヒットしたForm1はもはや古株で、AutodeskのOSスパークのフラッグシップモデルともいえるオープンソースモデルや、5万円のLittleRPなど、高性能、低価格化が止まらない状況だ。本日ご紹介するKASTもそんな光造形モデルの低価格3Dプリンターだ。

続々と途上する光造形モデルの中でどのような差別化を出しているのだろうかご紹介したいと思う。

12倍のスピードを持つ光造形3Dプリンター

KASTの最大の特長は高解像度を保ったままで高速3Dプリントが可能な点にあるという。彼らの発表ではそのスピードは既存の3Dプリンターの実に5倍から12倍に達する。しかも価格は2000ドル以下とのことだ。

もしこの性能が偽りではないのであれば、また一つ低価格3Dプリンターの歴史を塗り替えることになるだろう。既にプロトタイプは完成しており、量産化のための資金集めをキックスターターで開始する予定だ。最初の25名のサポーターには999ドル、約10万円で提供されることになるようだ。

12倍のスピードを誇る光造形3DプリンターKAST

このKASTを手掛けるチームは中国のエレクトロニクスのプロたちで構成されている。創業者のNirvana Jay氏は中国の名門、精華大学で数学を学び、10歳からエレクトロニクスに親しんでいる経験を持つ。精華大学は中国でも北京大学に次ぐ大学で、世界的に活躍する人材を多く輩出する大学だ。

もう一人の共同創業者Yanjun氏は、世界的に著名な中国科学技術大学でマスターを収めた技術者。この中国科学技術大学もアメリカのカリフォルニア工科大学をモデルにし、海外との交流が多い大学。またそれ以外のメンバーも材料科学·エンジニアや、機械加工、ソフトウェアのスペシャリスト達だ。

中国の製造業や科学技術力は近年目覚しい発展を遂げ、レノボやハイアールに代表されるようにエレクトロニクスの分野では韓国のサムスンをしのぐ勢いがある。そのため中国の若い工業、ソフトウェアエンジニアはかなり優秀だと言えよう。ちなみにこのKASTは2年前の2012年からプロジェクトがスタートし、現在ここにきてようやく量産化にこぎつけることとなった。

KASTで作られた造形物

2年前からプロジェクトを開始

KASTスペック

  • プリンターサイズ:341mm×341mm×555.5mm
  • 重量:8kg
  • 製法技術:SLA
  • 造形サイズ:200mm×154mm×300mm
  • 造形スピード:12.7センチ/1時間
  • レイヤー解像度:96ミクロン
  • ソフトウェア:B9-クリエーターベース
  • 接続:Wi-Fi、パソコン、iOS、アンドロイド対応
  • プリンター素材:アルミニウム、アクリル

まとめ

3Dプリンターの開発競争は常軌を逸したスピードで行われつつある。ある機種が登場すればそれを超える性能を持つものや、異なる特徴を持つ機種が次々に登場している状況だ。とりわけ光造形モデルはオープンソースであることから、この開発競争はさらに進むことが予測される。

ちょっとやそっとの特長ではもはや差別化を図ることは難しい。今年になって続々とリリースされている機種たちは、実際に市場に投下されていないものもあり、一定数が普及してユーザーからの評価が聞けるのは来年以降になるだろう。

とりわけスペック通りの高性能であればいいが、実際の性能は使用してみなければわからないのが本当の所だ。特に海外製は基板部分の接合が日本のモノづくりほど管理が行き届いていないケースも多く、性能はいいが故障したり、使用が安定しないケースも多々ある。

世界中のベンチャーが3Dプリンターの開発に参入しているが、期待したいのは日本の故障しないクオリティを持つメーカーの参入だ。しかし3Dプリンターの開発分野では多くの遅れをとっている日本、今後の開発状況に期待したい。

光造形の原理と仕組み、種類についてはこちらをどうぞ

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