デジタル化とオープンソースのものづくりは、本当にいいプロダクトを生み出すか

By | 2015年7月21日
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オープンソースの製品開発の時代

IOT(モノのインターネット)プロダクトの特長の一つとして、ハード、ソフトともにオープンソースの方向に向かうということが挙げられるだろう。最近では製品をコントロールするためのソフトウェアだけではなく、ハードもオープンになる傾向が強い。ベースとなるキットを使い、ユーザーが自分の好みに応じて自由にカスタマイズできる。

特に3Dプリンターの進歩により、この方向はますます拡大する。こうしたモノの分野において、オープンソースが拡大する根本的な理由はさまざまだが、何よりもまず、インターネットとデシタル化の普及、そしてそれを後押しする、大量生産モノ余りの現状が挙げられる。

あらゆるモノ、プロダクトと言われる工業製品で多い尽くされた現代では、基本的な人間の欲求(一般的な生活の中に置ける欲求)は、ほぼ全て手頃な価格で手に入れられることができる。例えばパソコンや車、スマートフォン、さまざまな家電製品など、こうした製品を手に入れられないという人はまずいない。

また製品ラインナップも豊富に揃い、一つのメーカーの製品が気に入らなければ、消費者は2社3社、あるいはそれ以上の選択肢を持つ。もはや一般的な分野、例えばテレビならテレビ、スマートフォンならスマートフォン、という広い分野の市場において主体的な地位を確立し、消費者のパイを取るビジネスは、危険極まりないと言える。

それは、今の我が国の大手家電メーカーの状況に目を向ければ、いかに時代にマッチしていないかはわかるだろう。こうしたことの背景から、より細分化するユーザーの好み、感情、感覚を汲み取る仕組みが必要になるわけだ。モノのオープンソース化が進む背景には、単なるテクノロジーの発展だけにとどまらない、経済発展の行き着く先の、こうした時代典型が挙げられるだろう。

IOT オープンソース 製品開発

優れたアイデアや、ユーザーの要望を迅速にくみ取る仕組み

また、同時にIOTのプロダクトの特長は、全ての人に必要で、好まれるといったたぐいのモノではない。インターネットに接続して使用するという行為に、利便性と価値を感じるユーザーは、限定される。例えば、フィットネスモニターは、運動を効果的にしたい人以外にはいらないし、ベビーモニターや、忘れ物防止アラームのキーホルダーは、あれば便利だが無くても問題はない。

つまり、作る側もユーザーをより明確にする必要がある。こうしたことからも、不特定多数のアイデアが集めやすいオープンソースが最適になる。このようなオープンソースのものづくりには、メリットデメリットそれぞれがあるが、最大のメリットは製品開発の圧倒的なスピードアップだ。

既に一定のレベルまで仕上がったシステムや、技術など驚くほど低価格もしくは無料で利用することができる。また、そのプラットフォームに参加している企業やネットワークを有効利用することができ、早期に販売、ユーザーからのフィードバックそして改良という流れにつなげられるわけだ。

こうしたオープンソースのものづくりで活躍するのが、プラットフォームを提供する企業や、コミュニティを提供する企業だ。プラットフォームビジネスにはベースとなるベースキット、コミュニティのためのクラウドシステムが必要不可欠だが、最近では、こうしたプラットフォームの提供に各業界のグローバルリーダーが参入し始めている。

例えば以前もご紹介したグーグルやアップルなどの開発キットは、彼らの基本プログラムやセンサーキットを使用することができる。一方、ローカルモーターズやGEなどのクラウドコミュニティは、クラウド上だけにとどまらず、FirstBuildのようにリアルな開発コミュニティも生み出した。

このように、起業家や発明家の製品開発を加速し、より良いものにする環境整備が整いつつある。だが、こうした一見すると多くの人をものづくりの世界に呼び込む動きは、本当に革新的なプロダクトを生み出すことにつながるのだろうか。

まとめ いいプロダクトとは、プロダクトとアートは違う

ものづくりのオープンソース化は、いい製品、価値のある製品を生み出すことにつながるのだろうか。一つ確実なことは、デシタル技術が普及する一昔前の時代とくらべ、圧倒的により良いアイデアを集め、製品開発に繁栄しやすくなっていることは間違いない。

製品を開発するコストや時間ははるかに低コストになっている。物に組み込むことができるアプリケーションやベースキットはパッケージ化され、基本的なパターンを使用するだけでモノをアプリケーションと連動させ新たな機能を組み込むことができる。このような状況を見てみると、ものづくりや、新たな機能を持つ製品を開発する環境は容易になりつつあるように見える。

3Dプリンターが一躍注目をされ、さまざまな人間がものづくりに参加できるような印象を与えているのも、このオープンソースの流れが源流だといえよう。しかし本当にそうなのだろうか。おそらく現実は真逆で、ものづくりを行う環境が整えば整う分、本当に人々に価値を感じてもらい、売れる製品を作り出すことは難しくなるのではないだろうか。

デジタル技術が一定のレベルで提供され、安価に利用できるということは、確かにアイデアを形にしやすい環境を生み出し、製品開発を飛躍的にスピードアップさせる。だが、だからといって、全ての製品が売れるプロダクトではない。単純に他社の製品や機能を真似たものや、それにプラスアルファを加えた程度の物では、もはや価値は無いだろう。

また、その一方で、感性的な部分にしか働きかけないモノは製品ではない。いうなれば、どのように物を作る環境が整い、便利になったとしても、真に人々のニーズに合致し使用意欲を喚起するモノでなければ何の意味もない。肝心なのは、「今の時代において、誰の、どんなことを満たすモノなのか」という根本的な部分がなければならないわけだ。

もしそういう部分がないのであれば、もはやそれは゛プロダクト゛ではなく、安くて質の悪いコピー品か、自己表現の゛アート゛の世界であり、オープンソースとカスタマイズ性を兼ね備えた3Dプリンターという時代をかえる技術も、単なる゛趣味゛の世界の道具に過ぎなくなってしまう。

いい製品、真に人に価値を与えるものづくりは、テクノロジーや道具手動で生まれるものではないし、テクノロジーの進歩はイノベーターに力を与えるに留まるものである。「人に価値を与えるいいものを作る」という行為の本質はもっと別のところだ。

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