ベアリングに最適な50倍の耐摩耗性を持つ3DプリントフィラメントIgus

あらゆる機械製品に不可欠な部品ベアリング

ベアリングはこの世に存在するあらゆる機械製品に不可欠なパーツだ。基本的に機械の原動力になっているのは「回転」だが、この回転を正確に、なめらかに行う役割を果たしているパーツがベアリングだ。

あらゆる機械に使用されることから「機械産業の米」と言われている。回転という物理的現象には必ず発熱や、摩耗というエネルギー減少が起き、摩耗が進めば進むほど回転は鈍り、機械性能が衰えることになる。

その摩耗を防ぐベアリングはまさに縁の下の力持ちのような存在。そのためシンプルな構造ながら要求される性能は極めて高く、どんなに使用しても摩耗しないものでなければならない。今この高度な性能を要求されるベアリングを3Dプリンターで作ろうという試みが行われている。

これまで従来の3Dプリント技術や素材ではベアリングに必要なパーツを作ることは不可能と言われてきていた。しかし、ここに来て新たにベアリングに最適な50倍の耐摩耗性を持つ3Dプリント用フィラメントが登場している。

Igusと言われる世界初となる磨耗専用の3Dプリントフィラメントで、その摩耗性能の驚異的だ。下記のグラフはIgusとその他の素材を比較したグラフだが、驚異的な耐磨耗性を誇っている。さすがに金型による射出成形品よりは劣るが、それに匹敵する性能だ。

摩耗率の比較データ　射出成形に匹敵する性能を誇る

Igus動画

この50倍の耐磨耗性を持つ磨耗専用フィラメントはベアリングの試作やテストに最適だ。

上記で述べたとおり、射出成形に匹敵する摩耗率を誇ることから、新たなベアリングを開発しテストする際、金型を作るよりも遥かにコストが少なくて済む。

金型を作るのに要していた数日感から数週間をわずか数時間に短縮することが可能だし、費用も大幅に削減できる。また設計を微調整し、簡単に修正することができるため、製造現場における工程も大幅に短縮可能だ。

摩耗専用フィラメントIgus

この摩耗専用3DフィラメントIgusは全世界からハイテク素材を集めるグローバルマテリアルライブラリMaterial ConneXionにも登録が決定している。

Material ConneXionはポリマーや金属、ガラス、セラミックス、セメント、炭素繊維など7000以上のあらゆるハイテク素材を収集し、デザイナーと製造に関わる企業、個人に対して情報提供を行っている企業だ。

クライアントにはBMWやアディダスなどの超有名ブランドメーカーから始まり、製造業、各政府機関、デザイン事務所、建築事務所などを誇っている。

ギャラリーはニューヨークや上海、バンコクなど世界8箇所に存在し、東京の南青山にもギャラリーがある。今回登録された摩耗専用3DフィラメントIgusはニューヨーク、ミラノ、上海の3箇所のギャラリーで展示されることになる。

全世界からハイテク素材を集めるグローバルマテリアルライブラリMaterial ConneXion

3Dプリンター用の材料は新たな性能を持つ者が続々と登場してきている。今回ご紹介したIgus耐磨耗フィラメントもこれまで利用できなかったベアリングという分野に新たな革命をもたらすといっていい。

これは何もベアリングに限った事ではないが、試作品を作るための金型製造に要する時間とコストが大幅に削減し、設計図の微修正が簡単に反映することができれば、企業競争力は大いに高まることになる。

まさにそんなイノベーションを与えてくれる素材の開発だといえよう。ちなみに我が国日本はベアリング生産では世界シェアの3分の1を誇り、世界トップクラスの技術をもっている。Igus耐磨耗3Dプリンターで試作品を作るなどより競争力に磨きをかける取り組みをしてもいいだろう。

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