3年後のスマートフォンは折りたためる、グラフェン100%の3Dプリント

折り曲げできる未来のスマートフォン

現代の電子機器の多くは折り曲げたり、丸めたりすることはできない。それは電子機器の心臓部ともいえる基板部分がボード状をしていることが最大の原因と言える。特に現代の電子機器は機能も多機能で、その分それを動かすための電子回路も複雑になっている。例えば一般的に知られる緑色のマザーボードは、1枚に見えるが電子回路が何層にもわたってプリントされている。

こうした機能性を再現する設計上の理由から電子機器のデザインもある程度は制約を受けることになる。多くの電化製品が登場してから、スマートフォンが登場するまで、電化製品は長足の進歩を遂げたが、小型化には成功しても、根本をつかさどる心臓部が固いボード状ということから、折り曲げたり、丸めたりすることはできない。

柔軟性を持つ電化製品の開発にとって、最も期待が寄せられるのがグラフェンだ。グラフェンはたびたびご紹介してきたが、極めて高い導電性を持つ素材、しかも柔軟性に富み高い強度を持つと言われている。そんな未来の新素材として期待が寄せられるグラフェンを、3Dプリントに活かそうという研究開発が各社各国行っている状況だが、本当に折り曲げできるような高い導電性を持つ物体は作れるのだろうか。

プラスチック配合ではないグラフェン100%の意味

グラフェンの3Dプリントに成功しているのは、グラフェン3Dラボが行なう研究開発だ。以前もご紹介したが、導電性のフィラメントを開発しバッテリーの試作品を3Dプリントしている。また、グラフェンの3Dフィラメント専用の3Dプリンターの開発にも着手している。しかし、このグラフェン3Dラボの開発を見てみると、既存の樹脂素材にグラフェンを配合するという開発に過ぎないことがうかがえる。

これでは導電性は再現することができても、グラフェン本来の持つ高い柔軟性や薄くて強靭という特性は全く発揮することができない。未来の折り曲げできるスマートフォンや柔軟性の高い電化製品を開発するためにはグラフェン本来の持つ高い柔軟性を活かした3Dプリントでなければならないだろう。こうした開発が行われる中、異色のグラフェン研究を行なう機関も登場した。

それは韓国の韓国電気技術研究所のナノハイブリッド技術研究センター、通称KERIだ。韓国電気技術研究所が行なうグラフェン3Dプリントの開発は、異色というか、ある意味本来のグラフェンの研究と言えるだろう。それは何の夾雑物、配合物もないグラフェンのみによる3Dプリントの研究開発である。いわゆるピュアグラフェンの3Dプリント研究ともいえるこの開発は100%グラフェンのみで物体を生成する技術だが、KERIによるとその方法を発見し、目下開発に取り組んでいるという。

グラフェン100%のナノプリント

ナノレベルのグラフェン3Dプリント技術の開発

KERIが開発するグラフェン100%の3Dプリントとはどのような方法なのだろうか。それは酸化グラフェンのシートで満たされているマイクロピペットと呼ばれる小さなスポイトを用いる方法で、この小さな化学スポイトからグラフェンを押し出し成形する方法になる。押し出す際、ヒドラジンという物質を加えナノレベルで三次元の物体を生成していくとのことだ。

KERIによると、このナノレベルのグラフェン3Dプリントは多くの産業に対して適用可能で、エレクトロニクス産業に新たなパラダイムをもたらすとしている。その最大のポイントは100%グラフェンで成り立っているということで、これにより高い導電性を保ったまま、薄くて柔軟な物体の3Dプリントが可能になるとのことだ。この技術の商用化は3年間かかるとのこと。

折りたためるスマートフォンや自由に曲がるウェアラブルデバイスの開発につなげられる

まとめ 多くの産業の製品開発を変える

このグラフェン100%のナノレベルの3Dプリント技術の開発は、未来のエレクトロニクス製品に大きな変革をもたらすだろう。それは製品開発がこれまでの電化製品と全く異なる種類のモノが開発可能になるということだ。フレキシブルで折り曲げできる家電製品が可能で、折り畳み式のスマートフォンや自由に曲げられるウェアラブルデバイスを作ることができる。またグラフェンの実用化は未来のエレクトロニクスやハイテクガジェットだけのためのものではない。自動車産業や、航空宇宙産業、科学技術、軍用など、さまざまな製品開発の概念を変えてしまう可能性を秘めている。

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