グラフェンフィラメントで広がる3Dプリントの可能性と課題

By | 2015年8月28日
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素材の開発と適応が3Dプリントの使用を拡大する

データからダイレクトに物体を造形できる3Dプリント技術。製品企画から最終品の製造まで、一貫して行うことができる技術として、その影響力は巨大だ。従来はプロトタイプの製造を目的に開発された3Dプリンターだが、造形スピードや、造形精度の向上により、新たな進化を遂げようとしている。

この製品開発の概念すらも変革してしまう3Dプリンターだが、この変革をもたらすもう一つのファクターが素材の開発と適応だ。とりわけ3Dプリント用樹脂素材の開発と適応は進んでおり、新たな素材が続々と登場している。特にPLA樹脂をベースにした新機能をもつフィラメントが続々と登場しており、これまでソリや耐熱性に弱いとされていたPLA樹脂が全く異なる価値を持ち始めている。

例えば、ブロンズやアイアン、スチールといった金属系の素材や、導電性フィラメントなど、続々と新たな機能をもつ3Dプリント用素材が登場してきている。こうしたPLA樹脂をベースにした新素材の登場は3Dプリンターの使用範囲高めるだけではなく、これまで作ることができなかったプロダクトの開発を可能にするだろう。

本日はその中でもとりわけ注目が集まる新素材、グラフェンコンポジットを配合したPLAフィラメントの使用例をご紹介しよう。

グラフェン 3Dプリントフィラメント

 

現状は簡単な電子回路の3Dプリントが限界

グラフェンフィラメントについては、過去にたびたびご紹介してきたが、その性能は驚異的だといえよう。端的にその特徴を述べれば、最も薄く、最も硬く、高い導電性を持ち、最も強靭で伸長折り曲げ可能といった機能を持つ。こうした機能を活かし、既に3Dプリンターで使用できる開発が行われ、今年の3月にグラフェン3Dプリントラボから3Dプリントフィラメントとして発売が開始された。

過去に電気を通すという特性からバッテリーの3Dプリントが紹介されたが、今回は、その可能性を広げる取り組みとして、直接グラフェン3Dフィラメントで電子回路をプリント、電気を導電し豆電球が付くという実験や、その強度と耐久性を示すオブジェクトのプリントを公開している。

下記の写真は非常にシンプルな導電回路を3Dプリントしたものだ。バッテリーをつながっていない丸の部分にセットすれば電気がとおり、豆電球が点灯するという電気の基本を示す回路と言える。ちなみにグラフェン3Dフィラメントでは、最大電圧は100ミリアンペアで、12ボルトに制限されなければならない。

現状の公開事例では、非常に原始的で簡単な電子回路しか3Dプリントすることができないが、これをベースに新たな可能性が拡大すると言えるだろう。例えばもっと複雑な回路がプリントできるようになれば、デュアルヘッドの3Dプリンターと組み合わせて使用すれば、プラスチックパーツの内部に電子回路を組み込むことが可能になる。

グラフェン 3Dプリントフィラメント

複雑のように見せて、シンプルな電子回路

グラフェン 3Dプリントフィラメント

バッテリーと電球のみのシンプルな回路

ABSやPLAよりも優れた機械的強度を持つ

グラフェンの特性は、前段で述べたとおり、高い導電性を持つという特性以外に、硬くて伸びるといいう強度を持っている。一節には鋼鉄よりも100倍硬く同時に300倍の引張強度を持つとも言われている。実際のグラフェン3Dプリントフィラメントはこれほどの性能を持ってはいないが、既存の一般的なPLA樹脂やABS樹脂のフィラメントよりは機械的に強い強度を持つとされている。

下記は電子回路と同時に公開された、フレームやボルトといったパーツ類だが、通常のフィラメントと比べ、こうした一定の強度を要求される物体を造形するのにもグラフェン3Dフィラメントは有効に働くことを示している。

グラフェン 3Dプリントフィラメント

グラフェンの高い強度がいかされたフィラメント

グラフェン 3Dプリントフィラメント

フレームなどに最適

まとめ 精密性と電子部品の配置、接合が課題

グラフェン3Dフィラメントの利用は一定の強度が要求される物体の造形はともかく、導電性を利用した3Dプリントの利用にはまだまだこれからという側面が強い。というのも、現代の複雑な電子機器は、回路基板も薄く、尚且つ多層化し、電子部品の極小化も驚く程進んでいる。

小さい部品の内部にまで電子回路が描かれ、その精密さと複雑さはまさにミクロレベルにまで及んでいる状況だ。それほど複雑化する電子回路をフィラメントと現状の3Dプリントの精度でそのまま再現することは不可能だし、また電子回路を機能させるためには、電子部品をはんだではんだ付けしなければならない。

更に同時に、電子機器の精度を保つためには、精密性と同時に無数に存在する接合部分の精度も問われる事に成る。例えば1箇所でも接合が適切ではなかった場合には、その箇所だけではなく、その製品そのものが全く機能しなくなる。そのため、グラフェンを導電性回路として使用する場合には、精密性の実現と電子部品の配置、さらには正確な接合をどうするかという課題が残る。

この3つの問題をクリアにすることができれば、電子機器をデータからダイレクトに3Dプリントすることが可能になるかもしれない。

グラフェンの3Dプリント開発についてはこちらもどうぞ

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