Graphene 3D Labがグラフェンを混合した3Dプリント材料を特許出願

グラフェンで一歩先を行くGraphene 3D Lab

Graphene 3D Labは本サイトでもたびたびご紹介してきたが、次世代素材として期待されているグラフェンの3Dプリント材料の研究開発を行っている企業だ。グラフェンの詳しい特性については下記の記事

に詳しく掲載しているのでご参照いただければと思うが、簡単にその特長を言うと世界で最も薄く、最も柔軟性があり、最も強靭で、優れた導電性を持つという点にある。

次世代の様々な電化製品をはじめ自動車、航空機、医療、など様々な産業への使用が期待されている。

例えばグラフェンの特性を生かして電子機器が作られるとしたら、自由に折り曲げ可能なスマートフォンなどが作れるようになるかもしれない。

そんな次世代素材として期待されているグラフェンだが、まだまだ研究開発の途についたばかりで実用のめどはまだ立っていない。

グラフェンを主に材料として製品化する動きはアメリカや中国など製造業に力を入れる各国が取り組んでいる。

その中でも一歩先を行くのがGraphene 3D Labだ。

Graphene 3D Labはグラフェンの材料になる炭素原子を供給するLomiko金属が5万ドルを投資して立ち上げたスピンオフ企業で、新たにグラフェンを配合した3Dプリント用の複合材料の仮特許出願を発表した。

グラフェン3Dプリント材料の特許とは

今回Graphene 3D Labが仮特許出願した素材とはいったいどのようなものなのであろうか。

詳しい詳細は不明だが従来出回っている3Dプリント用のポリマー材料にグラフェンを添加することで、機械的強度と導電性、熱伝導性を向上させるというものだ。

現段階では仮特許で、実用段階までには至っていないが、将来的にはこのグラフェン3Dプリントポリマーを使用することで3Dプリンターで電子デバイスが作れることを可能にするという。

今回の特許出願にあたり、Graphene 3D Labの最高経営責任者Daniel Stolyarov CEOは以下の通りに述べている。

今回の特許出願は私たちのチームの勤勉な努力の結果であるとともに、グラフェンの実用化の道筋を切り開くものです。無理のないコストで、優れた品質を保ったグラフェン混合材料の製造方法を見つけることと、私たちの独自技術が市場で消費者の方々に受け入れられることが重要だと考えています。私たちは一貫した品質とコストが保たれたグラフェンナノプレートを製造するためにLomiko金属から高品質なグラファイトの供給を独占的に受けています。グラフェンによって構成される新たな材料は、天然黒鉛のための新たな市場を開きます。またこの市場は異常な割合で拡大しています。私たちはこの破壊的な技術の開発に参加させていただきます。

下記はGraphene 3D Labが打ち出しているグラフェンの使用用途だ。

グラフェンの研究と使用用途

  • ソーラーパネル:現在のシステムよりも導電性に優れ、安く、軽く、フレキシブルな構造が可能
  • 航空機材料:現在の製造方法よりも強度に優れ、軽い航空機の製造が可能。結果として燃料消費を抑えることが可能
  • 携帯電話:ノキアは携帯電話にグラフェンを使用する可能性を調査している。グラフェンを使用することでより小さく、よりフレキシブルな携帯電話の製造が可能。同時にソーラーパワーを持ち、透明な携帯電話の製造ができるかもしれない。
  • フレキシブルスクリーン:韓国の研究者たちは、グラフェンを何層にも重ねて63センチの幅を生成した。これは電子機器の新たな可能性を開くもので、例えばiPhoneをロール状に丸め、ボールペンのように耳にはさむことができるかもしれない。
  • 義肢製造:現在の義肢よりも軽く、強く、柔軟性に富んだ義肢を作ることができる。また、グラフェンの導電性を生かすことで脳波を使用して動かすことが可能かもしれない。
  • コンピューターチップ:グラフェン研究の第一人者でノーベル物理学賞を受賞したアンドレ・ガイムとコンスタンチン・ノボセロフはグラフェンが電子回路の鍵となる素材としてどのようにシリコンに置き換わるかを実演している。多くの電子機器メーカーのうちに一つIBMはグラフェン導体の実験を行っている。
  • DNAシークエンシング:Oxford Nanopore Technologiesの研究者はグラフェンを使用することで、DNAシークエンシングのプロセスのコストダウンとスピードアップを可能にする研究を行っている。

まとめ

グラフェンの研究と実用にむけての取組はまだまだ始まったばかりだ。

しかし、その使用用途の範囲と実用に組み込まれることの影響は計り知れないものがある。一つの素材が世界や社会構造を変えてしまうことは歴史が証明している。

遠く古代では鉄器が当たり前のように普及することで飛躍的に農業生産高を向上させ、力を持った農民が武士を生んだ。

樹脂の合成技術はプラスチックを生み、日用品、工業品、医療分野など現代社会では様々な用途で幅広く用いられている。

最近の例では日本が誇る炭素繊維が恰好の例と言える。

炭素繊維は軽くて強いといった特性を生かし、航空機、人工衛星、自動車、ゴルフ用シャフト、釣竿、テニスラケットなど様々な分野で既存製品を優れたものに置き換える役割を果たしている。

グラフェンも今現時点では到底信じられないような機能を備えた素材だが、いずれ様々な分野での使用が開始される可能性があり、使用できる範囲もかなりの範囲に及んでいる。

製造において素材はある源流をなすものであることから、一つの素材を抑えることで、あらゆる分野の産業の源流を抑えることが可能になり、経済的価値は計り知れないものがある。

そうした点からも、各国がグラフェンに注力することは国の競争力を高めることに直結している。

グラフェンへの各国や企業の取組を見てみると、国家が、教育機関とR&Dに多額の投資を行い、次代を担う人材と技術の育成に励むことが政策の中で最上位に重要なことなのだと考えさせられる。

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