3Dプリンターとクラウドの負の側面。デザインの価値を落とす可能性

By | 2015年7月28日
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頭を使わない安易なものづくりを促進する危険性

3Dプリンターの発展と浸透によって、製品開発のスピードが飛躍的に向上することとなった。造形精度や造形スピードの向上もさる事ながら、デジタルからダイレクトに物体が生成できる特徴から、アイデアをカタチにする道具としてその真価を発揮し始めている。

しかし、その一方で、ものづくりに対する考え方が誤ったカタチで捉えられる危険性もはらんでいる。例えば、物体を生成する3Dデータが簡単にスキャニングされ、コピーされるようになれば、似たようなデザインの製品がより普及する可能性が高い。モノ余りの現代社会では、既に似たような見た目や機能を持つプロダクトがただでさえ多いのにも関わらずだ。

こうした安易なテクノロジーの使用は、デザインの価値を落としかねないし、より手軽にテクノロジーが使用できれば、頭を使わない、つまりユーザーのことを考えない、ものづくりが増えかねない。他社がヒットしている製品を見れば、その製品の真の価値やコンセプトも考えず、安易に真似る行為を誘発しかねない。

それはユーザーのことを全く考えない儲かり根性しかない間違った技術の使用方法だ。このようにプロダクトデザインで何が大切かを踏まえなければ、ユーザー目線が全く欠如した製品開発が横行する環境を作りかねないだろう。頭を使わない技術の使用は、すなわちゴミを生産するのである。

クラウドとデータ化の浸透で、拡大するデザインの間違った認識

また同時に、3Dデータ化や3Dプリンターで簡単に物体が生成できるようになれば、〝モノが簡単、安くできる゛といった誤った認識を持たれる可能性が高い。多くの人が、プロダクトをアウトプットされた完成形でしか判断することができないため、そのプロダクトがアウトプットされるまでの工程〝なぜこのデザインなのか゛というもっとも重要な部分を考えることなく、デザイン自体があたかも独立したものかのように認識するからだ。

さらには、3Dデータという特性から、インターネットで不特定多数のアイデアを集めやすく、こうした環境に基盤を置いたクラウドソーシングとの連動が、「安くて早くて、たくさんのデザイが集まる」といった誤った認識に拍車をかけることになる。

そもそも「誰の何のためのどんな要望を満たすデザインなのか」というもっとも重要な部分をリアルなコミュニケーションなくしてカタチにすることができるのだろうか。

今のクラウドソーシングの動き、例えばロゴマークの活用方法などで、わずか数万円で何十案も集まるという取り組みを見ているとゾッとする。ロゴマークはその企業の精神性、社会的価値、ソフトパワーを表現した企業活動の根幹に関わる最も重要な部分であるにも関わらず、議論もなく、コミュニケーションを取ることもなく作られていく様はもはやデザインではない。

そこで作られるロゴは、〝安くてたくさん集まったものから選ばれたいいもの゛ではなく〝安くて上っ面だけ格好つけた人の印象に残らない記号゛にしか過ぎない。またこの間違った使い方はもう一つの弊害を生む。前述したとおり人はアウトプットされたものでしか判断しないため、デザインはこの程度の安い値段でできると勘違いするわけだ。

そこで作られたものがデザインではなく、印象に残らない記号にしか過ぎないということすらも知らずに。

正しいクラウドの使い方が必要。リアルと専門家集団の活用が重要

この間違ったデザインの認識は、3Dデータ化と3Dプリンターの普及により、早晩ものづくりの分野にも押し寄せる危険性が高い。例えば一部始まっているが、製品のプロダクトデザインをクラウドソーシングで募集するという手段である。クラウドソーシングという仕組みやクラウドをベースにしたものづくりのとり組み自体は悪いことではない。

最新のテクノロジーを最大限有効活用し、製品開発をより効率化することは重要なことだし、クラウドコミュニティによる新たな製品開発の動きは、企業競争力を強化するものとしてこれからの時代重要な役割を果たす。しかし、優れたテクノロジーもその〝使い方゛や〝評価の仕方゛が間違っていれば、この世に悪のみを生み出すことにつながる。

少なくもと現状の低価格の予算、判断基準が不明確、リアルなコミュニケーション不足といった日本のクラウドソーシングの使い方は間違っている。また、プロダクト開発をクラウド上でそのまま行うなど論外である。そもそもそのプロダクトが何のためのものであり、誰にどんな価値を与えることができるのかという点を、バーチャルのみの世界で行うことは不可能だろう。

だからGEやローカルモーターズが行うクラウドを使った製品開発でもFirstBuildというリアルなコミュニティが存在するし、GEがGrabCADのようなエンジニアコミュニティと共同でアイデア募集をする場合も、判断するメンバーも参加するエンジニアも優れた専門チームで構成される。

そこでは何もわからない担当者の〝安く仕上げてやろう゛や〝楽して集めてやろう゛といったくだらないエンドユーザーの希望と全く関係がない保身根性などは一切介在しない。むしろ欧米のクラウドと3Dプリンターの使い方は、徹底したユーザー目線の上に成り立っているといっていい。

まとめ 何がいいデザインなのかを考える必要がある

デザインという無形の行為は無形であるがゆえに価値を測りにくい部分がある。しかし、ものづくりや表現に関わる仕事をする企業や人は、少なからず「何がいいデザインなのか」ということを考える義務がある。そもそも、プロダクトがアウトプットされる過程ではさまざまな頭の作業が必要だが、こうした緻密な知の作業に時間をかけて行った結果のデザインと、クラウドに丸なげし、自動的に集められたデザインとの違いは認識するべきだ。

この違いに関して一ついえることは、頭を使った作業、すなわち「今の時代において誰の何のためのモノなのか」という価値を考え尽くした後にアウトプットされたデザインの方が、遥かに人々の記憶に〝印象゛を残すということだ。おそらくクラウドに丸なげされたデザインは何の印象も与えない。

それは単なる自己満足の制作にしか過ぎない。ものづくりの現場で、特にプロダクトデザイの現場で、クラウドを活かすのであれば、その使い方、仕組みをもっと考えるべきだ。少なくとも今の単なる丸なげの頭を使わない使い方では、デザインをダメにし、引いては日本全体をダメにすることになる。由々しき問題だ。

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