新たな金属3Dプリンターが登場。高性能な銅パーツを作る3Dプリンター開発

最も汎用性が高くあらゆるものづくりで使用される金属素材。銅

金属の中において、最も多用される素材は銅だ。現代の生活に欠かすことができない機械ではお馴染みの素材。その高い導電性と、金や銀よりも安いといったコストパフォーマンスから、半導体などの電子部品やプリント基板、はんだの材料として、また電気モーターや真空管、導波管などのパーツの素材として多用されている。

その素材としての使用範囲は非常に広範囲で、ある意味最も身近で多用されている金属素材と言えるだろう。

また銅の使用はこうしたエレクトロニクス分野だけに留まるものではない。古代から人類と最も関わりが深い金属で、防水性および防食性、外観の美しさから建築素材としてや家庭用品などさまざまなプロダクトの材料といて使われてきた。こうしたいわゆる人類の文明、産業を支えてきた素材である銅だが、その主な加工方法は一般的な金属加工と余り変わらない。

鋳造や鍛造、板金、圧延といった加工方法が主流であり、また銅単体だと強度が弱く柔らかいため、他の金属との合金化して使用されるケースが多い。

こうした伝統的な製造方法は当たり前の話だが相応の設備が必要で熟練した技術も必要になる。そのような中新たに銅素材に特化したバインダージェット技術の3Dプリンターが登場した。本日はバージニア工科大学機械工学科ドリームベンダー2.0が開発した銅専用金属3Dプリンターをご紹介しよう。

銅専用3Dプリンターの開発

生産性に優れた銅専用の3Dプリンターの開発

金属素材を使用することができる3Dプリンターと一口にいっても今では、いくつかの製造方法が存在する。最も一般的なのが、粉末素材をレーザーで焼き固めるレーザー焼結法で、銅をはじめニッケルやチタン、ステンレスなど多くの金属素材に対応している。

最近では電子ビーム溶解法といった技術も登場している。ただし、こうした高性能なレーザー焼結法などの3Dプリンターは特許が切れたとはいえ、非常に高価で手軽に利用できるものではない。また実は銅素材は金属3Dプリンターの中でも最も正確に動作するのが難しい素材。

今回バージニア工科大学が開発した銅素材の3Dプリンターは、いわば既存の金属3Dプリンターと扱いが難しい銅素材の課題を克服するために開発された製造現場に則った革新的なものといえよう。その手法は銅のパウダーを一層一層噴霧し接着していくバインダージェットという方式を採用している。

最終的な金属パーツとして使用できるようにするためには、噴霧して積層されたパーツを炉に入れて加熱することで完成するというわけだ。このバインダージェット噴射と焼結による造形方法は、従来の金属加工や既存の金属3Dプリンターと比べて、はるかに生産的だが大きな課題が残されているという。

銅パウダーによるバインダージェット方式を採用
銅の高性能金属パーツの生産を目指す

ナノ粒子配合で、高性能な産業用銅パーツの3Dプリント製造を可能にする

このバインダー方式による銅パーツの最大の課題は、十分な強度が得られないということが挙げられる。接着剤による接合と熱による焼結では、一つ一つの銅のパウダーとパウダーの間に空気の小さな層が残ってしまい、伝統的な製造方法で作られた銅パーツよりもはるかに弱い強度になってしまうとのことだ。

しかし、バージニア工科大学はこの課題を克服する手段を既に見つけており、この改良を施せば伝統的製法に劣らない機械的強度と性能、電気伝導性を備える銅パーツの製造が可能になるという。その改良の最大のポイントはパウダーを接着するためのジェット糊にナノ粒子を配合することで、空気の層を埋め高密度にすることが可能になるとのこと。

この銅専用の3Dプリンターの具体的なターゲットは銅の熱伝導率や導電性、複雑な構造用途が求められるエンジニアやデザイナーを対象としており、5年以内に産業用途として広く実用化できることを目指す予定だ。

粒子と粒子の間の空気
ナノ粒子を配合し高密度高精細を目指す

まとめ 精密さと高密度の完成に期待

このバージニア工科大学機械工学科が開発する高性能銅パーツの3Dプリンターが完成すれば、さまざまな製造現場に影響を与えるかもしれない。冒頭で述べたとおり、銅は古代からありとあらゆる分野に使用されてきた金属素材。現代の電子機器にも至る所に使用され必須の素材と言える。

現在はまだ改良実験中ということもあるが、3Dプリンターで精密で高密度な銅パーツが作られれば革新的だ。一概に3Dプリントやダイレクト製造といっても、その生成される物体の密度や精度が伴わなければクオリティの高いものづくりを行うことはできない。接合や結合が粗ければそれだけ故障や不具合を引き起こしやすいのは、何も電気を使ったプロダクトだけではない。

密度や精度という観点はものづくりを行う〝品質゛と〝安全性゛という観点からは必須なのだ。この銅パーツの3Dプリンターは今後の開発状況にも注目したいところだ。

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