セラミックの高性能3DプリンターADMAFLEX 130

最も古く、同時に最先端。進化するセラミック製法

世界で最も古く、最も新しい素材であるセラミック。人類の歴史の初期から使用され、現代でもハイテク素材としてあらゆる分野で使用されている素材だ。プラスチックや金属とともに現代のものづくりにはなくてはならない存在で、使用される分野もエレクトロニクスからエネルギー、医療と幅広い。

古くは土器として使用され、現在では太陽電池や燃料電池から、コンデンサー、光ファイバー、人工骨、内視鏡、安全ガラス、などあらゆるものに使用されている。その根本は原子を焼結して結合された結晶であり、さまざまな原子の配合であらゆる種類を作ることができる。耐火材や研磨剤などで使用される炭化ケイ素や、センサーなどの材料にもなるチタン酸ジルコン酸鉛、燃料電池や歯科治療材として注目されるジルコニアなど、原子の種類においてさまざまだ。

そんなセラミックだが、実は製法は非常に多岐に渡っており、同時に進化もしている。基本的にはその語源(セラミックスとはサンスクリプト語で燃やすこと)が示す通り高温で焼き固めることだが、原料を焼き固める前に型にいれて成形する方法が一般的である。ろくろ成形の用に単純な土器をつくるような製法であれば少量生産が可能だが、通常は金型による大量生産が基本であり、樹脂素材と混ぜ合わせた射出成形なども多く用いられている。

そんなセラミック素材の大量生産に対しても3Dプリント技術は新たな動きをもたらしつつある。本日ご紹介するセラミックの高性能3DプリンターADMAFLEX 130もそのうちの一つ。デジタルデータからダイレクトにセラミックの物体を成形することが可能であることから、約1万から1万5千ほどのロットであれば、金型を使って成形するよりも経済的に利用することができる。本日は寸法精度±0.3パーセントを誇るセラミックの高性能3DプリンターADMAFLEX 130をご紹介しよう。

ジルコニア粉末配合の液体樹脂による光造形(DLP)

セラミックの高性能3DプリンターADMAFLEX 130を開発しているのは、オランダで25年ものセラミック製造の経験を持つ企業Admatec社だ。Admatec社はセラミックの3Dプリント開発は既に4年前から取り組んでおり、今回発表された新機種ADMAFLEX 130は、彼らの新たなフラッグシップモデルと言える存在。

本格的な工業用グレードのセラミックパーツを製造することが可能で、金型による大量生産に寄らずとも、オンデマンドで小ロット生産が可能になる。

その根本的な技術はDLP光造形で、エポキシ樹脂ベースの光造形用樹脂をベースに、セラミック粉末を配合したフォトポリマーの混合物になる。例えば、デスクトップの光造形3DプリンターFormlabs社のForm2などは、セラミック素材のレジンを開発している。

因みに通常の光造形3Dプリンターは、上記のエポキシ樹脂のほかに、アクリル樹脂ポリウレタンなどをベースにした紫外線硬化性樹脂が使用される。

冒頭でご紹介した通りセラミックスはさまざまな種類の原子が存在するが、このADMAFLEX 130で使用することができるセラミック粉末は、酸化ジルコニウムや酸化アルミニウム、溶融シリカ材料などだ。酸化ジルコニウムはジルコニアのことで燃料電池や酸素センサ、歯科治療材などの原料として知られる。

また酸化アルミニウムは高硬度・高融点が特長の素材で、研磨剤などでお馴染みの素材。ADMAFLEX 130はこうしたセラミックス粉末を配合した樹脂素材で高性能なセラミックパーツを生成することができる。詳しいスペックは公開されていなが、前回のモデルとなるADMAFLEX 2.0では寸法精度が±0.3パーセント、表面仕上げは1ミクロのRa値(粗さの値)を実現していることから少なくとも同等かそれ以上であると考えられる。発売は2016年9月予定で価格は86,000ドル。

ジルコニアや酸化アルミニウムなどのセラミック粉末を配合。
光造形(DLP)で高精度に造形できる。

ADMAFLEX 130動画

セラミック3Dプリンターの用途拡大。医療からマイクロリアクターまで

今回のフラッグシップモデルのリリースで、Admatec社はより幅広い分野でセラミックパーツのダイレクト製造が可能になると発表している。冒頭で述べたように、セラミックはあらゆる分野の工業用材料として使用されているため、金型ではなくオンデマンドにデータからつくることが可能になれば、その影響は大きいと言えるだろう。

ここではADMAFLEX 130で作ることができる主要な用途についてご紹介しよう。基本的に3Dプリンターの用途として考えられるプロトタイプは当然のことながら、ジルコニア粉末を配合したことにより、医療用での使用が注目される。主な医療用途として考えられるのが歯冠やコーティング、ブリッジなどの差し歯のダイレクト製造である。

またジルコニアは電気絶縁性と最も高い強度と靭性をもったセラミックスとして内視鏡部品の製造にも使用されるが、ADMAFLEX 130でもこうした医療用機器の3Dプリントに対応しているという。それ以外にもマイクロリアクターの3Dプリントや、インベストメント鋳造、ジュエリー製造にも利用が可能とのこと。光造形の長所であるスピードと細かい造形が、セラミック配合材料との相性によりさまざまな分野への用途の拡大をもたらしそうだ。

セラミックの高性能パーツがオンデマンドで生産可能
高精細パーツで多様な分野に利用ができる。

まとめ セラミックの製品開発やものづくりが加速する

3Dプリント技術は今や工業製品を生成するほとんどの素材に対応しつつある。プラスチック、金属、そして今回ご紹介したセラミックと。中でもセラミックは最も多様な性質を持ち、その市場規模も年々規模を拡大しつつある。また、素材として使用される分野も多岐に渡っており、機械加工、エネルギー、日用品、電気通信、医療、建築、自動車、航空宇宙、化学とあらゆる業界に及ぶ。そのためADMAFLEX 130のようなセラミックの3Dプリンターが普及することで、より製品開発やものづくりの多様性が発揮しやすくなるのだろう。

光造形の原理と仕組み、種類についてはこちらをどうぞ

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