カーボンナノチューブの3Dプリンター用フィラメント

By | 2016年5月9日
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デスクトップのFDM 3Dプリンターで高性能な造形を

FDM(熱溶解積層法)の特許切れとともに、フィラメント材料の開発が盛んになりつつある。FDM(熱溶解積層法)3Dプリンターの最大のメリットの一つは、これまで金型で使用されていたプラスチック素材を、そのまま扱うことができるという点が大きいだろう。工業製品の筐体や治具などで多用されるABS樹脂を始め、流通量が多いポリエステル系のポリエチレンテレフタレート(PET)、さらにはエンジニアリングプラスチックとして高い耐衝撃性を持つポリカーボネートまでさまざまな熱可塑性樹脂がフィラメント化されつつある。

基本的にこうしたフィラメント開発の背景には、加熱して柔らかくなり、冷却して固まるという特性を持つ樹脂素材であれば3Dプリンター用の材料として転用がしやすいのが一因である。金型で使用されていた熱可塑性樹脂のフィラメント化は、ものづくりの高速化と、多様化を加速させることに繋がるが、その一方で、FDM 3Dプリンタの種類によっては、造形された精度や強度は金型で作られたものよりも劣るのが現状のところである。

例えば、FDM(熱溶解積層法)の開発元であるストラタシスのような高性能機種であれば、単純に積層するだけではなくオーブンで加熱し樹脂素材の接合をより緊密に安定させることができるが、特許切れによって続々と登場する安価なデスクトップモデルはこうした機能は付与されていない。

そのためせっかくデジタルデータからオンデマンドで作ることが可能となっても、その精度はモックアップの域を出ないのが現状だといえる。このような状況の中、安価なデスクトップモデルの3Dプリンターをより使いやすくするために、素材のレベルを向上させる方向からアプローチする材料メーカーが登場している。本日ご紹介するカーボンナノチューブを配合した3Dプリンターフィラメントもそんな素材の一つだ。より精密により安定した3Dプリントをもたらす高性能フィラメントをご紹介しよう。

カーボンナノチューブ 3Dプリンター 材料 フィラメント

カーボンナノチューブ配合の機能とは

今回ご紹介するカーボンナノチューブ配合のフィラメントを開発したのは、以前「低価格3Dプリンターの3つの問題点を解決する企業アバンテ・テクノロジー」という記事でご紹介した企業、アバンテ・テクノロジーだ。

アバンテ・テクノロジーはフィラメント開発、造形後の後処理、STLデータの破損修復という3つの切り口からデスクトップタイプの3Dプリターの性能向上を図っている会社だが、今回ご紹介するのはフィラメント開発の部分。既に彼らは温度や湿度などの影響を受けにくく、積層造形を安定させるFilaOneシリーズをリリースしているが、今回登場したのは新たにカーボンナノチューブが配合された高性能フィラメントだ。

カーボンナノチューブとは、グラフェンシートによって作られるナノメートル単位の炭素によるチューブ状の同素体。その特性はアルミニウムの半分の軽さで、鋼鉄の20倍の強度を持つ。軽くてしなやかな弾力性を持つ素材で、単体で使用されるというよりは複合材としてその威力を発揮する。

最近では橋梁用ケーブルからスポーツ用品、自動車や航空機への利用が開始されている。今回アバンテ・テクノロジーが開発したフィラメントFilaOne GRAYはこのカーボンナノチューブを配合することで、デスクトップタイプのFDM 3Dプリンターで生成される物体に5つの特長的な機能を搭載することに成功した。

カーボンナノチューブ配合の3DプリンターフィラメントFilaOne GRAYの特性

  • 機械的強度:高い機械的強度を持つ。ABS樹脂よりも48パーセントも高い強度。
  • 高弾性:しなやかで強い弾性を持つ。造形されたパーツは曲げたりすることが可能。亀裂やひび割れなどがなく曲がる。
  • 耐薬品性:高い耐薬品性を持つ。酸や苛性化学物質に耐性がある。
  • 疎水性:高い疎水性を持ち、水をはじく機能を持ち湿度などの影響を受けにくい。
  • 安全性:3Dプリント時における毒性やガス臭がしない。
カーボンナノチューブ

カーボンナノチューブの構造。軽量で高強度

デスクトップ3Dプリンターでハイエンド並みの造形を目指す

このカーボンナノチューブ配合の3Dプリンターフィラメント、FilaOne GRAYは、高い機械的強度と、驚くべき高弾性によって、さまざまな物体を作り出すことができる。下記はFilaOne GRAYによって造形されたパーツの動画だが、折り曲げても元に戻るしなやかさや、ネジを入れ込んでも摩耗しない高強度が示されている。この機能によって、デスクトップタイプのFDM 3Dプリンターでも機能性モデルや、パーツごとのアッセンブリーも可能なパーツ製造が可能になる。

また、カーボンナノチューブの特性の一つでもある軽量化が生かされており、ABSやナイロン、ポリカーボネートなどのプラスチック素材よりも軽いパーツを生成できる。つくることができる種類は機能性パーツを始め、ドローンや航空宇宙産業用のパーツ、治具や工具、耐酸性が求められるパーツ、蝶番などが3Dプリントできるとしている。

これによりアバンテ・テクノロジーが目指す先は、このFilaOne GRAYを使用することにより、 5万ドル以上の高性能3Dプリンターと同等の性能までデスクトップタイプのFDM 3Dプリンターを近づけることである。

カーボンナノチューブ配合の3DプリンターフィラメントFilaOne GRAY動画

カーボンナノチューブ 3Dプリンター 材料 フィラメント

折り曲げ可能な高弾性のパーツ製造が可能に。

カーボンナノチューブ 3Dプリンター 材料 フィラメント

ネジ回しが可能な高耐久、高強度のパーツも。

カーボンナノチューブ 3Dプリンター 材料 フィラメント

アッセンブリーパーツの組立もできる。

カーボンナノチューブ 3Dプリンター 材料 フィラメント

物性比較。ABS樹脂やナイロンよりも軽く、高強度。

まとめ 着々と進むダイレクト製造への道

3Dプリンターの製法特許が失効することで、新たな技術、製法、素材が続々と登場しつつある。こうした観点から見ると、3Dプリント技術の進化は、まだまだ発展の途についたばかりだ。現在の廉価版の3Dプリンターの造形精度はプロトタイプやモックアップの域を出ないのが現状であるが今後更に素材が多角化し、より高精度な造形が可能になるだろう。その変化は静かに着々とものづくりの分野に浸透し、気づくと劇的に変わった状況が出現することになるのかもしれない。3Dプリント技術と素材の開発は、そんな可能性を秘めた分野だといえよう。

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