射出成形なみのハイクオリティな仕上がりを高速3DプリントCarbon3D

従来の3Dプリンターの概念を変えるCarbon3Dプリンター

ここ数年、新たに登場する3Dプリンターの多くは、既に特許切れになった3つの製法の廉価版がほとんどだ。非常に大まかな評価をすると、ベースとなるFDM(熱溶解積層法)、DLP、SLA(光造形)、SLS(レーザー焼結)をもとに、多少の変更や特性が加えられたモノに過ぎない。

それは圧倒的な低価格か、素材の多様化、プリントスピードと精度を改良したものに分類される。しかし、本日ご紹介するCarbon3Dプリンターは、こうした既存の製法特許をベースに驚くべき進化を遂げた3Dプリンターだと言えよう。

紫外線を照射し、熱硬化性樹脂の代表でもある液体のエポキシ樹脂アクリル樹脂ポリウレタンなどをベースにした紫外線硬化性樹脂を固める光造形技術を使用しているが、Carbon3Dプリンター独自の技術を加えることで、これまでの3Dプリンターの概念を超える、新たな領域を生み出している。一言で表現するならば、射出成形なみの高精細で、これまでの3Dプリンターの100倍のスピードで製造できるというマシーンだ。

射出成形とは言うまでもなく、現代のあらゆる製品に使用されているプラスチック成形の王様だが、その特徴は、高圧力で金型内に樹脂を重点することから、ハイレベルなクオリティのプラスチック製品を一気に量産することができる。いわば単品のカスタマイズである3Dプリンターと常に対比で持ち出される、金型成形の代表とも言えるだろう。

しかし、Carbon3Dプリンターは、射出成形なみで尚且つ、1個単位でカスタマイズしたプラスチック製品を作れるというわけだ。

Carbon3Dプリンター動画

積層しない製法、CLIP製法とは

Carbon3Dプリンターは、外見上は、一般的な光造形3Dプリンターと何ら変わることはない。それではどのような点が光造形3Dプリンターと異なるのだろうか。そこにはCarbon3Dプリンターの核となる技術CLIP製法に集約されるといっていい。従来の光造形技術は、液体状の樹脂に、紫外線を照射し固めた層を何層にも積み上げて形状化する技術。

しかしCLIP製法は、液体樹脂のプール内で固形化することができる技術。それによって「積層」する必要がなく、3Dプリンターの一般的な特徴である層の継ぎ目が全くなくなるというわけだ。

このCLIP製法の鍵となるのが酸素をコントロールするCarbon3Dプリントの技術。固形化するための紫外線を阻害するのが酸素だが、UV硬化樹脂のリザーバに酸素透過窓を介して光を投射することで、この製法が可能になる。Carbon3Dの表現では、巨大な酸素と光を通すコンタクトレンズが心臓部に設置されておりこれによって、液体樹脂を固めるというわけだ。

CLIP製法
CLIP製法

樹脂プール内で造形するCLIP技術動画

射出成形なみの美しい仕上がりと、生産性の高さ

この製法が優れている点は、二つあり、第一が既に述べてきたような射出成形なみの高精細を実現できるという点である。下記は従来の3Dプリント技術とCLIP技術によって作られた物体の表面を130倍の電子顕微鏡で撮影したもの。3Dプリントで作られた物体の表面が積層化されており、尚且つ表面にザラザラとした粗が散らばっているのがわかるだろう。

しかしCLIP技術でつくられた物体の表面は均一でむらがない。これが金型内に高圧力で樹脂が重点されることでむらのない仕上がりができる射出成形と同レベルと言われる所以だ。

もう一点、このCLIP製法の優れた点は、積層することがないため、従来の光造形3Dプリンターのようにプラットフォームの移動と停止といった動作が全く必要としない。これによってスムーズに造形することができるわけだ。

ちなみに下記はCarbon3Dプリンターが発表している造形時間の比較表だ。Polyjet、SLS、SLAで直径51mmの複雑な物体の製造時間の比較表。SLAが11時間30分、SLSが3時間半、Polyjetが3時間、なんとCLIPは6.3分という驚くべき短さだ。

一般的な3Dプリンターの表面とCLIP製法の表面
電子顕微鏡での比較
なめらかな仕上がり
時間も圧倒的に短縮
一見すると光造形と変わらない

この新たなCLIP製法を開発したCarbon3Dプリンターは、2013年に設立された企業。最も古いベンチャーキャピタル企業セコイア・キャピタルから資金調達を受けており、これまでに4100万ドルの調達に成功している。このCarbon3Dを設立したジョゼフ·M·デシモンCEOは、300以上の科学論文を発表し、150以上もの特許を持つ化学者で、医学研究所、全米科学アカデミーと全米工学アカデミーの三つの著名なアカデミーから選出された数少ない研究者の一人だ。

まとめ プロトタイプから最終品の道へ

この新たなCarbon3Dプリンターは、CLIP製法によって、これまでの3Dプリンターにはない二つの特性を出すことに成功している。それが、射出成形なみの高精細と量産性である。このことは、これまでの3Dプリンターの主な役割であったプロトタイプの製造という枠を拡大し、最終品の製造への道をさらに開くことにつながるだろう。

このCarbon3Dでは射出成形との比較は行っていないが、もし同等のクオリティを再現することが可能になれば、最終品がダイレクトに製造することが可能になり、多くの人々のアイデアをものづくりに取り込むことが出来るだろう。また、生産スピードの向上は、小規模なメイカーを生み出すことに繋がるかもしれない。一点、材料のバリエーションがどれだけ増えるか、微妙な温度コントロールを行うことで、表面仕上げにバリエーションを出せる金型のクオリティにどれほど追いつけるかが今後の課題だろう。

光造形の原理と仕組み、種類についてはこちらをどうぞ

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