3Dプリント製造に安全認定!受注型から提案型へシフトするBAEシステムズ

146地域のジェット機部品を3Dプリント製造

BAEシステムズはイギリスの代表的な航空宇宙・防衛企業だ。以前にもご紹介したが、イギリスの国防産業を代表する企業で、主に戦闘機や戦車といった兵器を製造している。

前回はBAEシステムズが戦闘機の製造に使用するプラスチック部品を3Dプリンターで製造することで莫大なコストを削減している記事をご紹介したが、今回はジェット機用のパーツに3Dプリンターを本格使用し始めたとのことだ。

実はBAEシステムズは兵器類を作るだけではなく、民間のジェット旅客機のOEM製造も行っている企業で、既に146地域のジェット機用のプラスチック部品も製造している状況。

主に製造している部品のひとつとしてプラスチック製の窓パイプを作っているが、従来の金型を作って量産する方法から3Dプリンターに切り替えることでコストを60%削減することに成功している。

このコスト削減は純粋な量産に関わるコストで、これ以外に新しい金型を作る費用14,000ポンド(約240万円)も削減されたとのことだ。もちろん製造時間の大幅な短縮も可能にしている。

しかもこの新たな製造方法において欧州航空安全機関から認証を受けている。

欧州航空安全機関は、ドイツに本部をもつヨーロッパにおける民間航空分野の安全認証を行う機関。部品製造に関する安全、保守に関わる認証を出している機関だ。

3Dプリント技術は試作品を作るためのものとして使用されてきたが、量産に使用されはじめてからは、一部製品のクオリティに疑問視する声も出ていたところ。

しかし、BAEは欧州航空安全機関から正規の安全認証を得ることで、品質がなんら問題ないことを発表している。

プラスチックの窓パイプ

下請けから提案型企業へシフトするBAE

最も画期的なのは、BAEシステムズが3Dプリント技術を製造ラインに導入することで、従来の下請け的なOEM供給会社ではなくなったとのことだ。

すべての航空機のパーツ類を3DCADデータと3Dプリント技術によって、企画・提案・製造ができるソリューション・プロバイダーとしての位置づけにシフトしつつあるという。

仕様に合わせた言われた通りの製品を作るのではなく、3DCAD技術と3Dプリンターで、従来にはない軽量化やコスト削減が可能になるパーツ類の提案ができるという。

そのような業態をシフトさせる点についても欧州航空安全機関から正規の安全認証を得たことは大きな意味を持っているだろう。BAEは窓パイプの3Dプリント製造におけるコスト削減は同社の今後のビジネス展開において小さな一歩に過ぎないと考えている。

この方法論は全ての航空機パーツに当てはめて考えられることで、顧客に最適なパーツ提案と従来にはない迅速な提案、そして、在庫不要からくる小ロット生産といったメリットは、もはやOEMとしての役割の範疇を超えはじめるだろう。

まとめ

BAEシステムズは従業員数93,500人を抱えるイギリスの代表的企業だが、3Dプリント技術を導入することで顧客の製造にかかわる課題を解決する提案型のビジネスにシフトしつつある。こうした企業体質の変化は、何も大企業だから可能だったというわけではない。

むしろ大企業ほど自社の体質や体制を変えることが難しいことの方が多い。確かに大量の3Dプリンターを導入するという大規模設備投資は中小企業では難しいかもしれない。しかし、今では自社で導入しなくてもキンコーズやリスマチックといった比較的安価で利用できる3Dプリントサービスなどもある。

また、これからは3Dプリンターがより安価に普及してくる時代だ。製品やパーツの問題を突き詰めて考え、改良を重ねることが従来よりもはるかにやりやすくなっていることは間違いない。そんなことからも3Dプリント技術を導入することのメリットは何も大企業だけのものではないのだ。

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