3Dプリンター業界におけるGoogleの地位を狙うAutodesk、専用OS「スパーク」を発表

消費者向け3Dプリンター市場を制するのは誰だ

3Dプリンター市場は毎年すさまじい勢いで成長している。

2018年度までの年間平均成長率は約50%に上り、それ以降も拡大し続けることが見込まれる。その市場拡大を押し上げる背景には、一般家庭向けの普及が浸透するという予測があるためだ。

第二の産業革命といわれ、これほど騒がれていても、3Dプリンターの市場はまだ黎明期にある。低価格帯に分類される3Dプリンターの市場シェアは、ほぼ数社によって占有されている状態だが、今後大手メーカーや異業種からの参入により、市場勢力図が塗り替わる可能性は十分秘めている。

現在はストラタシス傘下のMakerBot、3Dsystemsが提供するCubeシリーズ、組み立て式のRepRapなどが、主要な市場構成員だが、キックスターターなどを見ると次々と新規で参入する企業が多い。

かたや、コンピュータやプリンターなどコンピュータ関連製品の巨人ヒューレット・パッカードの3Dプリンター市場への参入も取りざたされている状況だ。

しかし、全く意識もされていなかった思わぬ伏兵が登場しそうである。

それはCADソフトウェアで世界トップを走るAutodeskだ。 本日はAutodeskの消費者向け3Dプリンター市場を狙う新たな動きをご紹介します。

3DプリンターのAndroidに相当するOS「スパーク」

Autodeskの存在は、建築やプロダクト製造の設計の現場に関わる人であれば知らない人はいないだろう。

CADが一般的ではなかった1980年代からつづくCADソフトウェアのグローバルリーダーだ。 既に長年にわたってこの分野におけるトップの地位を歩んできたソフトウェア会社だが、今回3Dプリンターに関する新たな発表を行った。

その発表内容はまさにスマートフォン市場におけるGoogleのAndroidとGoogle Nezxusを彷彿とさせるものであった。

今回Autodeskが発表したのは二つの画期的な発表で、一つは、「スパーク」と呼ばれる3Dプリンターのプラットフォーム。

一言でいうと、3DプリンターのOSだ。Autodeskによると「スパーク」はスマートフォンのOSであるAndroidや、パソコンのOSであるwindowsに該当するもの。

Autodeskの発表によれば、この「スパーク」は材料科学者、ハードウェアメーカー、製品設計者、およびソフトウェア開発者のための3Dプリントプロセスを簡素化するためのオープンソースのプラットフォームで、GoogleのAndroidに例えている。

GoogleのAndroidがスマートフォンやタブレット端末におけるプラットフォームであるのと同様、「スパーク」は3Dプリンターのための専用OSという位置づけだ。

Autodeskはこの「スパーク」を3Dプリンターのための汎用オペレーティングシステムとして、デジタル情報と3Dプリント技術を効率的な方法で連動させ、印刷物の可視化を非常に容易にすることを目指している。

「スパーク」普及のためのオープンソースの3Dプリンターも同時発表

またAutodeskはこの3DプリンターのOSともいえる「スパーク」以外に、フラッグシップモデルとなる消費者向けの3Dプリンターを同時発表した。

まるでGoogleがAndroid端末のフラッグシップモデルであるGoogle Nexusを発表したように。

しかも今回Autodeskが同時発表した3Dプリンターは、Google Nexusと同様オープンソースになるとのこと。

つまりユーザーが自分で改造したり、発展させたりすることができる仕組みだ。 性能は一般的な低価格帯の3Dプリンターの大半が占めるFDM方式ではなく、液状のエポキシ樹脂アクリル樹脂をベースにした紫外線硬化性樹脂に紫外線を照射し硬化させる光造形による製法を採用している。

デスクトップタイプの光造形3DプリンターではFormlabs社のForm2がSLAタイプの光造形3Dプリンターとして人気を集めている。

SLAによるプラスチック製造は液体プラスチックから物体を生成するため、一般的なFDM方式と比べ、造形物が滑らかで美しいのが特長。 ちなみにこの3Dプリンターは価格は未定だが5,000ドル前後で提供されるとのこと。

Autodeskが発表したオープンソースの3Dプリンター

液体プラスチックにより滑らかな仕上がり

今回の一連の発表でAutodeskのCEOカール氏は以下のように述べている。

「スパーク」は興味を持っているハードウェアメーカーやすべての人々に開放され、自由にライセンスが可能になります。当社の3Dプリンターも同様です。

3Dプリンターの設計はさらなる発展と実験を可能にするために公表されます。また、3Dプリンターは我々が他のユーザーによって作製されるさまざまな材料を、使用できるようになります。

私たちは、多くの新素材が使用されることを楽しみにしています。 世界はまさに、3Dプリント技術の可能性を認識し始めています。

我々が提供する「スパーク」によって、より多くの人々がそこに参画し、彼らの設計と製造プロセスが3Dプリンターに組み込まれることになると思っています。

今後数ヶ月間、私たちは、現在および将来の3Dプリンターと「スパーク·プラットフォーム」を統合するために、ハードウェアメーカーと業務に入ります。「スパーク」と当社の3Dプリンターの両方は、今年後半に利用できるようになります。

まとめ ‐3DプリンターにおけるGoogleとマイクロソフトが生まれる可能性-

スマートフォンの世界シェアにおいて、Androidのシェアは2013年度で81.9%にも上る。

またタブレット端末では67%だ(出典:カートナーwikipedia引用)。 一方で、パソコンの世界ではマイクロソフトのwindowsが90%近いシェアを誇っている。

Googleとマイクロソフトはソフトウェアに立脚することで、ハードとソフトは別個のものとして考えた結果、世界で圧倒的なシェアを築いてきたという歴史がある。

一方でアップルのスティーブ・ジョブスは最後までソフトとハードは一体で、連動していなければならないという考えであった。

これは製品開発のコンセプトをどこに立脚させるかという違いに他ならないが、市場シェアという点から見ると、汎用性が高いOSを開発し、あらゆるハードに導入するという方法が最も適切な方法だ。

今回Autodeskは「スパーク」を3Dプリンターのオペレーティングシステムとして位置づけ、かつてGoogleやマイクロソフトがとった戦略と同じ方法を3Dプリンターでとろうとしている。 この考えはソフトウェア会社であるAutodeskだからこそできる方法なのかもしれない。

いまだ3DプリンターのOSと言われる「スパーク」はその全貌を明らかにしてはいないが、その内容次第では、今後拡大する3Dプリンター市場を制するのはAutodeskなのかもしれない。

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