6軸のFDM 3Dプリンター登場。専用エンプラと高性能造形で最終品を作る

ロボット技術を導入し、高速・高精度な6軸3Dプリントを実現

3Dプリンターの特許切れは、単なる廉価版3Dプリンターを世に送り出すといった普及促進だけではなく、新たな3Dプリンターの開発を生み出す土壌を形成した。とりわけ開発が盛んなのが熱可塑性樹脂を積層して造形するFDM 3Dプリンターの分野で、さまざまなタイプのFDM 3Dプリンターが登場している。

中でもFDM 3Dプリンターの開発で注目すべき点はフィラメント材料と一体となった3Dプリンターの開発である。というのも現在の廉価版のFDM 3Dプリンターで使用できる材料と精度はあくまでもプロトタイプを作れるというレベルに過ぎず、使用できるフィラメント材料も限られているのが現状だからである。

FDMテクノロジーを開発したストラタシスの高性能プリンターであれば、最終品の製造にも使用することができるクオリティを持ち、使用できる材料もULTEMやポリカーボネートといったエンジニアリング・プラスチックが使うことが可能だ。しかし、多くの廉価版のFDM 3Dプリンターで作ることができる精度や材料は、試作品の域を出るものではない。

だが、本日ご紹介するArevo Labsの6軸の加工を可能にするFDM 3Dプリンターは、廉価版のFDM 3Dプリンターの新たな可能性を開くものかも知れない。

水平移動のFDMとの違い。6軸の堆積で強度と表面品質を向上

Arevo Labsは、以前もご紹介したシリコンバレーのスタートアップ企業だ。昨年2014年の3月の時点では、炭素繊維とカーボンナノチューブで補強された高性能な4種類のフィラメントの3Dプリンターを開発中であったが、今回その新型がリリースされることとなった。彼らが開発した新型3Dプリンターは、一般的なFDM 3Dプリンターとは違い、6軸加工を可能にするというもの。

通常のFDM 3Dプリンターは縦方向に水平に動きながら積層するという動きだが、Arevo LabsはFDM 3DプリンターにABBロボティクスの高度なロボットシステムを導入、任意の角度から積層し3Dプリントすることが可能となった。このRAMプラットフォームと呼ばれる6軸のFDM 3Dプリンターは、かねてから同社が扱う炭素繊維強化ポリマーを最先端の熱管理技術によって堆積可能で、従来廉価版のFDM 3Dプリンターでは不可能であった、航空宇宙、防衛産業や工業用などのハイグレードなパーツ製造ができる。

一般的な水平移動しかしないFDM 3Dプリンターとは違い、6軸で任意の方向からノズルを動かし、堆積することができるため、水平処理のみでは不十分であった強度を補うことができ、尚且つ表面品質もはるかに向上させることができる。これにより最終品レベルのパーツ製造が可能となっている。

6軸の動きに対応。任意の方向から堆積できる

専用解析ソフトウェアでパーツ強度を最適化。強度を大幅に向上

また、プリント速度も迅速で、速く、正確に複雑な複合熱可塑性部品を印刷する機能を有している。下記はこの6軸FDM 3Dプリンターの動画だが、複雑な6軸の堆積を可能とするために、ABBロボディクスIRB120というロボットアームと専用解析ソフトウェアが使用されている。

ちなみにABBロボディクスは全世界にロボット技術を提供するこの分野のグローバルリーダーで、ABBロボディクスIRB120は最小のロボットだ。この6軸ノズルを動かす専用ソフトウェアでは、複雑な堆積命令を処理し、同時に事前検証部分をチェック、その後最適化が必要な箇所を正確にシミュレートし確実で精度の高い3Dプリントを可能にする機能を持つ。

また、Arevo Labsが開発したソフトウェアでは3Dパスツールによって、3Dプリントの有限要素を解析し、機械的・熱的性能をあらかじめ予測することで、事前最適化でパーツの強度を大幅に増幅させることができる。下記のブラケットの最適化動画では強度を従来のFDMよりも47%も向上させることに成功している。

専用ソフトウェアで解析

造形サイズは1立法センチから8平方メートルの範囲まで対応

このようにArevo LabsのRAMプラットフォームは、ロボット技術を導入することで高速・高精度な造形を可能にしているが、同時にパーツ設計と製造の可能性の幅を拡大している。なんとその造形サイズの幅は1000立法ミリメートルから、8立法メートルにまで及ぶ。ちなみに1000立法ミリメートルとはセンチに換算すると1立法センチメートルに相当する。いわば極小単位から8立法メートルの範囲に至るサイズをこの、6軸の3Dプリンターでは構築することが可能というわけだ。

最終品レベルを造形できる

まとめ 3種類のエンプラで高精度に造形。3Dプリントサービスも開始

Arevo Labsが開発する材料は3種5つのラインナップになる。金属の代替として使用され軽量、優れた強度、非腐食性を有するポリアリールエーテルケトン系のQuantevo。250℃の環境下においても耐疲労性に優れ、高性能なエンジニアリンググレードのポリエーテルエーテルケトン系のKatevo。

更にはバランスのとれた強度と剛性をもち、優れた表面仕上げを持つポリアクリルアミド系のXanevoの3種類だ。この3種類の素材に、それぞれ炭素繊維やガラス繊維、カーボンナノチューブを配合したパターンが加わり5つのラインナップを揃えている。

この高い性能を持つ素材を6軸3Dプリントと専用解析ソフトウェアによって精密に造形することが可能で、そこで作られたパーツはゆうに最終品としてさまざまな分野で使用できるというわけだ。実はこのArevo Labsは、既に3Dプリントサービスも開始しており、テスラモーターズやエアバス、フランスを代表する多国籍企業、サンゴバンなども顧客として利用が始まっているようだ。

特許切れによって数々のFDM 3Dプリンターが登場しているがその多くが、単なる廉価版で大した特長も出せないままでいる。こうした状況においてArevo Labsが開発する6軸プリンターはエンジニアリング・プラスチックと高精度な造形という部分に特化したものとして秀逸だといえる。液体のエポキシ樹脂アクリル樹脂ポリウレタンなどをベースにした紫外線硬化性樹脂に紫外線を照射して硬化させる光造形ではCarbon3Dプリンターと従来の光造形の概念を覆す高性能な機種が登場し、今後も革新的な3Dプリンター開発は進むことだろう。

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